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回想の太宰治

"私はときどき、太宰治の研究家や、愛読者の方々から問い合わせを受ける。今後そのような場合、このつたない著書の中にお答に代るなにかを見いだしていただくことができたら幸いである"1978年発刊の本書は、妻による愛情と明晰な目で描かれた人間、太宰治の回想記。

最近、太宰治特集のフリーペーパーを手にしたので本書についても手にとってみました。

さて、そんな本書は太宰治こと津島修治の妻である著書による回想録で、井伏鱒二の嫁探しの結果、結婚することになった様子、また戦中、戦後の甲府や三鷹での暮らしや太宰の実家である津軽での日々、友人知人たちとの交流を後景に【数多くの作品解説】や鏡のように太宰治にまつわるエピソードが補完されているのですが。

まあ、太宰治といえば。自殺未遂や薬物中毒といった破滅的、スキャンダラスなイメージが先行するわけですが。妻からの愛情がありつつも【論理的、的確に描写される】太宰治の姿はユーモラスさ、人間味があって新鮮でした。

また、やはりファンや研究者から色々と質問されたからでしょうか。回想録ですが。著者自身の事より作家である太宰治や作品の一番近いところにいた存在、太宰治の【妻としての公式解説書】のような内容になっているのも興味深かったです。

太宰治ファンはもちろん、近代日本文学好きにもオススメ。

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