ゆっくり茶番劇の商標登録について思うこと②
昨日noteを書いたんですが、まだまだ皆様が商標について誤解されているなぁと思うtweetを何件も見てしまったので、代表的な誤解を例にあげて説明したいと思って②を書きました。
「商標は先願主義」「先に出願したもの勝ち」
確かに先願主義ではあるのですが、特許法の先願主義とは若干異なります。具体例を使って説明します。
(例1)
Aさんが果物販売という商売について「じゅーしぃ屋」という商標を出願した。3日後にBさんが同様の出願をした。
果物販売やそれに類似する商売について「じゅーしぃ屋」に似た商標は出願されていない。
⇒このときは先に出願したAさんが登録となる。
Bさんは、Aさんが先に出願しており、Aさんが先に登録となるので商標登録を受けることはできない(商標法4条1項11号)
(例2)
Aさんが果物販売という商売について「じゅーしぃ屋」という商標を出願した。3日後にBさんが同様の出願をした。
ただし、Bさんは商標出願の10年前からすでに「じゅーしぃ屋」という看板を掲げて商売をしており、関東地方では有名になっている。
⇒このときは、すでに有名になっているBさんに商標登録が与えられ、Aさんは「他人のものとして広く知られている」商標および商売と類似するため商標登録を受けることはできない(商標法4条1項10号)
このように、先に出願したかどうか、以外に「先に有名になっているものと似ていないか」ということも登録にあたり判断されますので、完全に早い者勝ちとは言えません。
弁護士や弁理士が早めの出願を推奨するのは、商売を始めて有名になるには年単位で時間がかかるからです。有名になる前に、他人に取られてしまっては自分の商売に影響が出るので、商売を始める頃と同時期に出願しておくのがよいとされています。
ちなみに特許法の先願主義は、電話機の事例(グラハム・ベルとエリシャ・グレイ)が有名ですよね。わずか2時間遅れで出願したエリシャ・グレイは特許をもらえませんでした。
「なんでZUN氏じゃないのに権利が取れてるの?」
商標法は、特許法や著作権法のように創作物・創作者を保護する法律(いわゆる創作法)ではないからです。
商標法はあくまで、その商標という記号に化体した信用を保護する法律であり、市場の流通に混乱が生じないように、という点にも重きを置いているため創作法とは立法趣旨が違います。
今回の登録において特許庁の審査が甘かった点は、
× ZUN氏のものと似ているのに登録された ではなく
〇 「ZUN氏のものと広く認識されている」ものと似ているのに登録された、という点です。
仮にZUN氏のものが広く認識される前に出願されていれば、異議申し立てをしても取消すことはできないでしょう。
商標法はあくまで、「信用」を保護するものです。有名になった商標を顧客が目にしたときに「あれは〇〇社の製品だから前回と変わらずおいしいはず」「〇〇社の××は壊れにくくて好き」といった期待や信用を保護するものなので、有名になっておらず「信用」がまだ蓄積されていないものは保護対象外なのです。
この点を誤解されている方がかなり多いようなので書かせていただきました。
「運営から罰をくらったみたいだし、使用許諾10万円も取り下げたからもういいか」
良くないです。
商標権とは、永久権で存続期間に終わりはありません。(10年更新制です。)また、他人へ譲渡することも簡単にできます。
そのため、商標権が抹消されるか、ZUN氏が権利者になる、以外の状態であること自体がリスクです。柚葉氏が誰かに譲渡して、その誰かがまた使用許諾料を取る、と言い出すことができてしまうのです。
無効審判で無効になるか、柚葉氏とZUN氏が交渉してZUN氏へ本件商標権が譲渡されることがベストな解決方法だと私は考えています。
その他、勘違いが蔓延してるな、と思ったら適宜追記していきます。
私でよければご質問も受け付けますのでリプでもなんでもどうぞ。
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