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サッカーのダイナミックトレーニング7 〜高強度のダイナミクス(相互作用)〜

Writer

坂本 圭

坂本さん

●経歴
・スペインサッカーコーチングライセンス・レベル3(S級相当)取得
・2016-2017:CF Badalona(2B)(バルセロナ近郊のクラブ)で試合分析を担当
・2018-2019:東京・清瀬VALIANT で指導
・2019年4-12月:FCバルセロナアカデミー品川大井町校

●SNS
note:https://note.com/sakamotokei68
Twitter:https://twitter.com/ideailista

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高強度のダイナミクス(相互作用) その日の選手間/チームの調整

スピードの概念

「私は君に言うことがある。FCバルセロナで最もスピードのある選手はペップ・グアルディオラだ。君は多分、 NO ? と言うだろう(フィーゴやセルジの方がもっとスピードがあるじゃないかと)。私はその週のスピード・トレーニングで、バルサの選手の中で、誰が最もスピードがあるかテストしたんだ。それはある状況を設定したスピード・トレーニングで、5m〜20mの距離を、ストップ、スタートなどを織り交ぜたものだ。グアルディオラはセルジより速かった。そう、グアルディオラは予測してセルジより先にスタートを切るんだ。このトレーニングを実行中は味方の配置を見ながら、こっちの方向か、それともあっちの方向に行くべきか瞬時に決めて、グランドの特定のポジションに到着しなければならない。そのトレーニングで一番はグアルディオラだった」

 セイルーロ(2000)


ペップ・グアルディオラはスペイン代表で1番速い

高強度のダイナミクス(相互作用)を説明する前に、そこに内在されているサッカーのスピードについて考えたいと思います。

今は監督として有名なペップ・グアルディオラですが、選手時代はその当時のバルサの選手の中で最もスピードがある選手と言う評価でした。この評価は、FCバルセロナだけではなく、スペインサッカーコーチングコースの指導教官達もペップ・グアルディオラがスペイン代表の中で一番早かったと言っています。シャビやイニエスタよりも速いと言う評価です。

皆さんご存知の通り、ペップ・グアルディオラは痩せていて、筋肉もあまりついていません。シャビやイニエスタもそうだったようですが、短距離走をチーム内で行った場合、最後尾になるのがペップ・グアルディオラだったようです。


サッカーに要求されるスピードとは何でしょうか?

サッカーのスピードとはなんでしょうか?
最初にサッカーのスピードとは何かを考えるところから始めます。

フランシスコ・セイルーロとアンヘル・カッパ(アルゼンチン人、サッカー監督、作家)との対談で、アンヘル・カッパがフランシスコ・セイルーロにこのような質問をしました。

(カッパ):例えば、スピードについてだが、サッカーはプレーをする前に正確に周りを見なければならない。
(セイルーロ):他のスポーツもトレーニングをしたことがあるけど、サッカーは、サッカー選手のスキルにもっとプレミアムを与えるべきだと思う。インテリジェンス、決断、感受性、スペースと時間の理解等。どうしてかと言うと、サッカーというスポーツは自分自身のプレーに集中しなければならないのと同時に、チームとしても集中しなければならない。このスポーツはそのような能力が備わっている人が適していると思う。サッカーは非常に特別なスポーツだよ。

前回にも説明しましたが、サッカーという複雑性の高いスポーツの特殊性は、

木も見て森も見る

です。

フランシスコ・セイルーロも「サッカーというスポーツは自分自身のプレーに集中しなければならないのと同時に、チームとしても集中しなければならない。このスポーツはそのような能力が備わっている人が適していると思う。サッカーは非常に特別なスポーツだよ。」

とこのように述べています。陸上競技やその他の個人競技のように自分のことだけに集中していれば良いスポーツではありません。サッカーという集団スポーツの特殊性と個人スポーツとの違い、スピードに対しての考え方の違いを理解しなければなりません。

フランシスコ・セイルーロとアンヘル・カッパの対談をお読みになりたい方はこちらからどうぞ。サッカーの特殊性、ヨハン・クライフのウォーミングアップや、ウエイトトレーニングについてなど、興味深い内容を2人が語っています。


フランシスコ・セイルーロが提唱するサッカーにおけるスピードの定義です:

サッカーにおけるスピードの定義:
「少ない時間である一定の距離を走ることのできる選手ではなく、試合の中で起こる様々なプレー展開を最適な形で分析、実行、解決できる選手」


フランシスコ・セイルーロのサッカーにおけるスピードの定義は「試合の中で起こる様々なプレー展開を最適な形で分析、実行、解決できる選手」です。

そのように考えると、サッカーにおいてのスピード・トレーニングは、試合の文脈の中(試合の状況を再現するような)でのトレーニングが必要だと言うことが分かると思います。ボール、選手、チームメート、ゴール、相手、スペースと時間等を考慮し、試合の状況を再現するようなトレーニングをしなければなりません。

フランシスコ・セイルーロが提唱するサッカー選手のスピードについて詳しく知りたい方はこちらをお読みください。


イニエスタのスピード

現在、Jリーグのヴィッセル神戸でプレーをするアンドレス・イニエスタ。わたしもバルセロナに住んでいたときは何回も彼のプレーを堪能しました。

イニエスタのプレーは優雅で動きに無駄がなく美しいので、速いと言うイメージはありません。しかし、実際、彼のプレーを見ると相手もチームメートもその速さについていけない場面を何度となく見てきました。

例えば、テージョという選手がバルサでプレーをしていました。おそらく、彼の移動スピードはバルサの中でもトップクラスです。

私はカンプノウでバルサの試合を観戦していたのですが、テージョはイニエスタのパスに追いつけません。脚が滑ってつまずいたり、スタートが遅かったりして、イニエスタが出したいスペースにタイミングを合わせてテージョは動き出すことができない場面を何度となく見ました。対戦相手だけでなく、チームメートも対応できないくらいのスピードなので、さぞかし相手チームはイニエスタに苦労を強いられたことでしょう。

その時、これがサッカー特有のスピードと言うんだと言う確かな認識を得ました。

イニエスタのスピードに適応できるのは、その当時、メッシ、シャビ、ネイマールくらいだったと思います。おそらくスアレスも適応できるでしょう。

下記は、フランシスコ・セイルーロが、イニエスタがバルサに加入した12歳の頃から現在までを分析して説明しています。興味のある方は読んでください。


彼には体力がなく、スピードもなく持久力もなく、柔軟性もなかった。
                             フランシスコ・セイルーロ


クリスティアーノ・ロナウドから見るサッカー選手のスピード

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