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日本の作家

"このエッセイ集は、一外人批評家が見た日本文学の一側面というよりは、国境という枠を取り外した上での、近現代の日本作家論といってもよいのではないかと思う"1972年発刊の本書は日本文学の世界的権威が愛情溢れる『三島由紀夫論』を中心に太宰治、川端康成、谷崎潤一郎等を語っている貴重な文学論集。

以前から読みたいと思っていたのですが。下鴨納涼古本まつりで見つけて、ようやく手にとりました。

さて、そんな本書はアメリカの日本文学・日本学者、文芸評論家として日本文化全体の欧米への紹介でも知られた著者が、昭和34年から46年までの約13年にわたって様々な雑誌に掲載した近現代作家や作品に対する文学論を集成したもので、個人的に親交があった三島由紀夫に対する数章を中心に明治から昭和、森鴎外から大江健三郎までが著者の博識さを背景にした知的なテキストで紹介されているのですが。

まず、美術史もかじっている私としては森鴎外の『花子』からロダン、そして実際の花子を訪ねて岐阜へと向かっていく冒頭の『鴎外の"花子"をめぐって』が興味深く。森鴎外の作品はもちろん、ロダンによる花子の頭部像が語りと共に繋がっていく感覚が文学ミステリ的で楽しかった。

また、川端康成や太宰治、谷崎潤一郎、それに正岡子規に石川啄木と、どの文学批評もきわめて読み応えありますが。やはり、いつもの冷静さから一歩踏み込んだような感情を感じる三島由紀夫に対して寄せた文章は胸にきます。

著者ファンはもちろん、日本の近現代(明治〜昭和)作品が好きな方にオススメ。

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