【5e】Tales of The Valiant リリース!【皆さんの知ってるファンタジーRPGの第五版】
サマリー
D&D 5e のOGL危機はサードパーティーたちの「独自システム開発」を活性化させた
サードパーティー出版の第一人者「Kobold Press」は5e SRDを元にした「まったく別のゲーム」としてTales of The Valiantの作成を発表
そのゲームが 5/10 にリリースされた。ここではどこがどう違うのか、従来の5eゲームに何が使えるのか、簡単にまとめていきたい
正直な告白をします。この記事が面白かったと思ったり役立ったと思ったりした方は、「ハート」のマークをクリックしていただけると嬉しいです。承認欲求を満たしたい。
【告知】5/12 にToV読みながらのだらだら配信するね
実際にToVのPDFを読みながら、違いがあったり良いアートがあったり楽しそうな記述があったりしたらボクが勝手に語り出す、というシステムの配信です。お時間がありましたら見ていただけると、コメントくれると、チャンネル登録と高評価いただけると嬉しいです。
二ヶ月ぶりの投稿です
お久しぶりのmashです。最近は動画配信で由無し事を語ることが多くてこっちはご無沙汰でしたね。今回は記事をまとめておきたい情報があったので、配信時の雑談内容を付加して記事を投稿することとしました。
Tales of the Valiantとは…?
Tales of the Valiant は Black Flag Reference Document を元に作った新作TRPGシステム。D&D5e の代替システムとしても機能するので、 「いつWtoCあるいはハズブロがD&Dを捨てても、自分たちの作った5eドキュメントを活かす」 ために作ったシステムのこと。
当初は Black Flag Roleplayng と呼ばれていたのだけど、このタイトル名だと商標が取れないということで 勇者の物語 と言うタイトルになった。
2023年の春から開始したクラウドファウンディングではなんと1万人を超える出資者を集め、100万ドルプロジェクトにまで成長した。この頃蔓延していたWtoCへの不信感やOGL取り消しへの危機感の表れでもある。
様々なサードパーティーパブリッシャーが協賛し、リリースの時には様々なアドベンチャー・データ集の出版も取り付け、盤石の状態でKobold Pressはプロジェクトを進めていった。
ORC Licence
OGL危機の時に、Pathfinder の出版を行う Paizo 社の音頭であちこちのサードパーティー出版社が「我々で法的に取り消し不能なライセンスを独自に作る」と言うことになり出来上がったライセンス。現在 Pathfinder Remaster、Basic Roleplay System(CoCのベースシステム)、ToVが出版されている。今後も続々増える予定。
Black Flag Reference Document
そのORC Licenceの元で配布されているのが、このBlack Flag Reference Document だ。ToV の独自コンテンツを作りたい場合に参照するシステム参照文書だ。多くのSRDの例に漏れず、無料で配信されている。
ここに書いてある要素はORC Licenceに従ってる限りは好きに利用していい。Black Flag Roleplayは商標ではなくて「ToVの元になっているRPGのシステム名」としてなら使えるということで、このようになった模様。ToVの基本的コアメカニズム、13個のクラスとそれに付随する1サブクラスなど本当に一部だけ、どうやってこのゲームシステムのデータを作るのか、のサンプルとして掲載されている。
で、結局どういうゲームなの?
基本的にはD&Dの互換機的ゲームと思ってくれていい。このゲーム自体、2023年にクリエイティブコモンズに登録された 5e SRDをベースに製作されたと記載されている。そのため「第五版ロールプレイングゲームの要素」はほぼほぼそのままだ。
6つの能力値
能力値に紐付いた技能
クラスとサブクラスで決まるキャラの適正
見覚えのある武器・防具の数々
能力値修正値と習熟ボーナスの値にd20のダイス目を加えて判定するシステム
5e SRDを参照して作ったので当然似ている。プレイフィールはほとんど変かが無いかも知れない。ただ、使用されるデータや一部用語は置き換えられ、D&Dそのものでもない。とはいえ、おそらく市販されているほとんどの5e用アドベンチャーやデータ集は少しの修正でToVに取り込めることになる。
同様のコンセプトのゲームに Level Up:Advanced 5th Edition(A5E)があるが、A5EはD&D 5eをリバースエンジニアリングした上でリビルドしたというアプローチだが、ToVはD&D 5e と同じメカニズムの別のゲーム、というコンセプトになるのだろうか。
Tales of the Valiant の製品群
Tales of the Valiant Player's Guide
ToV のプレイヤーハンドブック。D&D5eと似たフィールの、だけどちょっと異なるゲームが遊べる。13のメインクラス、8つの Linage(血脈・遺伝要素)、14のHeritage(育ちの文化)、10のBackGround(背景)、多くのTalent(背景から取得出来る才能)を組み合わせて独自のPCを作れ!マジックアイテムも大量に用意されている。
ここは後日読み込んだ上でレビューを書きたい。
Tales of the Valiant Monster Vault
ToV のモンスターマニュアル。D&D5eに載っている基本的なモンスターを Kobold Press が再解釈してリビルドしたデータをまとめた本。D&D 2014 のモンスターマニュアルクリーチャーよりも歯ごたえ高め。
今まで Tome of Beasts で無数のモンスターを作ってきたKobold Pressの本領が発揮されている。ここは後日読み込んだ上でレビューを書きたい。
Tales of the Valiant Game Masters Guide
これはまだ未発売。9月リリース予定だ。すでにKickstarterによる出資は締め切られているが、Late Predgeで予約注文可能だ。あらゆるTRPGで使用出来るゲームマスターの手法を取り込みつつ、ToV でのマスタリングに役立つ情報を掲載している…もよう。
Tales of the Valiant Conversion Guide
大量に存在する 5e の要素を ToV に持ち込むためのコンバートガイド。少し読み込むと、ToV の要素を 5e に持ち込むときの指針としても応用が利く。
この資料を見ると、D&DとToVのどこが違うのかがよくわかる。一例を挙げると…
属性はない。ローフル・イービルとかカオティックグッドとかではキャラの全ては表せない。あらゆるクリーチャーにあらゆる可能性がある。世界が悪と決めた種族もいるかもしれないし、それに抗う集団もいるかもしれない。全てはGMとPlayerが決める。
クリーチャーの能力値は修正値のみ記載する。この修正値は「習熟済み技能の修正値」「セーヴィングスローの習熟」「武器防具の習熟」などの細かい習熟による数値の変化を全て織り込んでいる。そのため、ToVのモンスターはD&Dと同じ名前のモンスターより歯ごたえのある傾向がある。
インスピレーションは存在しない。そのかわり「運」というボーナスポイントが存在する。この運はPCがセーヴィングスローや攻撃に失敗したときに獲得し、1ポイント消費でダイス目を1動かし、3ポイント消費でダイス判定を有利に変更出来る。5ポイントまでしか蓄積出来ず、6ポイント目を獲得したときに 1d4 を振って運の残りを変更しなければならない。そのため早めに消費する必要がある。
ざっくりと大きな違いはこんなところだ。運 はインスピレーションと異なり配布基準が明確なため、GMの負担も減るし、プレイヤーも様々なチャレンジを躊躇わず行うことが出来る良いシステムだと思う。これは従来の 5e ゲームに取り込むのは容易だろう。
アドベンチャー集
すでにあちこちのサードパーティーメーカーがいろんなアドベンチャーを出版している。その数20近く。ここにはそのバンドル集のリンクだけ上げておく。もちろん5eとの互換性もあるので、ちょっといじるだけで遊べるはず。
あとは、Kobold Pressもすでにレベル1用からのアドベンチャー集を沢山こさえている。これらは全部少しの修正で 5e でも遊べるので目を通してみてもいい。
多次元世界設定解説本「Guide to the Labyrinth」
ToVは固有の世界設定を持っていない。これはD&Dも同様で、公式がMidgardを中心とした世界設定サプリメントを別に出していくということのようだ。ただ、Kobold PressサイドはToVでも使用出来る「多次元世界」の設定を事前にリリースした。それがこのGuide to the Labyrinthだ。
無数の世界を結ぶ 擬似次元界である"The Labyrinth"。そこは擬似的な次元の迷宮。ここから 百万世界と総称される無数の多様な次元世界に繋がっている。
このラビリンスを一つの脅威が脅かしている。それは世界を暗い滅ぼしてしまう Voidの存在だ。Voidは自分たちの尖兵やカルトメンバーを利用し様々な方法で世界を滅ぼし食らっている。このVoidに対抗する組織もあり、PCたちはその組織に所属するか、あるいは後ろ盾を得て多次元世界への冒険を進めるのだ!という設定。この本の情報を利用すると、なんと自分の自作世界を他の出版社の公式世界にダイレクトに繋げられるし、SF世界だろうと現代社会だろうと西部劇だろうとラビリンスを通じて楽しませることが出来る。わずか80ページほどのサプリメントだ。これはToVに使用しなくても参考になると思う。おすすめだ。
Tome of Horrors: Enemies of the Valiant
これはサードパーティー出版社の一つFrog God Games内のレーベルNecromancerがリリースしたモンスター集だ。ToVのルールブックよりも先にモンスター集がリリースされた。もちろんこれは5eでも使えるのでそれでも構わないのだが…収録されたモンスターは様々な状況で使用可能なNPC、厄介なフェイたち、市民生活に何とか馴染もうとしているゴブリンの部族、よくわからない異形のモンスターなど200体弱が収録されている。ToVで遊ぶ際にいきなり200体の知らんもんスターが増えるのだ。悪くない。
正直に言うと…
このゲームは大企業であるハズブロとその子会社WotCの勝手な経営判断でD&Dというゲームを失ったとしても、"かつて存在したD&Dというゲーム"を永遠に残し遊び続けられるように行った中小パブリッシャーの抵抗運動の一つと言ってもいい。
プロジェクトの名前にBlack Flagを掲げたのもその表れの一つだ。
そのため、「今までと変わらずに WotC がリリースするD&Dを遊び続ける人間たち」には実はあまりこのゲームを積極的に買う必要も意味も無い。
ただ、従来のD&Dというゲームにもう少しスパイスを利かせたい、D&Dとは違うアプローチのファンタジーゲームが遊びたい、後発のよりバランスが取れたゲームでD&Dを遊びたいと言った、少しマニアックかつ細かい需要に応えている作品と言って良い。
また、「なぜD&Dの互換機めいたゲームをそんなに必死になって作るのか」というと、半分くらい「英語圏ではTRPGというとほぼD&Dと同義」と言う事情も感じる。D&Dと同じフィーリングで遊べる別のゲームを必要とする場所もあるのだ。日本だとこれがCoCに変わるのだとは思うが…
というわけでまた後日。もうすこしToVを読みこんだら記事を書きたいと思います。
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