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あなめでたや

子供が産まれたらやりたかったことシリーズ「季節の行事を楽しむ」
ひなまつりに合わせてちらし寿司と蛤のお吸い物を作った。写真は息子の分の海鮮ちらし寿司。初めて作った錦糸卵のごく一部、かろうじて錦糸卵らしくできた部分を息子の皿に盛っていると、とてもお母さんらしいことをしている気持ちになった。お母さんの皿に乗った太くてぐずぐずな卵は見てはいけないよ。

※息子は空に還ったけれど、息子との時間を記録しておきたくて、振り返りながら書いています

分娩室の奥、小児科の先生たちが群がった向こう側から、ふにゃりとした声が聞こえた。赤ん坊というより子猫のような声。聞けないと思っていた息子の産声だった。

息子、生きてる!

がんばれ、がんばれ!部屋の奥、生きるための処置を受けている息子に、夫と何度も声をかけた。間をあけてもう一度、ふにゃあ、と声がした。生きてる!

わたしの方はというと、寒さでガタガタ震えていた。ついさっきまでなんともなかったのに、胎盤が出たあたりから急に寒くなってきた。産科の先生たちが止血の処置をしている。そんなに出血しているのかと心配になったが、助産師さんが読み上げた血圧は正常そのもの。とりあえずわたしは大丈夫そうだ。

布団にくるまって股を縫われていると、小児科の先生たちが枕元に息子を連れてきてくれた。挿管されて保育器に入った息子は、紫色のゴリラのような顔をしている。鼻の形が夫にそっくりで、なんとも可愛らしい。鎮静剤で眠っているが、手や腕に触れると柔らかくて暖かい。生きてる…えらい…!この先しばらく試練しかないのは分かっていたが、それでも、生きて生まれてきてくれたことがどうしようもなく嬉しかった。

夫がこの時の動画を撮っていてくれたのだが、わたしは息子の手を撫でながら、生きてる…えらい…!とそのまますぎる感想を呟いていた。もう少し何かなかったんだろうか、でもそれがすべてだったのだ。うちの子えらい。

NICUに向かう息子と夫を見送って、そこから先はあまり記憶がない。2時間だったか3時間だったか、分娩室でひと眠りして、車椅子で病室に移動して、さらにひたすら眠った。途中で産科や小児科の先生たちが何か説明に来てくれたことは覚えているが、内容はまったく頭に入っていなかった。途中スマホを開くと夫が送ってくれた息子の写真。最高に可愛い。早く本物に会いたい。

この日のお昼前、助産師さんが搾乳の説明に来た。片手で乳房を圧迫しながら、もう片方の手でシリンジを引いて、滲み出た母乳を回収する。仕事で身につけたシリンジ使いがこんなところで役に立つとは。搾った母乳は日付と名前を書いて、新生児室に預けるように指示された。おそらく健康な赤ちゃんがたくさんいるだろう新生児室、わたしは冷静でいられるだろうか。おそるおそるドアを開けると、並んだコットでよその赤ちゃんたちが元気に泣いている。

みんな可愛いじゃないの、うちの子の次に。

自分でも意外なほど冷静で、可愛いと感じる余裕がありつつ、でも頭に必ず「うちの子の次に」がつく。これが親というものか。

息子はNICUにいるものとばかり思っていたが、夫によると夜間に一度調子が悪くなり、その後はPICUにいるらしい。PICUはNICUよりも面会受付時間が短く、滞在時間もわずか30分と限られている。夫が面会予約をとってくれていたので、PICUの待合室で夫と合流して、息子に会いに行った。

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