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「星の王子さまのような星」裏話

12/3(日)開催
御伽ミアさん主催『御伽の国歌枠リレー』に参加させて頂きました。
お披露目したのが、こちら『星の王子さまのような星』。

作中のネタバレ等気にせず書いていくので、まだの方は先にご覧ください。

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プロットができるまで

『御伽の国歌枠リレー』は、御伽話の登場人物をテーマにセトリを組んで歌うという歌枠リレーだった。
今回僕が選んだテーマは「星の王子さま / ぼく」である。

提出の際、備考欄に僕は「物語案」を書いて提出した。
それがこちら。

・星の王子さま / ぼく

Little Traveler / ジミーサムP

見知らぬ部屋で目を覚ます主人公=ぼく。
なぜかこれまでの記憶がない。
部屋の中には鍵がかかっていて出られない。
部屋を探索すると、写真が見つかる。
二人が楽しそうに旅をしている写真。

写真を見つける度に、主人公はこれまでの記憶を取り戻していく。
どうやら主人公は、かけがえのない親友=きみと二人でよく旅をしていたようだ。
それぞれの旅の場所に関係する楽曲を歌っていく。

親友は旅の中で、特に綺麗でもない景色の中にも幸せを見出していた。
なぜそんなに幸せを見つけるのが上手なのかと尋ねてみると、「本当に大切なものは目に見えない。それを知っているからだよ。」といつも答えた。

更に写真を見つけていくことで、主人公は自分の生い立ちを思い出す。
主人公と親友は地球出身。
地球は環境汚染により滅びかけ、それにあたってどこか移住可能な星を見つけ、テラフォーミングしないといけなくなった。
人類のうち宇宙飛行士として数千人が選ばれた。
彼らはロボットに改造され、半永久的な命を得た上で、宇宙船で飛び立つのであった。

主人公と親友は、宇宙飛行士として選ばれた者たちだった。
しかし宇宙船は全て一人乗りであり、二人は離れ離れになるしかなかった。
→一人乗りなのは、探索範囲を効率よく広げるため。テラフォーミングするならロボット一体ずつ着陸すればOKなので。

ロボットの稼働時間を少しでも増やすため、余計なメモリを使わないように、記憶は最低限を残して圧縮されていた。人生に関する記憶はストレージの最下層にあり、なかなか引き出せなかった。だから主人公は記憶を失っていた。
写真を見たことで心に暖かさを取り戻し、それで「解凍」した。

主人公は、親友との旅の記憶を完全には失いたくなかった。
だから自分の記憶メモリーを呼び起こすため、写真を宇宙船に隠して飛び立っていた。

全てを思い出した主人公には、宇宙船の扉を開く鍵もわかっていた。
それは、親友と旅した中で紡いだ思い出のメロディを口ずさむこと。
(ここで書き下ろし曲)
扉が開くと、そこには一面の砂漠が広がっている。

きっとここは、この世で最も殺風景な場所だ。
だけど主人公の心には不思議と希望があった。
なぜなら、「本当に大切なものは、目に見えない」と知っているからだ。

空を見上げれば満天の星。あの星のどれかに親友もたどり着いたのだろうかと思いを馳せる。親友が笑っているのだろうと考えるときには、星々は笑顔で満ちているように見えるのだが、万一親友が悲しんでいたらと考えると、そのうちのひとつに親友がいるであろういくつもの星々がみな、涙でいっぱいになっているかのように見えた。

一面の砂漠に、主人公はバラを2本植える。
テラフォーミングの最初に植えることになっている、特殊な改良を施されたバラだ。
このバラはどんな環境にでも緑をつけ、やがて星一面を覆ってくれる。

2本のバラの花言葉は「この世界にはあなたと私2人だけ」。
「Little Traveler / ジミーサムP」と共にエンドロールが流れる。

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かなり端的に簡易にストーリーをなぞっているプロットのようなものだが、舞台設定、SF世界観、落としどころなど、完成版の原型に近い流れは出来ているように思う。

一番最初の発想としては「御伽話をモデルにした、叙述トリックの物語が書きたい」というものだった。

例えば「シンデレラの物語として始まったから読者は皆、主人公はシンデレラだと思う。それっぽい描写を最初に入れる。だが物語が進むにつれておかしい点がいくつか出てきて、最後に、主人公は実はカボチャの馬車を出した魔女だったと判明する」など。そういうのがやってみたかった。

あとは歌いたい曲で物語を絞っていった。
最終的に候補になったのは

・星の王子さま / ぼく
Little Traveler / ジミーサムP

・銀河鉄道の夜 / ジョバンニ
星めぐりの歌 / 宮澤賢治

・人魚姫 / 人魚姫
マーメイドラプソディ / SEKAI NO OWARI

の3つだった。
あとは想像の赴くままに話の展開をいくつか考えていくと、「星の王子さま」が一番好みの形になりそうだったので、上記のプロットが完成した。

御伽の国歌枠リレーは、自分の中で絶対に参加したい歌枠リレーだった。
これまでに、御伽ミア&歌踊マガル主催「さむフェスリレー」「タロットリレー」という2つの企画に参加して、二人のどんな表現も受け入れて褒めてくれる懐の深さと暖かさを感じていた。企画をスムーズに回す手腕と、それだけに留まらない優しさ溢れる声かけや対応のおかげで、これまでに参加した企画の中で一番楽しいと感じていた。

そんな企画の血を引いた「御伽の国歌枠リレー」。御伽ミアが主催をしてくれる。しかも「御伽話」という、物語を紡ぐ行為がこれ以上ないくらいにピッタリはまりそうなテーマ。だから、絶対に参加したかった。

そのためには僕は本気を伝えなければならなかった。
その本気というのが「物語案を書き上げて送る」ということだった。
僕は今、上記の案が完成形という衣装を着て、ステージに上がって人々に届けられたということを、心から幸せに思っている。

物語が完成するまで

プロットから完成版に至るまで追加したり変更した要素が大きく3つある。

1.メロディ集め


今回の物語は「MOTHER」というゲームのストーリーに多大な影響を受けている。

「MOTHER」には主人公達が冒険する中で、各地で8つのメロディを集め、それらが最終的にストーリー内で大きな意味のある一つの楽曲になる、という展開がある。

最後に出来上がる楽曲が「eight melodies」。


今回この歌枠リレーに向けて書き下ろした楽曲「星明かりの花畑」の、身も蓋も無く言ってしまえば元ネタである。

「eight melodies」を監修した糸井重里氏は、とあるインタビュー記事にて
「賛美歌にしたかった」「それを聞いた人が救われるような、教会で聞こえるような、そんな歌にしたかった」と話している。

「星明かりの花畑」も、「賛美歌/祈りの歌」をして書いた楽曲だ。
希望も何もない星の上で、星空を見上げて、"きみ"が花を植えてくれていることを祈って歌い上げる。今回の物語の挿入歌として、「eight melodies」のコンセプトや筆致はこの上なくリファレンスとしてピッタリだったわけだ。

あとは連鎖的に決まっていった。
最後に「eight melodies」みたいな曲を歌うなら、それに向けてメロディを集めていくお話にしよう。写真や絵を見る度にメロディを思い出すといいんじゃないか。ファミコンみたいな電子音で作ってみたい。ならばロボットが歌っている楽曲として作ればいいんじゃないか。オーケストラver.をエンディングに持って来れば、救いと祈りの音楽としてこの上なく成立するんじゃないか……

かくして、愛・希望・信頼のメロディを集めていって、「星明かりの花畑 」が完成するというストーリーラインが生まれた。

2.クローバー

先述の「メロディを集める」という展開を盛り込むにあたって、それぞれのメロディに明確な意味やコンセプトが欲しかった。
物語の尺的に、MOTHERのように8つ集めるのは無理。多分できて3~4つくらい。その数の曲に、それぞれ意味のあるタイトルをつけたい……

そんな中思い浮かんだのが「四つ葉のクローバー」だった。
花言葉を調べたら、それぞれの葉っぱに愛・信頼・希望・幸福の意味があるという。「星明かりの花畑」という賛美歌に至るまでの流れを作るならこれだ、と思った。

劇中に登場するクローバーの絵は、動画面で協力してくれたocomet氏に描いてもらった。

それぞれの葉っぱが一枚ずつ光っていって、最後に上の4枚目=ハート(心)が灯って四つ葉が完成する。
絵本のような暖かいタッチが、イメージを超えて物語にフィットしてくれたので、この場をお借りして感謝を。


3.楽曲の変更

応募当初からしばらく、セトリのラスト楽曲は「Little Traveler / ジミーサムP」であった。

大好きな楽曲だったし、エンドロールに流すにもこれ以上ない曲調と内容だったと思う。本当は歌いたかった。

セトリから外した理由としては二つある。
一つは、物語パートが原作「星の王子さま」と内容が離れていったこと。
「Little Traveler」は「星の王子さま」の内容を忠実に落とし込んでいるので、今回のお話のエンディングにすると少し分離してしまうと感じたからだ。

二つ目は、シンプルに時間の問題。
物語パートに盛り込む情報が多かったため、どうしても配信時間ギリギリの戦いになってしまい、入れる余裕がなくなったからだ。

結果、セトリは全て拙作で固めることとなった。
それも楽曲としてはほぼ「星明かりの花畑」一曲だけでの参加となる。
歌枠リレーなのに一曲しか歌わないのは……良いのか……?と思ったが、
御伽ミアと「御伽の国歌枠リレー」の懐の深さに甘える形で、あと愛~信頼のメロディまでの3曲は、ロボットが歌っている"歌"なのだからということで、そのまま推し進めた。


その他いろいろ

いくつか書きたいことがあったが、それぞれ割と短くまとまりそうなのでここにまとめて記しておく。

・楽曲について

まず「星明かりの花畑」ED ver.
とにかく「教会の賛美歌」「祈りの歌」にしたかったため、荘厳で多幸感のあるオーケストラアレンジにした。

英語と架空言語のどちらかで作詞をしたかったが、英語歌詞を作り込む時間が無かったことと、文字ごと翻訳の演出がしたかったことで架空言語を採用した。

この楽曲の架空言語は「音言語」としており、発音とメロディ合わせて初めて意味を成すようになっている。そのため、違う発音でも同じ意味を表すことがあるし、同じメロディの場所は似た意味を示したりもする。

歌詞の読み方は以下の通り。
一番最後が【翻訳不能】となっているが、たまたまこちらの世界の言語と似通った発音になっているようだ。

rifwiyo lusyu mafi nemefi 
星空 薔薇 一面 咲く+彩る

qovla guam wevifo thifjudoo qavoanu
私の 心 四つ目 葉 咲く+彩る

yefjedo cofap vee rozafav yettek
可能性+推測 あなた どこにも いない でも

fa nolujud qayufee dejufa 
愛 対する 思い出 繋がる+結ぶ

pek olazeeshe veerot fava
星明かり どれか あなたの 笑顔

finottev sopel i dizzo
求める+信じる 信頼 描く それを 
 
sewo pakree ju ro thifet wov
私の 笑顔 あなた 星空 中に 見る

mif vokefomer hiz ruju
求める+信じる 信頼 描く それを

pef a coftu vav
全て 無い ように見える ここに
rom dametts reewo vogu
私 植える+育てる 最初の 希望

cuv edoo mo vof
温度 無い ように感じる 胸+心 

becam orig fi culasea
あなた 植える+育てる 最初の 希望

rifwiyo lusyu mafi nemefi 
星空 薔薇 一面 咲く+彩る

qovla guam wevifo thifjudoo qavoanu
私の 心 四つ目 葉 咲く+彩る

yefjedo cofap vee rozafav yettek  
可能性+推測 あなた  どこにも いない でも

fa nolujud qayufee dejufa 
愛 対する 思い出 繋がる+結ぶ

la morsh nodezfor ever 
あなた 私にとって 永遠に 替えの効かない 

dearest
【翻訳不能】


次にBGM ver.
チップチューン。
教会音楽をそのままファミコン音源に落とし込んだような音をイメージしており、8bit音源で再現できる範囲の「ピアノっぽい音」や「パイプオルガンっぽい音」を入れている。

また、愛・希望・信頼の各メロディは、単体(劇中で伴奏無しで鳴ってたもの)で聴いた時と、一つの楽曲の中で聴いた時のギャップが生まれないように、全て「1拍目始まり」で作っている。1拍目以外で始まるメロディにしてしまうと、劇中で単体で聴いた際、最初の音を1拍目と誤認してしまいがちだからだ。

余談だが、僕はBUMP OF CHICKENの「ハンマーソングと痛みの塔」を何百回聴いてもこの現象に陥る。一番頭のギターの音、あれを裏拍と認識できる人はこの世にいるのだろうか。


・没設定

・主人公ロボットの胸の所を開けると冷凍庫になっていて、バラが冷凍保存されている。序盤「胸が冷え切ったように感じる」と言っていたのはこのせい。終盤心が温まることで、バラが解凍される&圧縮されていた記憶zip.が解凍されるのダブルミーニング。

→設定が煩雑になって、尺内での文章の説明が難しそうなので没。
あと冷え切った=冷凍庫というのが少しダジャレっぽくて寒い。冷凍庫だけに。

・バラが遺伝子操作によって生み出された、いかなる場所でも咲いて種を産み出せるバラである。主人公ロボットはそのバラを使って、人類が移住するまでに緑で溢れた星にしておく。

→バラから出てくる種を育ててもバラしか出てこないので、生物的多様性が死ぬ。樹木が出来ないなら光合成も厳しそう。あと光と酸素がある星っていう条件が必要になるからそれも尺内で説明するのが厳しい。

・部屋に記憶を呼び起こすハート型の装置「メモリーハート」がある。3つまでは部屋にあるが、4つ目は主人公ロボットの胸の中に入っている。3つ目のメロディを得てそれらを繋げて歌った瞬間胸の中が暖かくなり、ぼんやり光ることでメモリーハートの存在に気付く。

→「メモリーハート」という目新しい単語を増やすことを避けたかった。短い尺内で出すとややこしくなるため没。

締め

一つの歌枠リレーに向けて、楽曲と物語を書き下ろして参加する。
自分の中で当たり前になりつつある、自分なりの表現方法。
だけどそれは、これまでに参加してきた、御伽ミア&歌踊マガル主催の歌枠リレーという舞台があったおかげだ。

最初は「歌枠リレーの選曲にちょっと物語性を持たせてみたら…?」という所からだった。
それが段々、「楽曲も書き下ろしてみよう」「いっそ物語メインでいってみよう」と、気の向くままに歩みを進められるようになった。

あの二人が、そしてリスナーの皆さんが、一回一回、僕の表現を認めてくれて、褒めてくれて、受け入れてくれたから。

「御伽の国歌枠リレー」という場所に出逢えて、僕は本当に良かった。
この場所に出逢えない未来じゃなくて、本当に良かった。
僕は僕としてここに居られて良かった。

自分のことをロボットのようだと感じることがある。
人とのコミュニケーションに馴染むことが苦手で、頭を悩ませて「コミュニケーションの型」を覚えて、それで人間の振りをしているだけの異物。
そんな自分を客観的に認識することは苦しく、だから配信で話す、自分という人間を表で確立して見せていくことができない。
だから自分の存在はなるべく消して、作品を隠れ蓑にして生きようと考えた。自分の代わりに作品が見られることは、幸せだ。

そんな、自分の存在を託しているとも言える「作品」を受け入れてくれるということは、「僕を受け入れてくれている」とどうしようもなく感じて、紛れもなく「幸福」なのだ。

僕にとって、愛せる、希望を持てる、信頼できる、そして【翻訳不能】な場所が、新しくできた。ありがとう。

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