メモ_004

今後の取り組み~2017年の現在地

―この文章を書こうと思ったきっかけ

「どうしてそんなに地方に興味があるんですか?」

「あちこち行ってるみたいだけどなんで東京を拠点に置いて仕事をしているんですか?」

世間一般で「地方創生」という言葉が一人歩きするようになり、そんな部署名がつくところで働いていると、よくこのように聞かれることが多くなりました。

たぶん考えていることと今自分が注力していることに何段階か理由が挟まっていて、周囲の人にはわかりにくいと思うので、今後新しく立ち上げていくプロジェクトのためにも、現段階の考えを少しまとめておこうと思います。


■これまでやってきたこと

元々地域に興味を持ったきっかけは、自分の地元が嫌いだったからです。ミニニュータウンみたいなところで育ちましたが、田舎なのに人間関係は都市より希薄な中途半端さが大嫌いでした。

「何であんなに嫌いだったんだろう?」ということがひっかかっていたので、大学の卒論では、国際関係学のゼミにいたのに自分の地元の団地のことを書きました。

それで、自分の地元への憎しみの原因は、地域ではなくて、人間への影響を考えずに開発を行ってきた社会や制度にあったことに思い至り、そこから一般に「地域問題」ということに関わって生きていくことになりました。

個人の問題から出発し、「いかにおもしろい地域を作っていくか、日本という国に、居心地がいいコミュニティをどう生み出していくか」がテーマとなりました。

その課題に対し、20代はいろいろなアプローチを試みました。

「新しい地域を創造する」ことに希望を抱き、地域再生ビジネスを手掛けている会社に入り、牧場づくりや循環型コミュニティづくりに携わりました。

一方で、自分が経験しなかった、地域の「本物のコミュニティ」を求めて、富山県の山深い過疎の村に50回以上も通って、様々な交流プロジェクトをやっていました。

震災後は岩手県の陸前高田市で壊滅したまちを新たにつくるために、住民の自治組織の運営をしたりました。

それで、地域の疲弊の原因は結局人の問題に行き着くことを痛感し、「地方で働く人を増やす」ことを目標におき、そのための「仕組みづくり」を追求しようと思うに至りました。

どこか特定の地域で事業拡大の担い手になることも考えましたが、現状の自分の特性と関心から、仕組みづくりに注力した方が貢献度が高いと考えました。

具体的には、昨年より、大都市在住者の地方就職(Uターン、Iターン)を推進するプロジェクトを運営しています。


■これから取り組もうとしていることとその背景

「地方創生」という言葉が一人歩きして、誰のために何をすることが必要なのかよくわからなくなっているので、もう少し自分のアクションの目的を明確化しておきます。

まず、こんな仕事をしていてなんですが、国内の全自治体の産業が活性化し、どこも人口を増やすことは現実的に不可能です。意思があって、そのための行動ができるコミュニティが残っていくと思います。

そして、この数年で行われている地方創生施策をいかに促進しても、その先に問題の解消(=東京一極集中の是正)はないと思います。

単純にいってしまえば、満員電車が嫌だとか家賃が高いとか言いながらも人が東京圏に残り続けるのは、そこで得られるもの(刺激、賃金、ステイタスなど)に対して支払うコストが安すぎるからで、それが地方に住むことのメリットデメリットと均衡していないから偏るのだと思っています。これが是正されない限り(都市居住税を跳ね上げるとかしない限り)、マジョリティにとって、東京に住むか地方に住むかを選択の遡上に上げることは難しいでしょう。

上記を前提にした上で、それでも今自分が「地方で働く人を増やすために、地方で働くことに興味を持つ人と地方企業のマッチング確度を上げる」仕組みづくりにまい進しているのは、そう遠くないうちに経済の地殻変動が起きて、地方で経済を回していく時代になると思っていて、その時のための準備の意味合いが強いです。(このあたり詳細は別の機会に書ければと・・。)

そして、これからの地方で必要になる人材は2種類いると考えています。

①主に地方都市で、事業再編の担い手となる人材

②主に過疎地域で、単独で事業を複数作り出せる人材

①は、これまで様々な地域の事業を支えていた経営者たちが大量引退するタイミングに入っており、効率的な事業運営を行う事業者が事業を買いとって再編していく流れが多くの業界で起きています。ひふみ投信の藤野さんの著書「ヤンキーの虎」で書かれているような世界です。

ここで働く人は、経営者のビジョンを理解して翻訳することができ、かつ現場の事業運営力を向上させていく人格と分析力と粘り強さを持つことが必要です。

②は、人口の急激な減少がすでに起こっている過疎地域で、これまで回っていた経済の担い手が抜け落ちた中、ひとつひとつは収益力が小さい事業を複数マネジメントして維持していく人材です。地域ではごく一部の経営者がもっていればよかった能力が、個人レベルで必要とされていて、それができる人が圧倒的に少ないのが現状です。

今、メインで行っている事業は、事業再編を的確に行ってくれる企業と、①の候補者となる人材をマッチングさせる事業で、個人的に準備を進めているのは、②の人材を育成していく事業です。


■取り組みの課題と個人の立場

地方企業と①の人材マッチングは、これまでなかなか進んできませんでした。自分は民間の人材会社に所属していますが、人材ビジネス(特に職業紹介)は、企業側からの成功報酬によって成り立っています。それが払えない多くの零細企業(地方に多い)を相手にするよりは、払える大企業(大都市圏に集中)を相手にした方がビジネスとしては有利なので、当然大企業案件に偏ります。ハローワーク等の公共の職業紹介所では無料で求人を掲載することはできますが、個人に合わせたマッチングが行えるわけではありません。

この問題を解消しようと、高度技能人材に限っては、プロフェッショナル人材センターという拠点が各道府県にできて、企業開拓コストを公的資金で負うようになっていますが、若年者のマッチングを行う事業がありません。

現在一番近しいのが、厚生労働省が行う地方人材還流促進事業(通称LO活プロジェクト)であり、自分が担当している事業です。地方就職の啓蒙活動がメインの事業ですが、これをうまく機能させて、なんとか地方の有力企業と①の担い手のマッチングを促進したいと思っています。

②の人材育成に関しては、京丹後市で実際にモデルをつくろうとしている友人がいるので、現場でのノウハウ開発と全国での情報共有を進めていきたいと思っています。

①のマッチング事業も②の育成事業も、広い意味で未来のための投資事業なので収益化しづらいです。

そこを担うのは公共事業だと思いますが、国の事業でここまで書いてきたような目的を見据えて出されている事業は少ないので、咀嚼しながら近しいものを本来行われるべき投資に結びつける存在が必要だと思っていて、自分はその役割を果たそうとしています。(呼称がないので勝手に「パブリッククリエーター」と呼んでいます)


広い話題をざっくりと書いてしまいましたが、詳細はおいおい説明できればと思います。

ひとまず2017年初頭のプランを書き残しておきます。

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