イラストのお仕事の裏側と画材について・1
※2015年4月(ちょうど6年前)に書いたものに加筆・修正しています。
イラスト担当している、NHK Eテレ「すイエんサー」の裏側
先週までとは画材を変えたら、イイ感じ♡
画材の違いを問われる
画材を変えた経緯には、こんなことがありまして。。。
2015年4月~7月、新美南吉記念館で展示を行いました。絵につけるキャプションに画材を記載することになり、全員が各自の画材を提出。
12人が描く・新美南吉の世界展(2015年4月~7月)
(半田市新美南吉記念館・愛知県半田市)
すると、キャプション制作担当の学芸員さんから「すみません、『ガッシュ』と『アクリルガッシュ』と『アクリル』の違いを教えてください」と聞かれたのでした。
『ガッシュ』とは、不透明水彩絵の具のことで、水彩には透明水彩もある。『アクリル』と『アクリルガッシュ』はどちらもアクリルのことです、と答えたのですが。。。
アクリルとガッシュの違いって?
搬入の帰り、絵の仲間に「それであってるよね?」と聞いてみたら、アクリルでもリキテックスは透明だから『アクリル絵の具』って書いたりするよ、という新たな情報がっ。
そっか、たまにアクリルじゃなく『リキテックス』って書く人がいて、なんでメーカー名を書くんだろう?なんで『ターナー』って書く人はいないの?という長年の謎が解けた。。。
あはは、プロでもこんなものです。。。ガッシュとアクリルガッシュの区別がついてない人もいたので、ちょっとホッ。
この中にその人がいます(笑)
この絵は写真の上にアクリルガッシュで描いてます。
で、仲間の一人がガッシュ(不透明水彩)で描いているのだけど、私は水彩でも『透明水彩』が得意で、ガッシュは、どうしてもうまく使いこなせないので、ガッシュで絵が描ける人ってそんけーしてしまう。
ガッシュは10年前に買って一度使ったっきり、そのままになってます。仕上がりはマットだけど、完全には乾いて固まってくれないのが苦手な原因。そういう人は結構多いのです。
締め切りがタイトなことが多いイラストレーターは、速乾性のアクリルを使う人が多いのだけど、早く乾いて固まり過ぎるんだよね。
彼女も「アクリルとガッシュの中間(乾くの遅いけど、最後には固まる)ってのが理想」と言っていた。やっぱみんな、思うことは同じだよね。
やっぱり水彩が好き
んで、同じ頃に行った東京でのポスター展でも思ったのだけど、私が一番得意な透明水彩は、繊細な表現には向くけど、色が薄くてパンチがないのよね。ポスターと原画が全然違いますねって皆に言われたし。
ペンギンレコードジャケット・ポスター展(2015年4月)
(ランドリーグラフィックスギャラリー・千駄ヶ谷(当時)
透明水彩は色が薄すぎて、スキャンするにも一苦労。何より、テレビ向きじゃないのだ。んで、アクリルに切り替えようかと思ったのだけど、アクリルでは透明水彩のような雰囲気には描けない。
そだ、眠ってるガッシュを使ってみては?
これが大正解!!
ああ、やっぱ、人と話すって大事なのだわ。いろんな人たちに助けられて生きております。Uさん、Kさん、Kちゃん、ありがとう~~~~!!
ガッシュで彩色したイラスト。
(6年前の文章はここまで)
デジタル主流に加速度がついていること
それから6年が過ぎて、イラスト制作の環境はさらに変化しました。デジタル主流は加速度がついて、今ではもしかしたら、アナログ派は既に少数派なのかもしれません。
私自身も、線はアナログで描いても、色はほぼデジタルで入れるようになりました。Adobeの水彩ソフト「Fresco」が普及したら、ますます筆を手に持つことは稀になりそう。。。
「すイエんサー」のイラストも、今ではガッシュは使っていません。
スケッチブックの紙が薄いのです。もともと水彩用のものではなく、いわゆる「カンペ用」なので、ペンで線を描く程度を想定されて作られているんですね。
なので、水彩でもペンでも「水気のあるもので塗りつぶす」ことに耐えられないので、今はもっぱら色鉛筆を使っています。
イラストがこのように使われる限り、どんなにデジタル至上主義になろうと、この仕事だけはアナログで描き続けるのでしょう。