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ハピリリについて(音楽幸福論)

アルストロメリアの「ハピリリ」、麻薬として聴いているのでディテールや効用をあまり気にせず、「とにかくすごい麻薬だ」として常習していた。

が、言わずもがな、すごい楽曲だ。気付いたことをすこし書く。
アルストロメリアの楽曲は直感的・客観的な印象で言うと「甘口の女の子的ポエティックな心情・恋愛観に、哲学や心理学などのカタカナ英語をぶち込んでロジカルでもある神秘性を高める構築」をしている。

これにより「単なる甘口アイドルソング」でも「恣意的な謎解き叙情詩」でもなく、より高次なつくりになっていて、しかし僕はまだ「思ったよりも複雑なつくりになっている」という事実しか理解できていない。ひとつひとつ歌詞や語義を拾って研究していけるポテンシャルのある素材だ、という提示を受けた状態で、サーフェイス(表面上)の甘々集団アルストロメリアにやられていて、これだけでも感情処理とリソースが追いつかない。というぐらいの、傑物が対象だということ。SCPか?

さて「ハピリリ」の歌詞だけども、ツイッターに書くにはちょっと長いし、すぐ流すにはもったいないなぐらいの気付きだったのであっさりめなのだが、まずはアルストロメリア歌詞解釈の気持ちいいところを補足していく。


「ハピリリ」ってなに?→"Happy Lyric"か?
「ハピリリ しみるスパイスのよう」→あ、冒頭から「ピリリ」と掛かってるの?
というような「気付き」からの「すげえ(深い)ギミックがある」という理解とその気持ちよさにオタクは同調しながら読み進めていってほしい。

「ラブダビ」ってなに?エジプトの首都?
(エジプトの首都はカイロなので、きっとアラブ首長国連邦の首都のことを思っているんだろうな)というのを経て→検索→"lovey-dovey(恋にのぼせる)"という表現を知る。

などあってDメロ。

会いたいけど会いたくないの
聞きたいけど聞きたくないの
知りたいけど知りたくないの
言いたいけど言いたくないの

大サビといってもいいところ。ハピリリは構成が
頭サビ→A→B→サビ→C→A'→B’→サビ→【ここ】→サビ→C'
という感じなのと、Cメロとほぼ同じフレーズなので「意趣的なCメロ」と認識していてもいい。Dメロ(大サビ)は起承転結でいう「転」で、よくある
ABサビABサビCサビのCと似た効用を持っている。

というのは、ここで「切り替え」の意味合いを持っているフレーズ、僕はアイマスの音楽というくくりで聴いていったときに僕はCメロは「課題」や「義務」のように差し込まれているなぁと感じることが多い。音ゲーだとカットされることが多い。フルサイズでしか聴けない。つまり「音楽として聴こう」としたユーザーに向けられる恣意があったり、ライブ会場では「聴き込んできた者が踏み込める領域」でもあって、そこに色々詰め込まれているように感じる、という意識の下地があってのことなのだけれど、「ハピリリ」のDメロにはそういうものを感じさせるギミックが盛り込まれている。

ときどきテンション アーティキュレーション
ときめきノート 始まる
わたしはきっとキミが大好きだよ

はい出ましたアルストロメリア伝統の「聞き慣れないカタカナ」シリーズ!
アーティキュレーションについて説明しますと
「音楽の演奏技法において、音の形を整え、音と音のつながりに様々な強弱や表情をつけることで旋律などを区分すること。」だ。

義務教育でも音楽の授業をもっとちゃんとやってほしいし受けてほしいと思っているのだが、スラー(音を伸ばしてつなげてやんわりまとめる)やスタッカート(音を切り離して印象的にする)などそういう表現技法が
「アーティキュレーション」だ!

と。じゃあそれがなんなの、というと、Cメロで甜花ちゃんが
意味分かってるんだかいないんだかみたいな感じでテロッと歌うこのアーティキュレーションという語句がDメロに対する「ヒント」として活かされているのである。

会いたいけど会いたくないの
聞きたいけど聞きたくないの
知りたいけど知りたくないの
言いたいけど言いたくないの

Dメロのこのリフレインは「転」として繰り返されている、ブレイクとしての常用の展開をされつつも「4回とも異なるアーティキュレーション」がなされているのである。

この技巧のヤバさに気付いてベースラインや打ち込みの機微にも意図を感じるようになり、「ときどきテンション」のところだけ心臓の鼓動を思わせる連符になっているとか、細やかな演出が凝らされているような気がして、

ときどきテンション アーティキュレーション
ときめきノート 始まる
わたしはきっとキミが大好きだよ

このフレーズがオトメ的な恋愛観として提示されていた第一印象から、感情の浮き沈みではない和音進行としての「テンション」で、日々を綴ったものではなく音符記号としての「ノート」で、コードの構成で不協和音を解決させる響きとしてのテンションノートをかけて"Happy Lyric"としていたのだ。




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