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ゼロからの『資本論』

"『資本論』を読むことで私たちはこの社会の不自由を的確に表現できるようになるからです。さらにそれは、失われた自由を回復するための第一歩になるでしょう"2023年発刊の本書は近年の研究成果も踏まえた、わかりやすいマルクス『入門書』。

個人的に『人新世の"資本論"』が面白かったので本書も手にとりました。

さて、そんな本書はマルクス研究における最高の賞『ドイッチャー記念賞』受賞者でもある研究者の著者が【資本主義一択、新自由主義の席巻】により格差広がる個人レベル、そして地球環境もボロボロになっている現状に対して【なぜそうなってしまうのか?】を第1章から第4章にかけて、身近な現実(例えば給食センターの変遷)と、誤解されがちなマルクスの丁寧な解説、引用で説明。また旧ソ連や中国は労働者のための社会主義とは違い【『単なる独裁体制』『国家資本主義』】とあえて指摘。最後に社会の富が『商品』として扱われず、シェアして自治管理していく【平等で持続可能な"脱成長"定常型経済社会】を個人、地域レベルで考えていく必要性を提案しているのですが。

冒頭で"今更マルクス""ソ連崩壊=マルクス主義失敗"と言われ続けてきた。と自ら語っていますが。例に漏れず私自身も正直、そんな先入観があったので。研究者として【その『誤り』を言葉の一つ一つから説明してくれていて】勉強になりました。

一方で、著者が最後に提案している互いに支え合う『贈与社会』【コミュニズムの復権、アップデート】に関して。こちらも個人的には昼間のバイトで資本主義と折り合いをつけつつ。夜はフリペ専門店の店主として自ら積極的に逸脱【『本の贈与』から始まるローカルネットワーク】をじわじわと拡げている立場としては、痛いほどに共感しましたが。

ただ『それ』を"一見心地よい"資本主義内【与えられたシステムの夢】にどっぷり囚われた方々に『どう気づかせるか』は映画マトリックス並に難しいな。と、あらためて。

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