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映画パンフレット感想#9 『すべての夜を思いだす』


公式X(Twitter)アカウントによる紹介ポスト

清原惟監督によるX(Twitter)アカウントでのポスト(制作風景など)

感想

全60ページ弱、縦書きで文庫本ばりに文字がぎっちり詰め込まれた、“パンフレット”というより“ブックレット”と呼ぶのが相応しい一冊。実際、表紙には『A Book of Remembering Every Night』、1ページ目には『すべての夜を思いだすの本』と標記されている。テキストの詰め込み具合は、上部に引用した清原監督のポストからも確認できるとおり。

全ページモノクロで、スチール写真はないけれど、イラストや風景写真などが数点掲載されている。また、同じく上部に引用した公式アカウントのポストにもあるとおり、冊子には付録としてロケ地マップが挟みこんである。こちらも地図制作と解説文は清原監督自らが手掛けており、手作りならではの温かみがある。

単純に文字量が多いこともあり、とにかく読み応えが抜群。一般的な映画のパンフレットに掲載されるような、作品の批評/論考の寄稿もあるが、全体の印象は「作品をテーマにして書かれた詩的な創作文集」の色合いが濃い。清原監督と親交の深い人物も数人参加しており、「友だちと楽しみながらつくった本」的な雰囲気も感じられる。

私個人的に興味深く読んだのは、印牧岳彦氏の寄稿で言及されていた「多摩ニュータウンが出来た当初に抱えていた課題」と、細田成嗣氏の寄稿で展開されていた「映像と音の同期/非同期によりもたらされる効果」の話。ほか、私は本作の鑑賞中にバス・ドゥヴォス監督作品『ゴースト・トロピック』や『Here』と共通する点を看取していたのだが、そこにも通ずる話が本書にあり、より深く考察することができた。

読み終えたあとにもう一度映画を観たくなる“本”だと思うし、B6サイズで持ち歩きやすいのでカバンに忍ばせてロケ地巡りしたくなる”旅のしおり”だとも思う。お値段は1,800円と少しお高めだけど、500冊売れないと足が出るとかそんな話も聞くので、映画を少しでも気に入ったならばお布施的にでも買ってあげてほしい……って私は一体なんの立場でそんなことを。

なお、一般的な映画パンフレットで見られる、制作背景や描写の意図などが語られるような内容のインタビューは、公式サイトに掲載されているので、そちらも合わせて楽しむとよいかも。

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