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失われたものたちの本

"物語はデイヴィッドの中に、何か面白い、居心地よい場所を見つけだしたようなのです(中略)耳を澄ませば、物語の声が聞こえました。最初はしとやかに、やがて大きく"2006年発刊の本書はアニメ映画"君たちはどう生きるか"がオマージュを捧げた『本にまつわる』異世界冒険譚。

個人的にはジブリの『君たちはどう生きるか』の原作はてっきり吉野源三郎による同名小説だと思って観に行ったあと、本書の存在を知って手にとりました。

さて、そんな本書はアイルランド出身の推理作家による作品で、母親を亡くした孤独から本の囁きが聞こえるようになった12歳の少年デイヴィッドが、死んだはずの母の声に導かれて『赤ずきん』『ヘンデルとグレーテル』『白雪姫』『眠れる森の美女』『三びきのやぎのがらがらどん』などの誰もがしるおとぎ話の登場人物たちが残酷に改編された物語異世界に迷い込んでいくわけですが。

まず、最初の印象として『ハウルの動く城』しかり、物語前半は【比較的原作に準じつつも、後半は全く違った展開になる】宮崎駿作品ですが。本書も映画鑑賞後に読むと、同じ第二次大戦時下、しかし映画は日本を舞台にしていたり、細部は違うとはいえ。同じく割と【前半部分は本書に準じていて】驚きました。

また、宮崎駿の映画との比較をさておいても。いわゆるダークファンタジー的な異世界冒険譚である本書は、本好きにはニヤリとしてしまう誰もが知るおとぎ話が主人公の成長とリンクしなが『歪められてたくさん登場する』わけですが。王道的なクライマックスを経て、【大人なってからの素敵なラスト】と清涼感ある読後感でした。

本好き、ダークファンタジー好きはもちろん、アニメ映画"君たちはどう生きるか"を鑑賞してモヤモヤした人にもオススメ。

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