泪草

ヒトの涙で育てた植物のことを泪草(るいそう)と言いますが、本来ヒトの涙というものは生き物に害を為すはずでした。
人類の歴史を振り返ってみると、ヒトの涙によって絶滅した植物や動物は数多く、特に女の涙には殺傷能力の高い毒が含まれているというのが一般的な見解でした。
わたしたちの学校では泪草を多く育てていますが…ええ、そうです。皆さんが一年生の時に涙を採取する授業をしましたね。それも、泪草のためのものでした。
泪草というものが世の中に浸透するのはあっという間でした。今までヒトは動物、特に抵抗のできない植物とは相性が悪いと考えられていましたから。
今では皆さんのご家庭でも泪草を窓辺に飾っていたりしますよね。その泪草ですが、一体なぜヒトの涙で育つのか考えたことはありますか?
大昔のことですが、ヒトが増えすぎてしまった時代がありました。動物や植物に対してヒトが多くなりすぎてしまうとバランスが崩れてしまうので、食料難にヒトは悩まされていました。
政府は植物に改良を施し、食糧を増やそうとしたのですが失敗し、多くの人間が苦しんで、死を前にして恐怖で涙を流しました。
苦しくて泣いてしまったヒトの涙は猛毒なのですが…あまりに多く地上に落ちてしまったので地上に生えていた植物の一部は己を進化させる必要に迫られ、ヒトの涙によって成長するような種が生まれたのです。それが、今の泪草の先祖です。
わたしたちはあまり人前で泣いてはいけないと教わっていますが、泪草は君たちの涙で生きていけるのですから…むしろ私たちは泣かなくてはいけないともいえますね。

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