見出し画像

ペドロ・パラモ

"コマラにやってきたのは、ペドロ・パラモというおれの親父がここに住んでいるときいたからだ。おふくろがそれを教えてくれた。"1955年初版、本書は現在と過去が自然に交錯する前衛作品。ガルシア=マルケスなどラテンアメリカの作家たちに重大な影響を与えた一冊。

個人的に"超現実を現実の一環として表現するのが特徴"【マジックリアリズム】の作品が好きな事から本書も手にとりました。

さて、そんな本書は"メキシコの寂れた農村を複雑でユニークな仕方で描いた作家"として、20世紀最高のスペイン語作家の一人にも選ばれた著者による短めの長編作で、『おれ』ことフアン・プレシアドという名前の男が、父親のペドロ・パラモという顔も知らない男を探して、死んだ母親の故郷コマラを訪れるのですが、そこは文字通りのゴーストタウンで、幽霊の住民が住む"ひそかなささめき"に包まれた町へとなっているのですが。

まあ。と、最初のコマラの町を訪れるあたりまでは時系列に沿った通常の小説のような流れなのですが、そこからは長さが数行のものから数ページにわたる時系列の揃わない短い70の断章エピソードが繋ぎ合わされていて、初見だと混乱してしまいます。

ただ、それでも!読み進めていくと、そうした様々な断章たち、登場人物たちが互いに関連し合い『見事な円環の中に閉じ込められている』のに気づき、自然と興奮させられました(98ページで語り手と思わされた『おれ』ことフアン・プレシアドがあっさり退場するのは衝撃的でしたが。。)

スペイン、ラテンアメリカ文学好き、マジックリアリズム作品好きな方へ。また短くも何度も読み返したくなる作品を探す人にもオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?