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戦後最大の偽書事件『東日流外三郡誌』

"外三郡誌にかかわっただれもが、大なり小なり傷ついていた(中略)だが、われわれは前へ進まねばならなかった。"2006年発刊(2019年復刊)された本書は、訴訟事件を担当した事をきっかけに、東北で発見された謎の古文書に関わることになった新聞記者による長きにわたるルポタージュ。

個人的には、同じく偽文書『椿井文書』に関する本を最近読んだこともあり、本書も手にとってみました。

さて、そんな本書は青森に住む和田喜八郎が自宅を改装中に『天井裏から落ちてきた』と1975年に『発見した古文書』【東北地方には"古事記"や"日本書紀"には登場しない古代王朝があったのだ】とする東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)に、1992年の訴訟事件をきっかけに関わるようになった地元紙の記者である著者が、古文書の胡散臭さを嗅ぎ取りスクープ記事として掲載、必然的に【真贋論争に巻き込まれていった様子】が、まるで推理小説のような形式で丹念に描かれているのですが。

とは言え、書きながら矛盾しますが。仮に推理小説だとすれば、通常は最後まで真実は一体?とハラハラドキドキするものだと思いますが。著者が発見者、和田喜八郎が亡くなった後に自宅を訪問する場面で始まり、終わっている本書。『天井裏から落ちてきた』の始まりの経緯から【明らかに嘘】と明かされた上で、古文書は正しいとする人たちが次々と【チープな嘘を重ねて自滅していく】ので、はっきりいって、ハラハラドキドキはなく、終始『昭和のコント、お約束茶番劇』を延々と見せられているような【繰り返されるマンネリ感】がありました。

また、真贋論争の流れの中で。青森のキリストの墓、ムー大陸に『ノストラダムスの大予言』前安倍首相が東北安倍王族の末裔(!)と1990年代の好景気を背景にした【話題になったり、売れればなんでも】的なメディアによる懐かしいワードがどんどん出てくるので、例えば『天下一品のラーメン屋で、スープこってりを頼んだら【予想以上にこってり過ぎて】胃がもたれた』といった、ぐったり感が食後もとい読後にありました。("さらば、全ての東日流外三郡誌。"と、著者には本当にお疲れ様。と声をかけてあげたい)

1990年代にオカルトやスピリチュアルにハマった人、ムー愛読者の人、こってりラーメン好きにもオススメです。

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