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貿易交渉で農産物の関税を維持することがなぜ良いことだと報じられるの?

日本政府が農産物に関税をかければ、農家は得をしますが、他の全国民が損をします。なぜなら、日本で販売される農産物の値段が高くなったり、種類が少なくなったり、品質が下がったりするからです。

現在、家族が月に8万円分の肉・野菜・乳製品などを買っているとして、それを国産に限らず、最も安く作れるところから買えるようになれば、例えば半額の4万円で済むようになるかもしれません。そうすれば国民生活は大幅に豊かになります。

関税というのは特定産業を優遇するために、他の日本国民に税金をかけているという不平等な制度なのです。それなのに、無党派層・非既得権益層の声は無視されるため、そのような不平等があるということすら国民は気づいていません。

貿易交渉、たとえばTPPだとか日欧ETAだとかの交渉をするとき、新聞などは「日本がこれだけの関税や輸入障壁を守り通した」と、まるで日本が得をしたかのように報じます。

得をするのは農家だけであり、他の全国民は、それによって損をしてしまうのに、そのように報道するのはなぜでしょうか?

新聞記者などは経済学音痴なので、いまだに輸入は悪いことで、輸出は良いことだと考えている人が大勢います。しかし、それは完全な間違いです。

各国は不得意な分野では、輸入に頼るほうがよいのです。

日本でマンゴーを生産したら、多大な費用がかかって、ひとつ数千円になってしまいます。フィリピンなら百円以下で作れるでしょう。ならば、日本はマンゴーはフィリピンから輸入して、そのぶん自動車部品でも作ってフィリピンに売れば、お互いに得をします。

とくに日本はこれから高齢化の影響により、働き手の数が足りなくなりますから、関税に守られて不効率な部門で働く人がいるのは、大きな損になります。

その人たちが働き手として、日本が得意とする製造業などで働くようになれば、日本全体がもっと豊かになります。

反論として、食糧自給率を保たないと有事に危ないなどという説がありますが、それは完全な嘘です。現在の日本社会は貿易に完全に依存して成り立っており、貿易が途絶すれば、肥料もなくなり、ガス欠でトラクターも動かなくなり、食糧生産は不可能になります。

火山の大爆発などによって食糧だけ世界全体で不作になった場合はどうでしょうか? その場合は日本も不作になるので自給しても対策になりません。食料の備蓄や食料工場などの別の対策が必要になります。

もちろん、いきなりすべての関税をゼロにすれば、それに頼って生きている農家は困ってしまいます。

ですから、計画的に関税を削減していき、その一方で、儲かる品種への転作や、農業生産性の向上、別業種への就業、工場の誘致、農産物の輸出促進、日本酒や加工食品の輸出促進などのような政策を長期的に実行していかなければなりません。

貿易交渉では、聖域を作って永遠に守るのではなく「20年かけてお互いに関税を全廃しましょう」というのを目指すべきです。


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