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街並みの美学

"この非人間化してゆく今日の社会で再び人間本来の生活を取り戻すことができるのであろうか。また、われわれの済む環境をより美しく、より住みやすくすることができるのであろうかについて、深く考察する必要があると思われるのである"1979年発刊の本書は街並みの在り方に関する実体論的良書。

個人的にはコミュニティSNSサービスを提供する経営者に紹介されて手にとりました。

さて、そんな本書はソニービル、東京芸術劇場などの作品で知られる建築家である著者が、いち早く【都市景観の重要性を述べたとして知られる】一冊で。建築の『内部』と『外部』の設定には、西欧人とわれわれ日本人との間には意識のうえで差異があることを冒頭で指摘した上で、パリやマンハッタンといった都市、あるいは広場や家を比較しながら、またル・コルビュジェや和辻哲郎を引用しながら【人間のための美しい街並みをつくる創造的手法】『街並みの美学』について論じているのですが。

書かれた時代背景が日本の高度経済成長期とあって。その際に大量、安価に建築されたであろう建物や公園に対して『美学』の必要性を求めているのは建築家として先見の名があったと思うし、「内部と外部」といった視点も興味深かったですが。雑然としたアジアの街並みを好む私からすると【全体的に欧米礼賛がやや強すぎる】ようにも感じました。

一方で、京都の町屋(長屋)を【街路に直接面する上に、その接触する所に造形的にも機能的にも優れた木格子が使ってある】と外壁がないことを高く評価してくれているのには、町屋住まいの一人として単純に嬉しく感じたり。

建築やランドスケープに関わる方はもちろん、建物好きにもオススメ。

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