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成長期サッカー選手のオスグッド~競技復帰のためのメディカルリハビリテーション~

普段は栃木県の病院で理学療法士として整形外科・スポーツを中心に、現場のコーチとドクターと連携を取りながら、競技復帰を目指しリハビリを行っています。外部活動として高校サッカー部のトレーナーをしております。また、個人として「かけっこ教室」・「フィジカルトレーニング」指導を行っております。医療と現場を繋げられるような、現場で役立つメディカルの情報を主に発信できればと思います。

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皆様、こんにちは!

PITTOCKROOM MEDICAL TEAMメンバーの安江です。

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ピッチでの傷害予防をアップデートし、怪我からのリハビリ期間をパフォーマンスup期間へと変革するというvisionを掲げ、サッカーに関わる全ての人へ、より良いものを届けられるように記事を書いていきます!

今回は成長期サッカー選手に多いオスグッドについて,少しでも知って頂き予防に役立てて頂ければと思います!よろしくお願いします!

育成年代の特徴

育成年代の指導者なら一度はオスグッドで悩んでいる選手に出会ったことがあると思います.

オスグット病の説明に入る前に育成年代がなぜ大切か?

ケガを予防しなくてはいけないのか?

育成年代の特徴について説明していきます!


育成年代は精神的・身体的な発育段階でサッカー選手としての基礎を作る時期と言われています.

身体面ではグロース・スパート(身長と体重の増加が著しい時期)と重なるため骨の成長に伴い,相対的な筋肉の柔軟性低下が生じることが多いです.

それに伴い,動作の協調性低下や関節の動きに制限が生じてくることを多く経験します.

私の経験でも小学校高学年や中学生になると,急に顔つきや体格が大きく変化し、今まで出来ていた動きが出来ない,動きがぎこちないと感じることが多いです.

上記のような理由で成長期は特有の障害が増加するため個人の成長段階を観察しながら身体機能を確認していく必要があります.

またサッカー選手の基礎能力向上させていくためにもケガの予防は重要になります.

オスグッドによる膝痛が持続することにより日々のトレーニングや試合を行えないことは結果的にパフォーマンスレベルの低下につながります.

オスグッド病

オスグット病

オスグッド病とは成長期の脆弱な脛骨粗面に膝蓋腱を介した牽引力が繰り返し加わった結果生じた,骨化核の癒合不全であると言われています。

簡単に説明すると,骨の弱い時期に繰り返される大腿四頭筋の収縮により膝蓋腱が骨を引っ張り痛みがでるケガです!

上記の右側の写真のように骨が引っ張られ,膝下の骨が出っ張ってきます.ただの成長痛ではありません.

脛骨粗面の発育過程

オスグッド病がなぜ?成長期に多いのかを理解するためには骨・脛骨粗面の発育過程を理解することも重要です.

脛骨粗面の発育過程

①Cartilaginous stage:骨化核(骨の成長過程)の出現前

②Apophyseal stage:舌状部に骨化核が出現

③Epiphyseal stage:脛骨結節の骨化が脛骨骨端に癒合しているが脛骨結節の表層は軟骨で覆われている

④Bony stage:骨端線が閉鎖

成長期は骨も成長する時期で上記の図のように、おおよそ18歳で骨端線が閉鎖し,骨が成熟して強い骨になっていきます.(性別や年齢により多少の個人差はあり)

Apophyseal stageやEpiphyseal stageでは力学的に骨が弱い時期と言われており,Apophyseal stageは身長の年間伸長量が急激に増加する時期とおよそ一致します.この時期は骨の成長に対して筋腱の成長が追い付かず,相対的に筋腱が短縮しやすい時期であるため,オスグッド病の発生リスクが高い時期と言われています.

小学校高学年~中学生くらいに身長が急に伸びてきた選手がいたらこの時期かもしれません!注意して選手の状態を観察して行きましょう!

オスグット病の疫学

ここからはオスグッドの疫学について説明していきます!!

成長期に生じ好発年齢は男子で10~15歳,女子で8~13歳である.スポーツ歴がある場合の発生率が多いと報告されている.
OSDは女子が男子より早期に発症することが報告されており,女子では8~14歳,男子では10~18歳に好発する.
オスグッド病は脛骨粗面部の腫脹,圧痛,運動時痛などを主訴とし,成長期(男児では12歳前後,女児では10歳前後)のスポーツ選手に多く約30%は両側性に発症する.
男子が女子の3倍多いとされてきたが,近年女子スポーツ人口の増加によって,発症に性差がないと報告も散見される.
走る,方向転換,ジャンプ動作などの多いサッカーには多く発症する.
サッカー選手ではキック動作の軸足側から発症することが多い.

過去の報告からも成長期に多く,女子の方が男子に比べ早期に発症することが分かります.成長期に膝を痛そうにしている選手がいたらオスグッドかもしれません.

オスグッド病の危険因子

予防とリハビリを考える上では発生の危険因子を理解することはとても重要になってきます。

過去の研究では・・・

大腿四頭筋の柔軟性の低下
足関節の背屈制限
サッカー動作ではOSDを発症する選手は柔軟性の左右差があると報告され,不良なキック動作が影響している可能性が高い.

上記のような事が報告されております.キック動作も含めオスグッドの選手を評価する際は必ず確認しておきたいですね.

メディカルリハビリテーション

治療方針

オスグッドの症状は痛みが増えたり,減ったりをを繰り返すものの,骨端線が閉鎖(骨の成長が終わる)すれば多くは軽快します.

多くは保存療法によく反応し,症状が続く場合は手術が選択されることもあります.

私は手術を経験した選手にあったことはありません.

早期発見適切な対応をすれば完治するケガです!!

しかし,選手および指導者・保護者への説明は必要で,オスグッドは自然治癒可能ですが,症状が消失しても脛骨粗面が隆起(膝下の骨の出っ張り)したり,小骨が遺残する可能性をがあることを理解してもらう必要があります.大人になってからも痛みはないが骨が出っ張っている人も多いです.覚えておきましょう.

画像診断(レントゲン・超音波)

病院では骨の状態を確認するために画像診断にて脛骨粗面の発育段階,病期を確認していきます.

初期:脛骨結節の淡い透亮像を示すもの

進行期:骨片の分離もしくは分節化を示すもの

終末期:骨片の遊離を示すもの

画像にて病期を確認し医師の指示の基に治療を進めていきます.

リハビリ前の評価

医師の診察結果とオスグッド病の危険因子を参考にして評価を実施します.

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