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だれかに執着すること、失うこと、悲しむこと、
大切なひとが急にいなくなってしまった。
大切、ということさえ憚られる。
なぜなら、彼はわたしを「大切」と思っていたのか、不安になるからだ。
でも、わたしにとって彼は、とっても大切な、かけがえのないといっていいほどの存在だった。
ひとから守ってほしいと思うことは多くあったけれど、
愛おしいな、守りたいな、と思ったのは久しぶりだった。
映画を一緒に観に行った。ジャズ喫茶にいった。
餃子を食べに行った。誕生日をお祝いしてもらった。
一緒にリングを作った。一緒に物件を見た。
手をつないで一緒に眠った。
わたしといるとどんな気持ちになる?と聞くと、彼は「頭がすっきりする」と言った。
普段いろんなことを考えてしまうけど、わたしといたらそうでないと。
ああ、わたしも彼といたら、頭がすっきりする。
目の前のことだけに集中して、ひかりが揺れている様子や、雲が流れている様子を愛でることができる。
同じ日に、ぷつり、と連絡が途絶えた。一切既読がつかなくなった。
いったいなにがあったのか、と思った。
あのときのわたしの行動がだめだったんだろうか。私の話がだめだったんだろうか。
知らず知らずのうちに、彼にしんどさを与えてしまったのだろうか。
どうでもいい人だったら責められたのに、責めることもできなかった。
ひとを好きになること、嫌いになること、関係性が変わってしまうこと、無くなってしまうこと、
とてつもなく疲れてしまって、頭が支配されてしまう。
何度も繰り返し、もうこんな思いはしたくないと思う。
「執着心」とは「何かを失うことを恐れ、しがみつきたい気持ち」と、辞書に書いてあった。
わたしは、かかわる人に執着をし続けると思う。失ったら悲しい。つながれたら、嬉しい。
「好きでも嫌いでもない」というのは「どうでもいい」で、
どうでもよいひとでない限り、わたしは特別に好きだとか、特別に嫌いだという感情を持ち続ける。
わたしはこれからも、人との関係性の間で、悲しんだり怒ったり、喜んだりする。
そのたびに、細かくきらきらと揺れていたいと思う。
そして一緒にいた時間、きっと、彼はわたしを大切に思ってくれていた。
そう思っていたいから、思っている。
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