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朝のにおい


この頃早起きだ。
歳かな。何時に寝ても7時には目が覚める。
洗濯を回して、
コーヒーを飲みながら青い部屋で無の時間。


パン屋に向かう。
朝のにおいだ。
朝のにおいとは何だろうと考える。
家を出た瞬間、ざっくり朝のにおいだと思うその正体は何だろう。
よく集中して歩くと、一歩ずつ色んなにおいが見えてくる。

どこかの家の洗濯ものの匂い。
ーまだ水分を含んでそうな。
新築ではなかろう、木造のにおい。
少し湿った土のにおい。
どこからか漂う百合系の小花のにおい。
茎が太い系の葉っぱのにおい。
ー茎が細いにおいと比べると、青々しく少しえぐみがある。
ピクニックを思い出させる芝のにおい。
ー幼少期から芝に座るとつい、芝の新芽を抜いてしまう。「モキュッ」と抜けるのが気持ちいい。そのモキュッを思い出させる懐かしいにおい。
湿度を含んだ新緑のにおい。
ー梅雨前の新緑より、木自体のにおいも混ざった感じ。土っぽくて、カブトムシを入れた虫かごみたいなにおいも隠れている。
パン屋に近づくに連れて、
香ばしいきつね色とコーヒーが混ざったにおい。
帰り道はもっと日差しが強くて汗ばむと、自分の鼻の皮脂のにおい。
自分の服と日光が混ざった、干したてお布団と柔軟剤が混ざったにおい。

よく感ずるとこんなにおい達があった。
こういう色んなのの混合物だったのだと、気持ちが躍る。


家のすぐ近くで、日に当たって黒猫がぼーっとしていた。
近付くとのっそりと逃げてしまった。
後で戻ってみるともう居なくて、その家のおばあさんが庭をいじっていた。
家猫では無さそうな、痩せた小汚い黒猫だった。
黒猫とおばあさんは鉢合わせたのだろうかと、散歩的な言葉が浮かびながら帰宅した。


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