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出会いあろうと成就せず、恋愛におけるディスコミュニケーションとしての「ボーイ・ミーツ・ガール」

この記事はレオス・カラックス監督作品「ボーイ・ミーツ・ガール」(1988)のネタバレを含んでいます。

  • はじめに

  • あらすじ

  • ディスコミュニケーションのシンボル

  • その他類似

はじめに


ボーイ・ミーツ・ガールとは、男女が出会い恋に落ちるといった、恋愛物語の王道の展開を指す。しかし今作は出会っても恋愛が成就しない男女の姿、特に主人公アレックスのディスコミュニケーション(そもそも彼の片思いなのだが…)を描くことで、ボーイ・ミーツ・ガールのお決まりである恋愛成就を否定し、「たとえ出会いがあっても、恋愛はそうそう上手くいかないものだ」と皮肉っているように見える。

あらすじ

主人公アレックスはGFにフられた心の傷を抱え、パリの街をふらふらと歩き回る。一方恋人と喧嘩を繰り返すミレーユは街へ繰り出し、ひょんなことをきっかけに2人は出会うのだった。

ディスコミュニケーションのシンボル

作中ではアレックスのディスコミュニケーション(またそれによって空回りする様子)が何度も象徴的に表される。彼は言葉を発そうとしても何度もノイズ(沸騰音、雷、赤子の鳴き声など)にかき消される。やっとのことで言葉にできても伝わらない。会いたいという一心からミレーユに電話をかけても繋がらない。クサクサした気晴らしにピンボールで遊ぶものの、すぐに穴に落ちてばかりで、ツキが回ってきたかと思えば長く続かない。
この作品で最も印象的な場面は、アレックスが初めてミレーユと話す場面である。なぜならここでは同じ構図で何分間も、彼の自作詩が語られるためである。アレックスは自らの思いを必死に伝えようとするが、ミレーユには響いていないようだ。
以上のことから、全編と印象的な場面を通じ、アレックスのディスコミュニケーションが描かれていると言える。アレックスとミレーユは最後までディスコミュニケーションを重ねるが、その結果としての破滅が待ち構えている。男女のディスコミュニケーション→破滅という構成はジャン・リュック・ゴダール監督作品「気狂いピエロ」と類似している。

その他類似

・ベルリン天使の詩(冒頭子どもの声とペンで紙に書く音)
・時計仕掛けのオレンジ(川岸でのケンカとナイフ)
・気狂いピエロ(ハサミ、ジャンプカット)
・クロスカッティング、ラストミニットレスキューの踏襲(D・W・グリフィスからの影響)など

ひとこと感想

ミレイユがタップダンスをする小気味いい音からの、音楽のCIにしびれた。