座席

日比谷線。
最近はチャリで人形町から広尾まで行くのが
しんどすぎて利用している。
座っているか立っていれさえすれば目的地に着くなんて
なんて素晴らしいの!
と、俺の中のラプンツェルが感激したが
自転車で移動すれば1日400円近く節約できることになるのでフリーターの俺はペダルを踏み続けるべきだろう。

しかし今日は豪雨だったので
仕方なく地下鉄に乗り込んだ。
朝の9時から夜の8時までの11時間を
40を超えたおじさんと過ごさなくてはいけない。
基本何でも肯定的に話を聞いてくれるし良い人なのだが
流石に11時間は辛い。

何度も順行と逆行を行き来してるかのように永遠に感じた。
だが乗り切った。
夜8時を迎え、航空自衛隊がスクランブル発進する時のように素早く着替え日比谷線のホームに向かい電車を待った。
にも関わらず後ろにはおじさんがいた。
護廷十三隊であれば確実に2番隊に配属されるだろうなと確信を得るほどに隠密だった。

ほぼ無言で座っていた。
携帯もいじらないし無言なので周りの景色や人の動きがよく見える。
やがて電車は神田で停車した。
正面左隅に座っていたミニスカートの若い女性が
立ち上がり降車した。

事件はその後すぐに起きた。
降車した女性の空席に別の女性が座ろうとしたのだが
着座した瞬間に立ち上がり、座席を撫でて
そこに座ることはなく別の車両に移動したのだ。

俺の中のコナン君の推理はこうだ。
先ほど座っていた女性の股間に爆弾(リモコンバイブ)が仕掛けられていた。
そして爆弾(リモコンバイブ)の威力に耐えきれず失禁してしまい現場を去った。

間違いないと思い横に座っている目暮警部に伝えると
「考えすぎでしょ〜」と一蹴された。

・・・
確かにそうやな。妄想が過ぎたわ。
電車は人形町で停車した。
おつかれした。とだけ言い電車を降りた。
長い1日やったなあ。
ゆっくりホームを歩く

重い腰を上げたように電車が動き出した。
まだ最高速度に達していない間に
自分が乗っていた車両が横を通り過ぎていく。
先ほど俺の推理を否定していた目暮警部が
びしょ濡れシートに鎮座しているのが
横目で確認できた。

真実はいつも1つ。

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