モノレール記念日
まえがき
1964年開催の東京オリンピックのときにモノレールが開通。
そのことについて記事にしているが、今日はもう少しモノレールってなんだっけ?なにがいいんだっけ?っていうところを書いてみることにする。
モノレールと従来の鉄道は、それぞれ独自の特性を持つ交通システムである。両者の利点と欠点を、物理学的観点から詳細に分析し、比較することで、それぞれの特徴が明確になる。
モノレールの利点
曲線走行性能
モノレールの最大の利点の一つは、その優れた曲線走行性能にある。これは、以下の式で表される遠心力に対する抵抗力が大きいことに起因する:
ここで、
F_c: 遠心力
m: 車両の質量
v: 走行速度
R: 曲線半径モノレールは、車両がレールを挟み込む構造のため、この遠心力に対する抵抗が大きい。そのため、同じ曲線半径でも、より高速で走行することが可能となる。曲線走行時の最大速度は、以下の式で表される:
ここで、
v_max: 最大速度
g: 重力加速度
R: 曲線半径
e: カント(傾斜)
f: 横方向の摩擦係数モノレールは、eとfの値を大きくできるため、同じ曲線半径でもより高速で走行できる。
省スペース性
モノレールは、1本のレールで済むため、通常の鉄道と比べて必要な用地が少なくて済む。必要な用地面積は、おおよそ以下の式で表される:
ここで、
A: 必要な用地面積
L: 路線長
w: レール幅
s: 安全マージンモノレールは、wの値が小さいため、必要な用地面積を最小限に抑えることができる。
急勾配への対応
モノレールは、急勾配にも対応できる特性を持つ。特に、サフェージュ式モノレールは、雨や雪に強い特徴を持つ。フランスの技術者によって開発されたこのシステムについて、以下のフランス語の引用を参照されたい:
(訳:サフェージュ式モノレールは、1950年代にフランスで開発された懸垂型モノレールの一種である。車両の台車は中空の梁の内部を走行し、これにより雨、雪、凍結から保護される。このシステムは高速走行と急カーブの走行を可能にする。)
鉄道の利点
大量輸送能力
従来の鉄道の最大の利点は、その大量輸送能力にある。これは、車両の大型化が容易であることと、長編成が可能であることに起因する。輸送力は以下の式で表される:
ここで、
C: 輸送力(人/時)
n: 1編成あたりの定員
p: 1時間あたりの運行本数
f: 負荷率鉄道は、nの値を大きくすることが容易であり、また、pの値も信号システムの発達により高めることができる。
エネルギー効率
鉄道は、モノレールと比較して高いエネルギー効率を持つ。これは、車輪と軌道の接触面積が大きく、転がり抵抗が小さいことに起因する。転がり抵抗は以下の式で表される:
ここで、
F_r: 転がり抵抗
μ_r: 転がり抵抗係数
m: 車両の質量
g: 重力加速度鉄道の転がり抵抗係数は非常に小さく、これにより高いエネルギー効率を実現している。
モノレールの欠点
建設コスト
モノレールの最大の欠点は、その高い建設コストにある。特に、跨座式モノレールの場合、大規模な軌道構造物が必要となる。建設コストは以下の式で概算できる:
C: 総建設コスト
L: 路線長
c_s: 単位長さあたりの構造物コスト
c_t: 単位長さあたりの軌道設備コストモノレールは、c_sの値が鉄道と比較して非常に高くなる傾向がある。
車両の大型化の困難さ
モノレールは、その構造上、車両の大型化が困難である。これは、車両の重心が高くなることによる安定性の低下と、軌道構造物への負荷の増大によるものである。車両の安定性は以下の式で表される:
ここで、
S: 安定性指数
w: 車両の幅
h: 重心高さモノレールは、wの値を大きくすることが困難であり、また、hの値が大きくなりやすいため、Sの値が小さくなる傾向がある。
モノレールと鉄道の比較
せっかくなのでここで数式に合わせて
モノレールと鉄道を比較してみよう
あくまでもモデル値での概算にすぎない、自分が納得するための計算で
プログラミングしてみた。
曲線最大速度
vmax_monorail≈25.7m/s≈92.5km/h
vmax_rail≈23.9m/s≈86.0km/hvmax_rail≈23.9m/s≈86.0km/h
ということで、モノレールのほうが、7.5%高速で曲がれる
転がり抵抗
一般のモノレール: F_r_monorail = 294,300.0 N
サフェージュ式モノレール: F_r_safege = 245,250.0 N
従来の鉄道: F_r_rail = 183,937.5 N
エネルギー効率
F_r_monorail = 0.015 * 30,000 * 9.81 = 4,414.5 N
F_r_rail = 0.0015 * 30,000 * 9.81 = 441.45 N
転がり抵抗係数はタイヤが転がる動きを弱めるエネルギーのことである。
なのでこれがエネルギー効率に直結する。これは、モノレールがゴムタイヤで抵抗が高いことが大きい なんと鉄道の10倍だ。
建設費用
Cmonorail=700億円
Crail==450億円
これはほんとにモデルケースのざっくりしたものであるが、鉄道のほうが建設コストは安く抑えられる。
ここで、必要な面積も斟酌に入れないといけない。
モノレールは高架構造を採用しやすいので、占有する敷地面積は小さく収まる。土地買収にお金がかかればどっちがコスト高かはわからないのである。
必要用地面積
モノレールの必要用地面積:2000 m² / km
鉄道(複線)の必要用地面積:12000 m² / km
安定指数
モノレールの安定性指数: 1.0
鉄道の安定性指数: 1.5625
鉄道の安定性指数(1.5625)は、モノレールの安定性指数(1.0)よりも約56%高くなっている。
道の方が安定性が高いのは、主に重心高さの違いによる
モノレール: 重心高さ 1.5m
鉄道: 重心高さ 0.8m
車両の幅も安定性に影響する。
モノレール: 幅 3.0m
鉄道: 幅 2.5m
数式でないと、転がり抵抗という言葉とごっちゃになってしまうが
転がりの意味が違うのだ。車輪の転がりと考えればよいかもしれない。
さて、この安定性指数は、車両が大型化できるかどうかによる。
つまり、安定するなら大きくできるというわけである。逆に不安定だと小さいままで、ということになる。
日本でのモノレール発展の経緯
日本におけるモノレールの発展は、急速な都市化と限られた用地という背景のもとで進められてきた。1957年に上野動物園で開業した日本初の公共モノレールは、新しい都市交通機関の可能性を示す実験的な役割を果たした。しかし、本格的な公共交通機関としてのモノレールの導入は、1964年の東京モノレール開業を待つこととなる。
東京モノレールは、東京オリンピックに向けて急ピッチで建設された。この路線の成功は、モノレールが都市交通の有効な選択肢となり得ることを実証した。特に、限られた用地で効率的に建設できる点が高く評価された。その後、1970年代から1980年代にかけて、北九州モノレール(1985年)、大阪モノレール(1990年)、多摩モノレール(1998年)など、各地で都市モノレールの建設が進められた。これらの路線は、既存の都市構造に最小限の影響を与えつつ、新たな交通ネットワークを構築する手段として採用された。
モノレールの導入は、単なる交通手段の整備にとどまらず、都市開発の触媒としての役割も果たしてきた。例えば、千葉都市モノレール(1988年開業)は、千葉ニュータウン開発と連動して計画され、新たな都市軸の形成に寄与した。21世紀に入ってからも、沖縄都市モノレール(2003年)や、東京都交通局の上野懸垂線の更新(2019年)など、モノレールの新設や既存路線の改良が続いている。これらの事例は、モノレールが現代の都市交通ニーズに応え続けていることを示している。モノレールは、その独特の特性により、日本の都市交通において重要な位置を占めるに至った。限られた用地での効率的な交通網の構築、複雑な地形への適応、環境への配慮など、モノレールの持つ利点は、日本の都市開発の課題に適合するものであった。今後も、技術の進歩と都市のニーズの変化に応じて、モノレールはさらなる発展を遂げていくことが期待される
このNoteではいちいち数値化している
主に自分が納得するためである。不器用なので
いちいち自分で計算しないと理解できないのである。