「刺繍する少女」小川洋子

小川さんの作品で最初に読んだのは「博士の愛した数式」だったけれど、あとから知った彼女の作品の雰囲気とは全然異なっている。彼女の作品の真髄はこの作品のような美しい退廃、ではないだろうか。
老い、病、死、狂気、そんなダークな色合いと冷たさの中に世にも美しい、あるいはグロテスクな愛がある。
この短編集の中で「森の奥で燃えるもの」が最高に好きだ。ぜんまい腺を失った者達が住む、時間から解放された世界…頭の中でどんどん想像がふくらむ。