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スパークス『厳選投資』の月次レポートを”厳選”してみた 後編 テキスト版

こちらのポッドキャストのテキスト版です。

前編はこちらをご覧ください。



2017年8月のレポートを読む

renny:前編に引き続き「スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)」の月次レポートを厳選していきます。まず僕が選んだのはですね2017年8月のレポート。このときも投資先の数は15社で、上位の投資先はさきほど紹介した2017年12月とほとんど一緒ですね。この月のレポートでは投資先のロート製薬さんが紹介されています。こちらは今もこのファンドが投資を継続されているはずです。このレポートの3ページ目に

私どもは同一銘柄を長期間に亘って保有することが多いため、当ファンドには好業績銘柄(株価好調)と業績不調銘柄(株価不調)が混在しています。しかし、業績回復がすぐに見込めないという理由だけで売却をする事は、あまりありません。むしろビジネスの参入障壁が崩れていない限り、いずれは業績が復調するであろうという前提で、株価下落局面においては、しばしば買い増しを行います。

スパークス・新・国際優良日本株ファンド_月次レポート2017年8月

renny: という投資スタンスが説明されていますが、これまでお聞きしてきた吉田さんの投資行動に近い印象がありますね。

吉田:そうですね。下がったら安く買えるチャンスという認識ですね。

足元の業績が芳しくなく、結果として株価が下落基調にあるときに、目先の損失を恐れず買い向かっていく勇気が求められるのです。加えて重要なのは、市場参加者と異なる自分の見方が、やがて正しいと証明される事です。つまり、多くの市場参加者よりも自分の方が将来の予想に関して「確信度が高い」必要があります。

スパークス・新・国際優良日本株ファンド_月次レポート2017年8月

renny: 確信度が重要だということで、その確信度はどういうものに由来するのか、ということが続いて3つほどあげられています。

1. 消費者の嗜好変化や技術トレンドの変化があまり起きず、よって需要が急減したり、恒久的に需要が消滅する様なビジネスではない
2. グローバルに事業展開しているため、人口増加トレンドに伴い長期的な市場拡大と売上成長が高い確度で見込める
3. キャッシュフローが比較的潤沢に生み出されるビジネスなので、業績低迷が予想より長引いても財務構造が大幅に悪化するリスクが低い

スパークス・新・国際優良日本株ファンド_月次レポート2017年8月

renny: こういう要素を満たしていれば、確信度が高まるというふうに読めますが、この三つの要素とかご覧になって、吉田さんはどんなことを感じになりますか。

吉田:うーん。確信するほど自信が持てるかというと、どうなんだろう。

renny: 今どき何が起こるかわからないけれども、これを読んでいると、農林中金バリューインベストメントさんの「構造的に強靭な企業」と考え方が似通ってるようなところもあるのかなと。

吉田: なるほど。あとはバフェットさんがよく言う「堀」があるみたいな。

renny: “moat”ですよね。このレポートでは競争環境とか参入障壁という言葉が出てきてないですけど、でもそういう要素ですよね。ちなみに吉田さんの確信度が高くなるのはどういう要素があったりするんですか。たとえば株価が一斉に下落して、これは買いに向かうときだ、っていうとき最初に買いに向かうのは、株価の割安度なのか、事業の魅力なのか、どういう感じになるんですか?

吉田: どんな形で株価が下がってきたのかっていうのが大事なのかな。最近一番わかりやすかったのが、2020年3月のコロナショックの時。あの時はもう家から出られなくなるという雰囲気で、これでVRとかが一気に来るかなという明確なイメージがあったので、すでに保有していたNVIDIAに追加投資したり。でもやっぱり怖いから安くなっている手堅い企業、たとえばP&Gのような企業も買っておく。

renny:その時どういう判断するかは、何か決まったものがあるんじゃなくて、多少フィーリング的なものがあるってことなんですかね。

吉田: そうですね。決まったものはないないですね。普段から幅広くいろんな企業を見ておいて、暴落が来たときに判断するみたいな感じですね。

2020年6月のレポートを読む

吉田:次に注目したレポートは2020年6月のもの。成長株の定義というか、成長株とされている会社がPERやPBRが高めに付いてるけど、それでも株価や業績が好調なのはなぜ?という解説がされています。このファンドのレポートは、全般的にマニア向けで、初心者にはとっつきにくい内容が多いイメージです。だからこそこういう基本を解説しているものが大事なんじゃないかなと。それでもちょっとマニア向けな内容ですが。。。

renny:前編ではコカ・コーラの話もしましたよね。1972年にPERが46倍だったけれども、その後も株価、利益ともに順調に伸びたという話に通じるような内容ですね。

吉田: そうですね。こっちはどっちかっていうとPBRの内容になっていて、簡単に言うと貸借対照表には出てこない、ブランドとか特許等の数字に表せない資産価値があるから、成長株はPBRが高くなるんだよっていう解説がされています。

私どもはビジネスがもつ無形資産の価値が、企業の優劣を決定するうえでこれまで以上に重要になってきているという点に注目しています。当ファンドの組入銘柄のうち、無形資産の価値が重視されるのは、リクルートホールディングス(インターネットを活用した多岐にわたる広告媒体を展開)、ソニー(ネットワーク効果が期待されるプレイステーション事業や音楽、映画コンテンツなどの知的財産を活用した事業を推進)、キーエンス(工場を持たずコンサル営業でFAセンサーを開発・直接販売)などです。

スパークス・新・国際優良日本株ファンド_月次レポート2020年6月

renny:ここであげられている会社が、このタイミングでは組入比率が上位だったっていうのもあるんでしょうけれども、帳簿上に現れないようなブランドとかの価値を数値に直すってすごく難しいと思います。吉田さんが実際に投資を検討されるときに、何かヒントになるようなものってお持ちになったりしますか?

吉田: いや正直ないですよ。 こんなのがあるんだろうねって分かるけど数字にはできないですね。

renny: レポートであげられているもうひとつのポイントは、成長株企業と低位株企業が成長投資を行った場合の費用計上の方法の違いについて説明されていますね。

旧来型製造業では成長投資にかかわる負担分を差し引いた実質的な利益でみたPERはより割高になる、あるいはインターネット型成長企業では成長投資の負担分を製造業のように資産計上できると仮定すれば、PERはより割安になるということです。

スパークス・新・国際優良日本株ファンド_月次レポート2020年6月

renny:相当マニアックですね。

吉田:これは図とかを入れて説明しないと親切じゃない内容ですね。

renny: たしかにこのレポートもビジュアル面で小進歩があると、より理解が深まるというようなとこあるかもしれないですね。

吉田: 厳選投資のレポートを今回たくさん読んでみて、図解って大事なんだなと感じさせられました。

2016年12月のレポートを読む

renny: 続いて2016年12月のレポートを読んでみたいと思います。このタイミングでは投資先18社で1位から順にソフトバンクグループ、花王、テルモ、ユニ・チャーム、日本電産。この時はアメリカ大統領選挙でトランプさんが当選したタイミングだったらしいんですよね。たしかあのときって、株価がものすごく動いた記憶があるんですけど。

吉田:あのときは面白かったです。

renny: ソフトバンクの株価が当時すごく伸びましたと。孫さんがトランプさんといち早く会談をしたことで株価にインパクトがあったと書かれています。ただこのファンドが見てるのは、当時高く評価して国内の通信事業だと。あとは米国のスプリント社や、半導体のアーム買収の話題が書いてあります。もうひとつは日本電産に関する内容ですね。主に空売りを中心に展開するっていうファンドに目をつけられたと。日本電産をどういう理由でその空売りにしてるかというそのファンドの3つの主張について、スパークスさんの評価・認識について説明がされています。最新の2023年6月のレポートでも、セブン&アイと物言う株主ValueAct社の事例が紹介されていましたが、他の投資家の主張に対して、私たちはこう考えるんだと示してくれるのは、面白いなと思いました。これもすごくマニアックなのかもしれないですけれども、でもこれも本当ね図表とかあったらもっと分かりやすいんですよね。

吉田: そうですね。

renny: ただこのレポートを読んでいて思ったのは、要は今回の件をきっかけに、株式市場から従来にも増して厳しい目で業績が評価されることになるでしょうと、ValueAct社にしてみればプロキシーファイトで敗れはしたものの、一定の成果を残したと言えそうですと書かれています。確かにそうだなと。今年の株主総会では他にもいろいろあったと思いますが、これからますます増えていきそうな感じですよね。

吉田: いいことですよね。関心を持つ人が増えると思うので。

renny: 昔は村上ファンドが注目された頃のアクティビストは、企業が溜め込んだお金を株主に歓迎しろ、って要求が多かったですが、ここ最近は事業内容に踏み込んできている感じがしますよね。

吉田:こういう話が雑談にも出てくるようになるといいなぁと。例えばサッカーの日本代表の監督は誰がいいとか、スタメンはこの11人がいいみたいな会話と同じような感じで、この株主の意見の方がいいよねとか、経営者の主張が正しいんじゃないかな、みたいな雑談ができるような世の中になってくると、日本の株式会社もちゃんとしてくるんじゃないかな。

renny: たしかに株主じゃない人であっても、株価が上がった下がったではなく、会社の本質に近い視点で話ができるようになるといいですよね。以上のように厳選投資の月次レポートを読んできましたが、吉田さんのおっしゃるとおり、マニアックというかちょっと初心者にはとっつきづらい部分は改善する余地があるんだろうなと。一方でここまで詳しく書いてるファンドっていうのは、他に並び立つようなとこ少ないのかなと思うんですよね。こういうファンドが増えていくと、企業の事業内容についての雑談がもしかしたら増えるのかなとかって思ったりはするんですよね。

吉田: そうですね。今のマニア向けのままでは顧客層が広がらなさそうで、ちょっと勿体ない感じです。noteの更新も止まったままですよね。

renny:それが復活したんですよ。1月末を最後に更新が止まってたんですけど、今月中旬に再開しますというような記事が出ました。

renny: JR九州の「ななつ星」になぞらえて、「列車の乗客が車窓から見える景色に感動するように、私たちも企業一社一社のストーリーと、企業調査を通じて得た感動をお届け出来ればと考えています。」と宣言されているので、次の記事が楽しみだなと。

吉田:今度はちゃんと続いて欲しいですね。

renny:ぜひ続けてもらいたいなと思います。今回の厳選投資のレポートについてまとめると、もうちょっととっつきやすくしたらいいのにな、っていうところが一番すかね。

吉田: そうですね。今の書き方だと、マニアしか喜ばないし、集まってこないから。

renny: そういう工夫をnoteで発信してくれるといいのかな。僕はこういう情報発信の姿勢に対して、そこに追いつこうとしてくれるファンドが増えて欲しいなと思います。今後も読んだらためになる、読み応えのある月次レポートを紹介していきたいと思います。

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