第16回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール2022
ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール (The 16th Van Cliburn International Piano Competition)について、主に公式サイトよりまとめました。
基本情報
期間:6月2日から18日(3/6~12に本大会出場者を選考する予備審査があります)
会場:米国テキサス州フォートワース(時差は-15時間、3月中旬からはサマータイムになるので-14時間。東京からの距離は10355キロ、緯度は32°45′(東京は35°41′))
・ペプシコ・リサイタルホール at テキサスクリスチャン大学(325人収容、本大会出場者を選考する予備審査)
・ヴァン・クライバーンホール at テキサスクリスチャン大学(750人収容、4/7に落成記念式典が行われた新しいホール、本大会予選、準々決勝)
・バス・パフォーマンスホール(2056人収容の大ホール、準決勝、決勝)
審査委員長:Marin Alsop
主催:ヴァン・クライバーン財団
大会キャッチフレーズ:The best pianists in the world. The ideal performance environment. Unrivaled international exposure. The launch of careers. 世界の最高のピアニストたち、理想的な演奏環境、比類なき国際舞台への機会、キャリアがはじまる(私の超訳)
エントリー受付から予備予選まで
・10月14日締め切り
・史上最多388名の応募者を、事前審査員が、まず135名に絞る。その135名について、本大会出場者選考会審査員5名が動画審査を行い、3月の選考会で生演奏を聴きたいと思う候補者72名を選抜
本大会出場者選考会(Screening Auditions 予備審査)
・3月6日~12日
・会場は、ペプシコ・リサイタルホール(テキサスで選考会をやるのは今回が初めて)
・1人持ち時間25分のリサイタル形式、選曲は自由
・一般に開放される
・72名が出場し本大会出場者30名が選抜される。結果は3月17日までに本人に通知。本大会出場者30名の公表は3月30日
・72名の平均年齢は25歳、国籍は22か国、女性15人男性57人
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本選出場者30名発表!
・亀井くんのクライバーン公式ページ
(参考までにヴァンクライバーンさんのチャイコフスキー国際のレパートリーを、その他の箇所に掲載してあります)
・本選出場30名コンクール歴
30名の発表時の導入が素敵です:
『いよいよこの時がやってきました。388名の応募者が30名にまで絞られました。彼らが、6月フォートワースで優勝目指して競い合います。この瞬間のために人生をかけて鍛錬を積み、自分の芸術のためにすべてを捧げてきた若者たち。世界各地から集まる彼らに、自らの情熱を共有し、人生を変えるチャンスが与えられました。この素晴らしい若き芸術家たちと、彼らのストーリーを、ここに紹介します』
Tianxu An, China, age 23 2019チャイコフスキー4位「勇気と自制」特別賞
Yangrui Cai, China, 21 中国国内賞総なめ、シドニー/仙台出場
Albert Cano Smit, Spain/Ne., 25 Naumburg優勝、カーネギーデビュー済
Dmytro Choni, Ukraine, 28 サンタンデール優勝他20のコンクールで入賞
Federico Gad Crema, Italy, 23 ショパンコンクール出場、オルガ・カーン2位
Anna Geniushene, Russia, 31 リーズ、チャイコン、ブゾーニ出場
Francesco Granata, Italy, 23 伊複数受賞歴、モントリオール、ブゾーニ出場
Arseniy Gusev, Russia, 23 作曲もする、クリーブランドVirtualVirtuoso優勝
💚Masaya Kamei, Japan, 20 国内W優勝、直前マリアカナルス(MCB)3位
Uladzislau Khandohi, Belarus, 20 ジーナ・バッカウアーファイナリスト
Honggi Kim, South Korea, 30 2017クライバーンセミファイナリスト
Elizaveta Kliuchereva, Russia, 23 昨年のリーズセミファイナリスト
Shuan Hern Lee, Australia, 19 2019クライバーンジュニア優勝
Andrew Li, United States, 22 クーパー国際他優勝歴
Yunchan Lim, South Korea, 18 クリーヴランドユースで2位
Denis Linnik, Belarus, 26 チッタディカントゥ他入賞
Kate Liu, United States, 28 2015ショパコンクール3位
Ziyu Liu, China, 24 2019にチッタ他3国際コンクール優勝、今年MCB出場
Jonathan Mak, Canada, 25 マンチェスターユース優勝ほか
Georgijs Osokins, Latvia, 27 2015ショパン2019ブゾーニファイナリスト他
Jinhyung Park, South Korea, 26 プラハ春優勝、サンタンデールなども経験
Changyong Shin, South Korea, 28 ジーナバッカウアー優勝、韓国の新星
Ilya Shmukler, Russia, 27 シゲルカワイ優勝
Vitaly Starikov, Russia, 27 2021エリザベート5位
Clayton Stephenson, United States, 23 2015クライバーンユース審査員賞
Yutong Sun, China, 26 サンタンデール2位、MCB3位、クライバーン出場歴
Marcel Tadokoro, France/Japan, 28 エリザベートセミファイナリスト他
Sergey Tanin, Russia, 26 ゲザ・アンダ優勝
Yuki Yoshimi, Japan, 22 エリザベートセミファイナリスト他
Xiaolu Zang, China, 22 ベローナ優勝他、浜松など多数国際コンクール経験
現地集合と試弾、抽選
5月29日に集合、30日から試弾スタートです。このコンクールでは、クライバーンスタインウェイという特別なピアノが用意されています
💚亀井くんは、ハンブルク・スタインウェイを選んだそうです
3つの配信サイトから、毎日一回好きなコンテスタントに投票できる!
今回、YouTube、 MediciTV、公式Webcastの3つのチャンネルで配信です。毎日一回、好きなコンテスタントに投票できます。公式から入ると、Voteのバーがあるのでそこをクリックすると、MediciTVの投票サイトに入れます。これによりCarla and Kelly Thompson Audience Award という聴衆賞の受賞者が決まります。投票は授賞式直前まで受付ています!
本選一次予選(Preliminary)
・6月2日~4日(10時、14時半、19時半の3セッション、日本時間で翌日0時、4:30、9:30)
・会場は、ヴァン・クライバーンコンサートホール
・30名が、それぞれ40分のリサイタルを行う
・選曲は自由だが、6~7分の委嘱作品(Stephen Hough作曲)を含むこと
・30名のプログラム(byたけるみ)
・18名が準々決勝に進出
準々決勝 (Quarterfinal)
・6月5日と6日(予選と同じく3セッション)
・会場は、ヴァン・クライバーンコンサートホール
・18名が、それぞれ40分のリサイタルを行う
・予選で弾いた曲以外、選曲は自由
・18名のうち12名が準決勝に進出
準決勝(Semifinal)
・6月8日(19時半の1セッション)6月9日~12日(14時半と19時半の2セッション)
・会場はバス・パフォーマンスホール
・12名がそれぞれ、60分のリサイタルと、オケとモーツァルトコンチェルト(9,15,19,20,21,22,23,24,25,27のいずれか)を弾くという2部構成
・オケはフォートワース・シンフォニー・オーケストラ、指揮はNicholas McGegan
・12名のうち6名が決勝進出
決勝(Final)
・6月14日、15日、17日(19時半の1セッション)18日(15時の1セッション)
・会場は、バス・パフォーマンスホール
・オケはフォートワース・シンフォニー・オーケストラ、指揮は審査委員長Marin Alsop
・6名がそれぞれ、協奏曲2曲を演奏。第一群と第二群の中からそれぞれ一曲ずつ選ぶ
1群:ベートーヴェンの1, 2,3,4,5; ショパンの1,2; ガーシュウィンのラプソディインブルー, Fmajor; グリークの a minor; リストの1,2; メンデルスゾーンの1; ラヴェルの G major, 左手Dmajor; サンサーンスの2,5; シューマン →→→ この中のいずれか1曲
2群:バルトークの2,3; ブラームスの1,2; プロコフィエフの2,3; ラフマニノフの2,3,パガ狂; チャイコフスキー1 →→→この中のいずれか1曲
ファイナリストです⬇️
授賞式
・6月18日 19時~
・会場は、バス・パフォーマンスホール
優勝がYunchan Lim, 2位がDmytro Choni, 3位Anna Geniushene
田所マルセルさんが審査委員長賞
LiとShinが審査員賞
Schulerがモーツァルト協奏曲賞
Limは聴衆賞と新作賞も受賞しました
皆さん、おめでとうございます!
そして、次回は2025年、今年が一年延期での開催なので、3年後に17回が開催されます。
規定など
・一次予選の演奏順は抽選で決定。同じ演奏順で準々決勝も行われます
・準決勝と決勝の演奏順は、リハーサルのスケジュールやプログラムの内容によって決定されます
・コンクールはすべて生放送され、その後アーカイブが残る予定。CDやブルーレイ、配信等、商業目的で使用される予定。出場者には事前に了承してもらうとあります
・委嘱作品は4月1日までに出場者に送付
・大会中、出場者はホームステイ
・上位入賞者には、メディア対応など必要と考える会合などに出席してもらうため、コンクール終了後最長7日目までの滞在延長をお願いする、とあります
褒賞、向こう3年間の上位入賞者のマネジメントについて
・優勝者には金メダルと賞金10万ドル、2位 銀メダルと5万ドル、3位 銅メダルと2.5万万ドルが、それぞれ与えられます
・予選、クォーターファイナリスト、セミファイナリスト&セミファイナリスト各賞、ファイナリストに、それぞれ賞金が用意されています(1,000〜10,000$)
・聴衆賞、ベスト新作賞、ベストモーツァルト協奏曲賞、審査員特別賞(1つは、審査委員長賞)3つがあります
・3位までの上位入賞者には、公演の企画、キャリアサポート、メディア対応トレーニング(SNSも含む)、移動の手配、レコーディング、販売、宣伝など、包括的で各自に合ったマネジメントが3年間提供されます
・優勝者には世界的なキャリアマネジメントが提供されます。欧州と豪はKeynote Artist Management社、アジアはLIU KOTOW社(日本を除く、日本はコンサートイマジン社)がサポートします
・3位までの上位入賞者の向こう三年間の公演を、現在クライバーンの方で調整中だそうです。その公演スケジュールの一部は、本大会のプログラムに記載されるそうです。
9月28, 29日に優勝者の凱旋公演が予定されています(Kimbell Art Museum Piano Pavilion in フォートワース)
・クライバーンが3位までの上位入賞者の公演スケジュールを組む際には、彼らが既に契約している公演の予定を考慮するものの、上位入賞者はクライバーンが組んだ公演に出演する義務を負う、とあります。なお、クライバーンがマネジメントする3年間については、3位までの上位入賞者は事前のクライバーンへの相談なしに、公演依頼を受けられない、また、クライバーンの要請があった場合、最大3回まで、無償で公演に出演する義務を負う、ともありました
その他
・本大会出場者選考会(予備審査)のAngela Cheng審査委員長はルービンシュタインの覇者です。また、第12回ヴァンクライバーン国際の覇者コブリン氏も5名の審査員に名を連ねています
・本大会の審査員は、選考会とは異なる面々となります。Marin Alsop審査委員長は指揮者で、レナード・バーンスタインに師事。この方が決勝でタクトを振ります
・委嘱作品を手掛けるStephen Hough氏は英国の著名なピアニストであり音楽家です
・過去の入賞者ですが、亀井聖矢さんが現在師事する桐朋学園大学教授の岡本美智子先生は第3回大会の入賞者でいらっしゃいます。藤田真央さんが師事する東京音大学長野島稔先生(モスクワ音楽院留学されオボーリンに師事)は、1969年第3回大会で2位になられています。2009年第13回大会では辻井伸行さんが覇者となられ、その後輝かしいキャリアを歩んでおられます。阪田知樹さんは2013年第14回に最年少で入賞、2016年にフランツリスト国際ピアノコンクールで優勝し、昨年はエリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門4位入賞を果たしておられます
・前回2017年第15回ヴァン・クライバーン国際で2位に入賞したブローバーグさんは、2019年チャイコフスキー国際コンクールで3位入賞を果たしました
・Alexei Sultanovさんもヴァン・クライバーン国際の覇者です(1989年第8回)。また、Radu Lupuさんが優勝したのに(1966年第2回)褒賞公演を断り帰国し、その後リーズ国際で優勝したという話があります(Maestro Radu Lupu, R.I.P. クライバーンが優勝発表直後に弾いたショパンバラード1と共にツイートしていました。 4/19)
・ヴァン・クライバーンさんのチャイコフスキー国際コンクールのプログラム:
Bach. E Minor Partita
Mozart. Sonata in C Major, K 330
Beethoven. "Les Adieux" Sonata
Ravel. Toccata and "Jeux d'Eau"
Hindemith. 3rd Sonata
Prokofiev. 6th Sonata
Chopin. F Minor Fantasie and B Major Nocturne Op.62
Liszt. 12th Hungarian Rhapsody
Mozart. D Minor Piano Concerto, K. 466
Brahms. B-flat Piano Concerto No.2
Tchaikovsky. Piano Concerto No. 1 in B-flat Minor
ホストファミリーとTCU
・大会期間中、コンテスタントはホームステイですが、会場までの送迎や食事、休日のリラックスなど、ホストファミリーとソーシャルホストが大変大きな役割を果たします。会場でも演奏を見守り、3週間一緒に過ごすことで、まるで本当の家族のような絆ができるそう。ホストファミリーの家にはスタインウェイ社よりグランドピアノが練習用に貸し出されます。
また、TCUテキサスクリスチャン大学の学生ボランティアが、会場の案内、買い物のヘルプ、空港の送迎などに力を貸し、市民も、コンテスタントにフォートワースの文化を知ってもらうなどの活動に参加するそうです
・クライバーン財団広報のMaggie Estesさんの弁:
「このコンクールが他と違うところは、何と言っても、Fort Worth! この世界を初めて見る人にとっては、まあ驚きだと思うんです。Fort Worthの聴衆はとても温かいですよ!よくそう言ってもらっています」
そして、コンクールは、地元にとって『文化の祭典』、ピアニストの方々は『超人』と語っています
(なお、この記事には、岡本先生のコンテスタント時代のお写真が掲載されています)