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レヴィ=ストロースを実生活にインストールしてみたら。

はじめに
本noteは、「実生活にさまざまな考え方をインストールしてみたら。」をコンセプトに、小難しい哲学や文化人類学、思想などをできる限り実生活に近い形で示唆を抽出して応用できないかを模索するシリーズです。
放っておくと最適化に向かってしまう現代の私たちにとって、自分の思考の枠組みの外に触れることで、今の当たり前を疑いとらわれている価値観を解放し、世界を広げる効果があると考えています。
記念すべき第一回はレヴィストロース。お楽しみください。

My Story

初めてレヴィ=ストロースの構造主義に出会った時、その論調があまりにも現代社会の当たり前とは異なっていたため、理解が難しかったことを覚えています。
それまで私が当たり前だと思っていた「社会は進歩している」「個人はユニークであり、主体的に人生を歩めば自分自身が人生を切り開ける」という考え方に対して、構造主義はアンチテーゼを投げかけてくれました。
また、私自身が人生の転機を迎えるタイミングでもあり、自分の価値観をアップデートする上での助けとなってくれた考えでもありました。

現代社会で生き方に悩む人々にとって、示唆に富んだ考え方を提供してくれます。


レヴィ=ストロースの構造主義とは何か

※私は学者ではありませんので、以下は参考程度にご覧ください。
レヴィ=ストロースは、西洋哲学史の集大成とも言われ、数多くの西洋哲学の偉人たちの成果をまとめ上げた人物です。(厳密にはその後にポスト構造主義などの思想も生まれていますが、ここでは割愛します)
構造主義を理解するために、構造主義が登場する以前の歴史について少しだけ触れておきましょう。
レヴィ=ストロースの前には、「実存主義」と呼ばれる考え方が広まっていました。平たく言えば、「人間には存在の価値があり、個人として生きる道を切り開いていける」という考え方です。
誰でも自分の人生を意味あるものにしたいと思うものです。その前提となるのは、自分という個人が尊重され、社会的にも尊重されるべきであるという価値観です。そして、自分次第でどんどん切り開いていけるという価値観があります。
これは現代の社会においても一般的な価値観の一つです。
そこに対して、レヴィ=ストロースは構造主義という思想を提唱しました。

構造主義とは、人間の社会的・文化的現象の背後には目に見えない構造があると考える思想を指します。簡単にいうと、実は社会の深層に「目に見えない構造」があって、それが目に前にみえる「人間の社会的・文化的現象」を形作っているということです。

https://liberal-arts-guide.com/structuralism/

私の解釈では、「構造というものが先にあり、その構造に沿ってそれぞれの人格や価値観形成が起きる」というふうに解釈しています。
これだけでは、まだ「???」という感じでしょうか。
この概念は、現代の世界において当たり前とされる価値観とは大きく異なるため、具体的な例を挙げて考えてみます。

<例1>
一人の人生を思い浮かべてみましょう。自分でもいいですし、友人でも大丈夫です。
自分という人間は、たくさんの選択を重ねて今に至っていますよね。だからこそ、誰一人として同じ人生はなく、あなたらしいユニークな人生を送っているわけです。
しかし、構造主義的には、「あなたと同じように国に生まれ、家族に育てられ、学校に入り、同じような出来事があれば、構造的にはあなたと同じようになる」と考えます。この意味では、あなたはユニークな存在であるというよりも、「構造的にはあなたになり得た」という主張です。

これでイメージが湧いたでしょうか。

他にも、例を挙げて考えてみます。
<例2>
入社1年目で、仕事がうまくいかず悩んでいるとします。上司に叱られ、チームともうまくいっていません。
しかし、友人とたまたま食事に行ったとき、その友人も自分と全く同じ悩みを抱えていました。自分だけではなく、お互いに悩みを相談しあってまた頑張ろうと思えたとします。
この場合、実存主義的には、「私は、友人に助けられ、人生をまた自分で切り拓こうと思った」という表現になります。一方、構造主義的には、「あなたは構造的にその環境にあるから、同じような悩みになることが確定しているので、同じような環境の友人も同じようになる」という表現になります。

この違い、少しはわかっていただけたでしょうか。

レヴィ=ストロースの人生を紐解いていくと、彼は文化人類学者で狩猟や農耕をして暮らす先住民的な生き方を知ったことで、近代の発展性に疑問を投げかけることができたのだと思います。『野生の思考』という著書は必読です!!


実生活へのインストールをする

構造主義的な感覚があると、普段の仕事や生き方に有用です。

1、悩みを冷静に見ることで少し楽になる
例えば、仕事の悩みがあっても、「構造的に、こういう状況だったら、こうやって悩むかもしれない」と一定の客観性を持って見ることができるため、悩みの深みに陥ることなく、少し楽になることができます。
感情に飲み込まれることが多い悩みの場合でも、「でも、構造的に考えれば…」と冷静に自分自身を見つめることで、冷静さを取り戻し、問題解決に向けた勇気を持つことができます。

2、主体的になりすぎず、生き方をより楽にする
「人生を全て自分で切り拓くぜー!」という実存主義的な考えもいいのですが、時にそれは全部自分が責任みたいにもなって苦しめる考えにもなりえます。
構造主義的な考え方を持つことで、「まぁたまたま自分の人生は構造的にこうなっているだけだからな」と気楽な考え方ができ、未来に過度にこだわったり、現状に嘆いたりすることがなくなります。

3、他人と比較することがなくなり、他人に寛容になる
自分自身だけでなく、他人に対しても、「この人の人生がこうなっているだけだからな」という考え方ができます。
そのため、駅で肩をぶつけた人や、道端でタバコを吸っている人に対しても、「たまたまこの人はいろんな背景があって今こうなっているだけだ」と捉えられます。裏返せば、自分自身も同じような人生を歩んでいる可能性があるということなんです。これを理解することで、他人にも寛容になることができます。

いかがでしたでしょうか。実存主義的な考え方と構造主義的な考え方をうまく取り入れることで、より生きやすい生き方をすることができると感じています。何か参考になれば幸いです。

Appendix

いくつかAppendixを掲載します。

流石のCOTEN RADIO。音声コンテンツで、かなりわかりやすいです。


100分で名著は、ほんととっつきやすい本でおすすめです。


これは個人的に面白かっただけで、レヴィ=ストロースには全体の1%くらいしか触れてくれません。ただ、会社に落とすとそういうことねーみたいなのがぼんやり見えてきて面白かったです。

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