手紙について 3

小学校高学年の時、学校の先生たちに手紙を書こう、と言う授業があった。
クラス全員が担任の先生に、ではなく部活の先生、校長先生、給食調理のおばさん、用務員さんなど、なるべく一人に偏らないようにして。
私はバスケットボール部にいたので、副顧問になった新任の先生に書こうと決めた。先生になりたてで控えめな様子は「大人」というようりまだ私たち学生に近い感じがした。新卒だったと思う。
若々しい髪の長い口数の少なさは「神秘的」と私には写った。
好きな先生が部活にいることが嬉しかった。
私はそれを手紙に書いた。

出す人によって「手紙」の反応は欲しい。
子供だったから、手紙と返事は一対だった。
けれど副顧問の先生からの返事はなかった。
手紙を出したことを伝え、先生が受け取っていたこともわかったけれど、返事を書く気はないとわかった。
今なら「授業ならなおさら、子供に返事がこない手紙を書かせるな」と物申すところ。

クラスの中で一人、返事をもらった子がいた。
女の子だった。
職員室にいる女性の事務員さんから返事をもらったと、みんなに見せていた。
和紙の便箋に筆で書かれていた。和紙もサラサラと書かれた文字も美しかった。
「いいなぁ」
と思った。
ほとんど関わることのない事務員さん。年齢は30代、40代くらい。
女の子は何を書いたんだろう。
接点がない事務員さんに何を書こうか考えて考えて手紙をおくったのだ。
だから事務員さんは「一生懸命手紙を書いてくれてありがとう」
と女の子に伝えたくて返事をくれたのだ。
先生は「先生」であるけど「大人」ではない、とその時感じた。
とても印象に残っている思い出。