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鎌倉投信と『結いだより』 後編 #月次レポート研究所のポッドキャスト テキスト版

前編に引き続き後編のテキスト版です。


renny:前編の最後の方で鎌倉投信さんの月次レポート「結いだより」の話をはじめました。こういう発信をご覧になって、たとえば前編では鎌田さんのお話がお坊さんの法話みたいになってきた、という話もありましたけれども、そのほかに何か印象に残ってるような発信はありますでしょうか?

吉田:ちょうど今月号の運用コラムの「いい会社の見つけ方」が自分と似ていて面白かったです。

renny:たしかに先月のポットキャストで吉田さんがお話しされていたことと近いですよね。例えば全然関係ない本を読むというのが見つけ方の中にあって、なるほどなと。

吉田:他にも新規上場企業を全て見るというのも同じなので。ちょっと切り口は違うんですけど、私の場合は、ベンジャミン・グレアム「賢明なる投資家」の中に出てくる一節で、上昇相場の終わりの兆候として、怪しげな新規上場企業が増えてくること、あまり目新しいとはいえない企業の上場が増え出すっていうのがあって、今もそういう傾向があるのでチェックしています。

「上昇相場の中ごろから新規公開が始まり、その価格はそこそこ魅力的なものであり、初期の公開株式を買った人は大きな利益を手にすることができる。相場上昇が続くと、この種の株式が相次いで公開され、それにつれて上場する企業の質が次第に下がってくる反面、公開時の売り出し価格は法外なほど高くなる。上昇相場の終焉を示す確かな兆候の1つとして、得体の知れない小企業の株式が、株式市場において長い歴史を持つ中堅企業の株価よりも高値で売り出されることがあげられる。」

ベンジャミン・グレアム「賢明なる投資家」(第6章)より

renny:ちなみに最近はいかがですか。

吉田:2021年はリーマン・ショック後で新規上場が一番多かった年で、なんでこんな会社が?みたいな上場がかなり多かったです。

renny:なるほどね。その後たしかに2022年の株式相場は年間通じてマイナスでしたね。

吉田:そうですね。環境が悪くなると目新しくない事業で上場するのが難しいってことにもなるかな。

renny:そうですよね。NEDOのプロジェクトをフォローするというのもなるほどと。僕も昔、ベンチャー投資に関わっていた頃に、こういうことやってた記憶があります。ここ最近のコロナの間は、あまり新しい投資先が増えなかったと思いますが、先月はプロトコーポレーション、今月は竹内製作所で、あともう一社開示基準に達してない新しい投資先があると書かれています。コロナの間に調査していた企業に投資してる感じになってるんですかね。

吉田:そうなんでしょうね。やっぱり社長に直接会ったりしやすくなってから、買い始めたのかなっていう感じはありますね。

renny:実際に社長や従業員の人に会えるようになったんでしょうね。プロトコーポレーションは名古屋の会社で、今回の竹内製作所は長野県の結構山奥で、鎌倉投信が現地へ行かれてるのは間違いないと思うんで、それが投資行動に現れてきているんでしょうね。この調子で増えていくのかどうか分からないですが、70社近くになっているので、おのずと限界みたいなものがあるのかな。あとは鎌倉投信の場合は、彼らの判断基準に合致している会社である限りは保有を続ける、売却がないので、選び方が間違ってなければ、投資先は減る可能性は少ないのかな。原則増えていく一方なのかなと思うんで、今後どういうふうに増えていくのかそこら辺とかっていうのは知りたいなと思います。あとすごく興味があるのは、竹内製作所さんにしても、プロトコーポレーションさんにしても、上場したばかりの会社ではないので、いつ頃から目をつけられてて、どれぐらい検討されたのかが興味あります。

吉田:そうですね。そういう情報もあるとおもしろいですね。

renny:そうそう最近増えたと言ったら、この間イベントのあったピエトロさんもそうですよね。九州の会社なので。この間のイベントは参加されました?

吉田:オンラインで見てました。

renny:僕も全部は見てないんですけれども、ドレッシング作られる工程を見て、あそこまでハンドメイドだとは、あのパッケージからは想像がつかなかったんで、ちょっと驚きました。

吉田:あの手間のかけ方で、その値段でいいのかなって感じましたよ。

renny:あのパッケージでスーパーに並んでると、もっと大規模な自動オートメーションで、人の手を介さずに製造されてるのかな、と思ってましたが、ほぼ手作りみたいな。

吉田:そうですよね。他のドレッシングと同じ棚に並べられてるのが勿体ないような作り方ですよね。

renny:店頭であの商品を見るほとんどの人は知らないと思うから、ほぼ手作りということを何かしらの形でもっとPRすべきなんじゃないかな。そうすれば同じ棚に並んでいる類似の商品と同じ価格帯で勝負しなくてもいいんじゃないかな。

吉田:有機野菜で作って価格を上げて、オイシックスや大地を守る会で売ってもよさそうですよね。

renny:だからもっとポテンシャルがある会社なんだろうなと思います。ああいう機会があることすごく嬉しい。このほかの投資先訪問のイベントでは、亀田製菓の回のインド出身の新会長のお話も面白かったですし、養命酒製造の回ではクラフトジンを紹介されて、養命酒にジンのイメージがなかったので、興味深かったです。やっぱりこういう機会があって初めて、事業の意外な側面を知ることができたり、そこに至るまでの過程や苦労が分かると、鎌倉投信を通じて関わることができてよかったなと感じます。

吉田:こないだのピエトロの時もそうですけど、疑問に思ったことがあれば、ちゃんと会社に伝えないといけないですね。そうすると、企業としても上場していることの意義にもつながるんじゃないかな。日本の企業はなんで上場してるのか、よくわかんない企業も多いので、こういう場で事業の成長に繋がるようなフィードバックが得られるのも大事なんじゃないかな。

renny:株価以外にも関心を向けている投資家をたくさん抱えている鎌倉投信の投資先企業の人たちが、ああいうイベントに参加されて、フィードバックを得られるといいなと思います。この話に関連する「パーセプション」という本を最近読みました。これまでマーケティングで重要と言われていたのは、テレビCM等を通じて「認知」してもらうことだった。でも今はお客さんが対象のものをどう「認識」するのかが重要。認識が変わると行動も変わる。

renny:だから株式投資でも「投資=お金儲け」という認識である間は、投資先の事業の内容にまで目が向かないのだろうなと。一方で鎌倉投信を通じて、こういう会社に関わっているんだ、そこに参加しているんだという認識を持ち、投資先の理解が深まっていくと、長く保有してみようかなと行動が変わっていくのだと思います。今回のピエトロのケースでも参加された人たちが、どのような認識をお持ちになったのか、アンケート等々ですくい上げる必要がありますね。

renny:このほかに「結いだより」をご覧になってて、ここをもうちょっと変えたらいいんじゃないのとか、ここはもうちょっと深堀した方がいいんじゃないの、ってお感じになるようなことってありますか?

吉田:月次レポート等だと分量的にこれが限界というか、紙面の都合もあったりしますから、今のままで十分かな。

renny:そうですよね。たしかに必要な情報は盛り込まれていますし、何より一番ありがたいのは、過去の月次レポートがすべて残っているので、1年前や5年前、10年前がどうだったのかなと調べようと思ったら、すぐに調べられるっていうようなところは非常にありがたいなと思っています。投信会社によっては、1ヶ月分しか見せないファンドもあったりするんでよ。これから買おうかなと検討する人にとって、1ヶ月分のレポートと目論見書を見て決めてください、というのはちょっと無理ですよね。

吉田:そうですね。それで買っちゃう人もどうかと思います。

renny:表現はよくないですが、それでも売っちゃえる販売会社もあるのかもしれないですね。そのあたりは買う人の行動が少し変われば…、さっきの認識の話にも繋がるのかもしれないですね。要は基準価額が上げ下げでファンドの善し悪しがわかるとか、信託報酬でこれは駄目だと判断するというのは、アクティブファンドの場合は本来あり得ない話だと思うんです。だって中身を何も見てないわけですから。販売会社も運用会社も1ヶ月分しか月次レポートを公開していなければ、基準価額と信託報酬だけで判断してくださいね、と声高にではないけれど静かに表明しているのかなと。それは言い過ぎですかね。

吉田:重要視してないのは明らかなので、そうなりますよね。あとは過去に書いていたことが間違っていたのを見られたくないとか、そういうこともあるのかな。

renny:でもそれは、例えば今月の株式相場は上がると思います、とか書いているレポートもあるので、何ヶ月かで消えるようにしておきたいのは分からなくもないですが。でも月次レポートの本来果たすべき役割は、予想ではなく、受益者のためにどのような行動をしたのかを発信するもののはず。昔の某投信会社さんで聞いたあの話に戻るのかもしれないですね。これは販売会社の人たちのためのツールだと説明をされて唖然とした記憶があるんですけど。

吉田:あれは絶句でしたね。

renny:だからそういうとこが変わっていかないとね。積立NISAのアクティブファンドの適格性については、資金が毎月流入して、受益者の支持を集めているファンドであっても、信託報酬が高ければ不適格にするとかっていうようなのが今の基準なわけですよ。こんなことをやっていたら、アクティブファンドが根付くわけないと思います。この基準を決めた人たちはもちろん、実際にファンドを作っている人、売っている人もそれを受け入れてしまっているのが、なんとも残念だなと思います。

吉田:なんかみんなで責任を取りたくなくて、押しつけあっているというか…

renny:たとえば今度の新しいNISAの話とかを考えると、鎌倉投信はつらい立場にあるんじゃないかなと思ってまます。今に比べてあれだけ金額の枠が大きくなって、NISA口座を開けるのは一社だけと言われると、新しく鎌倉投信を選んでくれる人はなかなか得にくくなるんじゃないかと。

吉田:そうですよね。NISA枠の金額的に鎌倉投信に全部!みたいな人はあんまりいないだろうから。

renny:だから鎌田さんもメルマガで考え直した方がいいんじゃないかと書かれていましたね。ある種のポジショントーク的な部分もあるのかもしれませんが、新NISAに対応するために鎌倉投信さんがネット証券で商品を販売することが果たしていいのか悪いのか、というような話にも繋がってくるから、なかなか大変だなと。

renny:ただ一方でこれは僕の勝手な持論ですが、そもそもNISAがあるから投資しようというのがおかしい。もちろんNISAが入口になり得るとは思いますが、吉田さんだってNISAがあるから株式投資をしてるわけじゃないですよね。

吉田:もちろん、そうです。

renny: NISAをやると得だから始めなきゃ損ですよ、みたいな宣伝文句で誘導しようとしてるようなところがありますが、本質とはズレているなという気はします。

吉田:新しいNISAは結局、販売会社が有利な方向に進んでいく気がしていて、これまで投資信託を歪めてきたのは販売会社の販売姿勢でも思うんで、そこは強くするのは、かなりまずいんじゃないかな。

renny:新制度の蓋を開けたら、NISAで投資して世界の株式に分散投資しますというインデックスファンドを買う層が一定の数いて、もう一つの塊は販売会社に売り込まれて、っていうように二分されてしまうと、鎌倉投信みたいな事業をされているところが埋没する恐れはあるのかなと。今、鎌倉投信に集ってらっしゃる受益者の方の結束がどれぐらい強いのかが、これから問われるのかなと思ったりしています。そろそろ締めたいと思いますが、吉田さんの鎌倉投信に対する期待というか、今後どうあって欲しい、というのをお話しいただけますか。

吉田:最近高校ではじまった授業がどんなことをやっているか分からないですが、現状では投資のリテラシーを学べる場がほとんどないですよね。 私は鎌倉投信みたいな株式投資の魅力の伝え方、株価が上がった下がったではなく、日本にはこんな事業をしている会社があって、このポイントが良いと思ったから投資をしてますよ、と伝えてくれるファンドが学びの場になってくれるといいなと思ってます。今は猫も杓子もESG投資を掲げているけど、上場企業はそもそも何かしらの社会問題を解決しようとして存在しているので、必ずどこかがESGに該当するに決まってます。だからその会社のどのように社会に貢献しているのが受益者に伝えた上で投資することがすごく大事なんです。こういう部分をちゃんとやっているのが鎌倉投信なので、いろいろな人が一番最初に触れる投資信託として選んでくれたらいいなとは思います。

renny:まずは投資がお金儲けだけじゃない、っていう認識をどうやったら持ってもらえるか。そこのドアが開かないと鎌倉投信への道が開けないというか、そこら辺をどうしていくかというのがこれからの課題かもしれませんね。

吉田:私もそういう話を伝えたいけど、うまく話せないから、鎌倉投信に任せたい!というのがあるので頑張って欲しいです。とにかく鎌田さんの話を聞いてください、というのが初心者には一番いいかなと思います。

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