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社会人の難関試験合格を阻む「罠」①

私は、社会人生活を普通に送りながら(かつ同時に育児をしながら)公認会計士試験を合格しました。筆者が公認会計士試験と両立したものは、以下の通りです。

・フルタイムの勤務
・残業(毎日平均1~2時間、繁忙期は+3~4時間)
・週に2回程度の夜の会食(当時はコロナ前)
・毎週末の友人との草野球(移動時間込みで4~5時間程/週)
・人事異動
・結婚、新婚旅行、育児
・家族旅行(年4回程)

世間では難関といわれる公認会計士試験とこれらを両立できたのは、私が天才だからではなく、社会人受験生が陥りがちな「罠」を徹底的に回避・排除できたからと自負しています。私が感じた「罠」を一つ一つ解説していきます。

本日のテーマは、「毎日、●時間勉強すべし」という目標設定の是非についてです。

ー常識としての「毎日●時間勉強しなさい」

受験予備校の指導を見ていると、「毎日●時間勉強しなさい」、といった指導がなされます。例えば、「公認会計士試験の必要総勉強時間は3,000時間~5,000時間と言われます。ですから、合格までに必要な年数を2年とすると、毎日4時間~7時間の時間を確保しましょう」といった具合にです。

要するに、必要な総勉強時間を試験までの日数で割り、毎日の必要勉強時間を指導しているのです。このような指導は、自律性が低く、一定のリズムがないと勉強をさぼってしまう学生にとっては必要な指導と言えるかと思います。

しかし社会人にとっては、「毎日●時間勉強しなさい」といった指導は、破滅への序章だということを誰も指摘してくれません。

ー社会人受験生の制約条件

そもそも社会人は、以下のような制約を持っています。

①時間的制約
・平日は、少なくとも7~8時間をオフィスに拘束される。
・加えて、繁忙期は残業も発生する
・夜も、会食や社内イベント等が、なかば強制的に発生する
・家庭がある方は、休日も家族サービスが求められる

②ライフイベントの変化
・人事異動による部署異動や転勤
・結婚、出産、育児、介護等との両立

③疲労・肉体的な衰え
・そもそも仕事で疲れており、仕事後の勉強に身が入らない
・遅れた分を、睡眠時間やプライベートの時間を削って行おうにも、体力がもたない

④モチベーション維持が困難
・そもそも職があって金も稼げている以上、勉強するモチベーションが低下しがち (社会人の平均勉強時間は6分!)

ー社会人の勉強挫折パターン

このような制約をもつ社会人が「毎日●時間勉強する」といった目標をもつとどうなるのか。

社会人は、①時間的制約や、②ライフイベントの変化により、勉強が全くできない日が出てきてしまいます。すると、なんとか休日や睡眠時間を削って、足りていない時間を補おうとするのですが、③疲労・肉体的な衰えがあるためにどこかで限界を迎えてしまいます。すると、④モチベーションの維持が困難であることもあいまって、最終的には挫折してしまうのです。

ー「毎日●時間勉強する」は無理だし、そもそもあまり意味がない

まず、社会人が毎日一定のリズムで「毎日●時間勉強する」といった目標を立てることは困難であることを自覚しましょう。凄まじい精神力を以て、「俺に限っては大丈夫、かならず毎日勉強する」といった目標を立てたい方も、半年後、1年後にはその意思が破綻しうることを自覚すべきです。勉強開始当初はモチベーションも高いため、風呂敷を広げがちですが、人間はそこまで強い生き物ではありません。

加えて、どの受験予備校も入門期(勉強開始当初)のカリキュラムは比較的余裕があるように設計されていますが、応用期(勉強期間中盤~後半)は、かなりタイトにカリキュラムが組まれています。入門期に毎日何時間も勉強したところで、直前期のカリキュラムを消化できなければ意味がありません。ですので、入門期間と応用期を十把一絡げに「毎日●時間勉強する」を目標とするのは、その観点でも効率的ではありません。

ちなみに、記憶の効率的な定着という観点から申し上げると、あまり頻繁に復習することは意味がありません。大切なのは、忘れたころに、思い出すという行為を繰り返すことにあります。その意味においても、毎日毎日分かっているようなことを確認するのは効率的でありません。従い、毎日●を●時間勉強する、というのは実は勉強量のわりに記憶の定着が行われないのです。

ー試験は写真撮影と一緒であることを再確認しよう

そもそも、「毎日●勉強時間する」は、遵守したところで合否に直結しません。なぜならば、試験は試験日「当日の状態」を確認されるものであって、あなたがあの日何をしていたかですとか、普段どれだけ努力していたか、というのは一切問われないからです。

写真を撮るときのことをイメージしてください。前日まで風邪を引いていようが、感情的に落ち込んでいようが、シャッターを押される瞬間に笑顔がだせれば写真としてはそれでOKです。逆に、どんなに体調がよく、気分がよかったとしても、シャッターが押される瞬間に目をつむってしまったり、笑顔になれなかったりすれば、写真としては失敗におわります。

試験も、試験当日にシャッターが押されるという点で、写真と全く一緒です。毎日勉強していようがいまいが、あの日に遊んでいたのか、それとも勉強していたのか、この辺りは全く問われません。試験当日に「学んだ知識を持っているように見せる」ことができればそれで合格するのです。大切なのは、試験当日にどのような状態でいたいか、それを実現するために2~3年の勉強期間トータルでどのように使うかということです。言い換えれば、大切ななのは、目標とそれを実現するための「仕組み」であり、毎日の勉強時間ではないのです。


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