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さよなら、ギャングたち

"わたしはギャングだったんだ。わたしは詩人なんかではなかった。わたしは生まれてからずっとギャングだったんだ。わたしは今からそれを証明しようとしている"1982年発刊の本書は著者デビュー作、断章形式の独創的なポップ文学。

個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。

さて、そんな本書は詩の学校で詩を教えている講師『わたし』を主人公に、アメリカ合衆国の大統領たちが次々と暗殺されてしまうほどギャングたちが暗躍している世界を舞台にした(著者曰く)『一部と二部は身体で書き、三部は頭で書いた』三部構成の作品で。人々が親からもらった名前を捨てて、名前をめぐって諍いも起きる中、『わたし』は自分の恋人に『中島みゆきソング・ブック』(SB)という名前を与え、彼女は『わたし』に『さようなら、ギャングたち』という名前を与えて、猫の『ヘンリー四世』と一緒に暮らしているのですが。。

まず数行で終わるような章があったりの断章形式で(ポルトガルの国民的作家、フェルナンド・ペソアを思い出す)また詩的というか【現実の描写から離れたような言葉も多く】読み始めた当初は戸惑ったのですが、読み通してみると普遍的な『小説』としてまとまっていて面白かった。

また、著者の本は初めて読みましたが。読み終えた後に著者の経歴。学生運動に関わって逮捕、勾留され一種の『失語症』に陥った後【リハビリのために断片的な文書を書き始めた】ことを知ると、本書に著者の実体験の反映、また『執筆当時の時代』を感じることもでき、三部のギャングたちには『あさま山荘事件』を色濃く感じてしまった。

断章形式、独創的な文体が好きな方へ。また『言葉』にこだわりがある表現者の方にもオススメ。

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