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読者はどこにいるのか 読者論入門
"読者はどこにいるのだろうか。よく『一般の読者』と言うが、この言い方が成立するためには、多くの読者が何かを共有していなければならない(中略)それをこの本では『内面の共同体』と呼んでみた"2021年文庫化の本書は近代"読者の誕生"から約百年の変遷を小説たちと辿っていく良書。
個人的には読書会を主宰していることもあり、読み手としてもっと成長していきたいと本書を手にとりました。
さて、そんな本書は日本近代文学の研究者として夏目漱石に関する著作も多い著者が"共通の知識を期待できない時代だとすれば、読者が共有しているのは『何かを共有している感覚』だけではないか。それをベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』をもじって【内面の共同体】とオリジナルの視点として導入しながら、全9章にかけて"読む""書く"という営みの豊かさについて。文学論はもちろん、夏目漱石はもちろん、樋口一葉や芥川龍之介、田山花袋の各作品の論評も引用しながら誘ってくれているわけですが。
乱読家は自覚するも、文学を体系だって学んではいない私にとっては、本書で紹介される理論や技法はとても新鮮で、あらためて【物語や読書という行為について】考える機会となりました。
また、本書で紹介される作家たちの作品は概ね既読だったので、そんな論評があったのか!(例えば、芥川龍之介の『蜜柑』は『ボックスシートかロングシートか』問題とか)と、単純に楽しめました。
全ての本好き、読書好き。そして日本近代小説好きな方にオススメ。
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