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ほほぅ、ガンプラねぇ…。


プチン、パチ、パキン…

ガンプラ初体験者の道具は、手身近なハサミとカッター。網のような板から切り離すのは、キミドリ色の腕のパーツ。ガンダムは有名な名言くらいしか知らないのだが、私の入院見舞いとして配属されてきたこの戦闘ロボのプラモデルは、ジオン軍のモビルスーツ、水陸両用。その名を「ゾック」と言うらしい。頭のてっぺんに1つ装備された角のようなロケット砲っぽいトンガリや、3本の黄色いワシ爪が可愛い。ジオン軍から課せられた私の初任務は、このモビルスーツを組み立てて大きくお茶目な足に「ズック」…私の地元の言葉でスニーカーのことなのだが、このズックを履かせること。

次々とパーツを切り離す。素材のプラスチックが予想より柔らかく、大事な部分が凹んでしまった。よく見るとこれまで切り離したパーツもその様な感じになってしまっている。あーぁ、これは思ったより丁寧にしなくてはいけない。よく見るとパーツの裏側に番号が刻まれており、組立図と照らし合わせやすくなっている。ジークジオン、ありがたい。しかしよく読むと組み立てるには「接着剤」が必要なようだ。これは想定外、用意できていない。仕方ないので、マスキングテープで可能な限りくっつけてパーツをセットにしておこう。

…よし、全部切り離した。そうすると、網から雑に切り離された部分が飛び出したままになる。さらに製造過程で出来たであろう余った部分が羽付き餃子の羽のようについてたりもする。次はこれらをカッターで削って整えていくか。試しにパーツを組み合わてみると…湾曲してビミョーに噛み合わず、パーツとパーツの間に隙間が出来てしまっている。あのパーツもこのパーツもさり気なく歪んでいて、組み合わさるとやや不格好じゃないか。おぉなるほど、これは巧妙な罠だ…と私は驚愕した。

柔らかく加工しやすいプラスチック素材、程々に適当な造形。これらは「こんなんじゃいけない、やるからにはキレイに作り上げなくては!」と『やりこみ要素』を見出す手助けになる。この罠に引っかからなくても、とりあえずくっつければちゃんと出来上がるし、色が気に入らなければ他の色に塗っても怒られることはない。そうだ、怒られない。ゾックとズックをかけて、この大きめで可愛いあんよにスニーカーを履かせても自由なのだ!ガンプラ、それは決められたカタチに自由を見いだし自由に作り込むことが出来る宇宙。ガンプラが今日まで長く愛されてきた理由が分かった気がする。

思いがけず上昇したモチベーションを糧に、私はカッターで飛び出た部分を削り始めた。ややモチッとした削り心地が気持ちいい。私の初めてのガンプラ体験は、新たな「趣味の沼」を発見するものとなった。


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