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暇と退屈の倫理学

"退屈とどう向き合って生きていくかという問いはあくまでも自分に関わる問いである。しかし、退屈と向き合う生を生きていけるようになった人間は、おそらく、自分ではなく、他人に関わる事柄を思考することができるようになる"2011年発刊の本書は講義をもとに書かれた構築していく哲学良書。

個人的には著者の『中動態の世界』がとても面白かったのと、タイトルに惹かれて本書を手にとりました。

さて、そんな本書は17世紀哲学、現代フランス哲学を専門とする著者が、各大学で行った講義をもとに、現代社会の【人間は退屈するという事実】を確認し、前提した上で。『暇のなかでいかに生きるべきか、退屈とどう向き合うべきか』という問いに【歴史的、経済史的な見地から】パスカル、ルソー、ポッブズ、モリス、ニーチェ、ヘーゲル、マルクス、ガルブレイス等の著作、映画ファイトクラブなどを紹介しながら解説した上で、後半では特にハイデッカーの退屈論を紹介して考察しているわけですが。

まず、本書はいわゆる『哲学の本』なのですが。講義がもとになっていることもあるのか【とても読みやすく工夫されていて】また、数多く紹介される本の多くを既読であったこともあって、誤読が修正される一方で(ルソーの『自然に帰れ』等)知が繋がっていくプロセスが楽しかった。

また直接的にも、テレビやWEB記事をぼんやりと眺めながら【暇や退屈が社会を息苦しく覆っている】といった憂鬱さを覚えていたので、本書で語られていることは『答え』というより、同じようなことを考えている『仲間』を見つけた。という嬉しさがありました。

読みやすい哲学理解の書として。またタイトルにひかれた人にもオススメ。

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