創作向け赤軍(労農赤軍・ソ連軍)について~その①~
独ソ戦(大祖国戦争)をテーマにした螺旋人先生の素敵な漫画の数々、大木先生の『独ソ戦』、コミック版の『戦争女の顔をしていない』、『同志少女よ、敵を撃て』等々、マンガや小説でのクローズアップもあったり、動画配信サービスでロシア映画も気軽に見られるし、T-34はめっちゃ流行ってた気がするし、モスフィルム(ロシアの映画会社)の古い作品がYoutubeでたくさん見ることができるし、昨今本邦における独ソ戦(大祖国戦争)中の赤軍(労農赤軍・ソ連軍)に対する注目が高まってきているような気がしませんか?え?しない?そうかなぁ…
実際創作で何かを作ろうとしたら、独ソ戦の独軍はいっぱい日本語の資料があるのに、赤軍のことって何が何やらわからなくないですか?ちなみに私もわかりません…色々調べてるけどこれがこう!って断言できるレベルにはないです…でも調べておぼろげに見えてきたものを当時発行された資料を元に、とりあえずnoteにもアカウント作っちゃったし、ミクロな話をぼちぼち書いていこうと思います。ここに書いたことは今時点の私の見解なので、今後新しい情報が出てきたらまた変わります。ごめんね。
創作における考証には終わりがなくて、徒労に終わることもあるのだけれど、作品にリアリティを吹き込むのは考証だと思うし、考証で作品が死ぬこともある…いつだって考証を取捨選択する権利は書き(描き)手にあると思うので塩梅はお任せします。私は自分で何かを作り出すことはできないので、それをここを読んでくれた人に託したいと思います。
軍隊ってなんだろう?
軍隊って不思議ですよね、何万もの人間で構成される巨大な組織で、赤軍だと一時期500万人を超える人間が戦争をしたり、巨大な組織を支えるために、ソ連邦のインフラを支えるために従軍していました。皆さんも学校とかで経験があると思いますが、集団生活って大変、、、その集団生活を支えるために規則(軍法)を作り、軍服というユニフォームを統一し、兵科(学科みたいな感じ)があり、階級制度を作って形作られるのが軍隊です。階級社会に加え、軍隊に何年居たか、勲章をどれだけ貰ったかでも階級社会を超えた暗黙の了解みたいなものがありました。
ソ連軍ってなぁに?
40年の教本にはソ連邦が保有する軍備(Вооруженные силы СССР)は徴兵法に則り労農赤軍(Рабоче-Крестьянской Красной Армии略すとРККА)、労農海軍(Рабоче-Крестьянской Военно-Морского Флота略すとРКВМФ)、国内軍(Внутренних Войск略すとВВ)、国境軍(Пограничных Войск略すとПВ)に大別されてます。広義のソ連軍というとこれら4軍の総称となる訳ですね。ここのnoteではこの中の労農赤軍について書いてます。
軍隊は色々な仕事があります。全ての兵士に全てのことを教えるわけにはいかないので、専門性を高めるためにそれぞれを分けたものが兵科となります。兵科によって学ぶ内容が違うわけですね。年代によって異なるので一概には言えませんが、ざっくりと労農赤軍には歩兵科、砲兵科、騎兵科、戦車装甲科(のちに機甲科)、航空科及び空挺科、その他特殊兵科(軍需科、通信科、輸送科、工兵等)(39~40年)に分けられてました。
ちなみに労農赤軍が組織改編されてソ連邦が保有する軍備(Вооруженные силы СССР)の一部門のソ連軍(Советская Армия略すとСА)に変わったのは1946年2月25日のことでした。
労農赤軍の基礎知識
赤軍とか労農赤軍とか変な名前だなぁ~って思いませんか?それは労農赤軍の成り立ちに深くかかわっています。1918年1月15日人民委員会議の布告した『社会主義軍隊の結成』にはこうあります。~旧軍隊は、ブルジョワジーによる労働者抑圧の機関として機能した。国家権力が労働者と被搾取階級へ移行するに伴い、新しい軍隊が必要になってきた。それは、現在ではソビエト体制の砦として、また近い将来には常備軍に代わる人民武装勢力の基盤として、さらにヨーロッパ社会主義革命の拠点として役立たなくてはならない~、と。つまりソ連が社会主義国家として成り立つ過程で形成された軍隊なので、労働者と農民(被搾取階級)のための赤(シンボルカラー)軍というわけですね。
39年に施行された徴兵法(平時)では17歳になると軍に登録され、18歳の健康なすべての男子は徴兵対象となりました。ただし、特定の業種による徴兵免除、健康上の理由等で徴兵の延長もありました。
兵役期間は労農赤軍においては2年間(赤色海軍は5年)でした。徴集兵は赤軍兵士(兵卒、Краснoармeeц)で入隊し、給料は一年目月8ルーブル、二年目は月10ルーブルでした。1940年のソ連労働者・勤務員の平均貨幣年賃金推計がおおよそ4000ルーブル(月333ルーブルぐらい)だったので結構お安い印象ですね…
独ソ戦(大祖国戦争)が始まると徴兵年齢が16歳にまで引き下げられました。開戦当初は女性は志願制かつ、徴兵には消極的でしたが、戦局の悪化に伴い、順次志願を受け入れる形となりました。
『戦争女の顔をしていない』にもそういった描写がありますね~
徴兵期間が終了すると予備軍へ編入となり、動員令によって都度召集されるというわけですね。予備軍の任期は50歳までとされていました。
とりあえずその①はここまでです。これ以降も気が向いたら続けて行きます。
とりあえず
これから書いていくものは読んでくれた人の知識を涵養するものです。誰かを攻撃したり、傷つけたりするために使うのはやめてね。
出典
РУКВОДСТВО для БОЙЦА ПEХОТЫ(ГВИНО СССР1940)
ソ連小売物価指数と実質賃金指数の推計(丹羽春喜 1961)
赤軍 草創から粛清まで(エーリヒ・ヴォレンベルク著 島谷逸男、大木貞一訳 風塵社 2017)
赤軍兵語集(偕行社 1940)
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