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NHKマイルカップ回顧 ~ 松国ローテと現役最強の証明

松国ローテについて語りつくしたい。

NHKマイルカップと聞くと思い出す馬がいる。
2010年の優勝馬、ダノンシャンティだ。
詳細はWikipediaでも見て頂ければ良いと思うが、『鬼脚』というに相応しい豪脚で当時の日本レコードを叩き出した。
「これは凄い馬が現れたぞ」と思ったのも束の間、次走ダービーの前日に骨折が判明し戦線を離脱。復帰後にさらに屈腱炎を発症し引退。悲運としか言いようがない。

このダノンシャンティが所属していた厩舎がタイトルの松国こと『松田国英厩舎』だった。現役の馬だとタイムフライヤーが所属する厩舎。

この松国厩舎は当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続けていた名門厩舎だった。ダノンシャンティの直近の所属馬では、クロフネ、タニノギムレット、キングカメハメハ、ダイワスカーレットと、日本を代表するスターホースがズラリと並ぶ。
さらに現在では超一流調教師となった友道調教師、角居調教師が松国調教師の弟子と、どれだけ凄い調教師か分かると思う。端的に言えば俺は松国先生のファンだ、既に伝わったと思うが。

そしてダイワスカーレット以外の、上に記した4頭が挑んだ3歳路線が『松国ローテ』だ。
(毎日杯) → NHKマイル → ダービー → (天皇賞・秋)
タニノギムレットはスプリングSから皐月賞も出走するという変態ルートを辿っているが、基本的に皐月賞はパスをし、NHKマイルからダービーに進む。秋は菊花賞ではなく天皇賞秋に出走し、古馬との決着を目指すという、変則2冠+天皇賞秋。(個人的に東京三冠と呼んでいた。)
正に『現役最強の証明』をする為のローテ。

只でさえG1を中3週で使う強行ローテのうえ、使うだけではなく勝たなければならない為、馬が故障するかどうかギリギリの負荷をかけて調教。これは松国調教師のこだわりで、競走馬の第二の人生(引退後)を思っての選択だ。牡馬で種牡馬になれるのは稀で、繁殖に入れなった競走馬の余生はとても充実しているとは言えない。
皐月賞ではなく、NHKマイルを使い1600mをこなすスピードを示すことで種牡馬としての価値を高め、ダービーを制して春の内に世代最強の称号を獲得。秋は天皇賞秋で古馬を倒し、現役最強を証明し、種牡馬として幸せな余生を送ってほしいという願い。感動するやん。
逆に牝馬は繁殖に入れることが多いため、無事に牧場に帰す為に常に余裕残しの調教だった。何それ、またまた感動するやん。

しかし、やはりというか何というか、故障馬が続出した。続出したというか、松国ローテを狙った馬は全頭故障。無事に引退まで走り切った馬はいない。キングカメハメハの故障についてのインタビューで「またやってしまいました・・・」と憔悴しきった顔で語った松国先生の顔は忘れられない。まぁ当時は叩かれに叩かれてた。

でも現在の競馬ファンは松国調教師を責める事が出来ないと思う。
タニノギムレット、クロフネ、キングカメハメハは言わずと知れた名種牡馬だ。もしヌルい調教なんかしてG1を制覇する事ができていなかったら、俺の大好きなウオッカも産まれていない。ロードカナロアも産まれていないから、みんな大好き最強牝馬アーモンドアイも産まれていない。
故障による早めの引退だったから種牡馬として大成できたという見方もあるくらいなので、あまり松国先生を責めないであげてほしい。多分に運も含まれると思うが、この功績が現在に与えた影響は計り知れない。それでも許せないなら、松国の文句は俺に言え。当時の松国先生の憔悴しきったインタビューの物真似をしながら謝ってやるから。

結局、キングカメハメハが変則2冠までは達成したが、この松国ローテを完成させた馬は居ない。一番近付いたのが、他厩舎だがディープスカイだろうか。
変則2冠を達成し、無事に天皇賞秋まで進んだが、惜しくも3着。そしてその時の優勝馬がウオッカ(父タニノギムレット)、2着馬がダイワスカーレット(松国厩舎)と、まさかの因縁の馬たちに阻まれる決着となっている。本当に競馬はドラマティックやで、なあ工藤。

ちなみに毎日杯1着からNHKマイルに進んだ馬がNHKマイルで好成績なのは、この松国ローテの馬が多い為だ。
たしか松国先生が毎日杯を使うのも理由があって、その後のクラシック路線に一番繋がる(皐月賞の中山適正と、東京1600mをこなせるか見る)からという理由だったと思う。少しでも馬券の参考になれば・・・。

現在では忘れ去られた過去の遺物だが、また誰か挑戦する人馬が出てこないか、密かに毎年楽しみにしている。

嗚呼、松田国英 a.k.a. 松国 。
最近は振るわないが、引退までに松国ローテの完成を見てみたいというファンの願いをここに記す。
あと、ヒップホップでよく見られる、この a.k.a. という言葉は also known as の略で、「~~としても知られる」という意味だ。こういう豆知識をドヤ顔で得意気にばら撒くと非常に気分が良い。

気分が良いところで今回のお話は終了。左様なら。

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