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Last contract

 体が大きく跳ね、頭がダッシュボードに打ち付けられた。おかげで意識が戻る。
「リディ、死ンデル場合ジャネエ!応戦シロ!」
 相棒の岩男、バリーがハンドルを切りながら私を怒鳴る。撃たれた胸、腕、角、目が焼けるように熱い、銀弾の痛みだ。バンも銀の祝福で、屋根が吹き飛びオープンバンになっている。後ろに座っていた積荷ちゃんは──良かった無傷。元気に突撃銃で応戦している。
「アイツら、積荷ちゃんごとやっちゃう気?」
「そのようですね、私も驚きです」
 積荷ちゃんが平然と答える。
「他人ごと!」
 曳光弾が煌き、オープンバンをかすめる音がする。バリーも弾が当たって自慢の岩肌が削られ、銃痕にまみれている。治ってきた目で後ろを見る、追手は重装甲エクソシストSUV。聖なる機関銃がバカっとあいた屋根から、銀弾を撃ちまくっている。
「ちょっと赤字覚悟だな」
 右腕のチェーンガンのタトゥーと契約し、ズルっと抜き出す。実体化した引き金を引く。

DOMDOMDOM!

 着弾すると同時に、SUVごとエクソシスト共は吹き飛んだ。私は反動でイカれた肩を叩き戻して、チェーンガンを外に捨てる。
「不意打ちとか卑怯じゃない?4回は死んだね」
 積荷を盗んでHELLに戻るだけ。楽な仕事。ただ、エクソシスト共が絡んでくるのは契約には書いてなかった。このままだと、武器も残機も切らしてエクソシストのスコアになってオワリ。
「ボスはなんか言ってる?」
「回収地点ハ変更、追ッテ連絡スル。ダソウダ」
 バリーは運転しながら答える。岩の体も傷ついてはいるけど、大丈夫そう。
「で、積荷ちゃんは何者なのよ、とんでもなく美人だけど、それだけでこんな大歓迎はされないし」
「名称はありません、積荷がしっくりくるのでそのままで構いません」
「あっそ」
 タバコと契約して、引き出す。
「何者と言うことですが──核兵器人間というのが、端的な説明になるかと」

【続く】

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