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映画パンフレット感想#11 『デ ジャ ヴュ デジタルリマスター版』『季節のはざまで デジタルリマスター版』

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感想

B5サイズ、コート紙(標準的な光沢紙)で中綴じ32ページという、近年のパンフではあまり見られない程ごくシンプルな仕様。ページをめくれば、大半のページで明朝体のテキストがぎっちり縦書きで並んでいる。そして文字の背景は、ほぼ全て紙の地の白。とにかく硬派、そして読みやすい!体裁に差異はいくつかあれど、往年の岩波ホールが発行していたプログラム「エキプ・ド・シネマ」の硬派さを彷彿とさせる。わたし、こういうパンフレット大好き。なお、本作のパンフには場面写真も多く掲載されているのでそこは安心してほしい。

さらに驚いたのが、一般的なパンフレットには当たり前のように掲載される「イントロダクション」「ストーリー」が、このパンフでは大胆にカットされていること。代わりに表紙をめくると現れるトップバッター記事は、なんとダニエル・シュミット監督の紹介。生い立ち、経歴、フィルモグラフィなど、詳細な情報が網羅されている。この思い切った構成は、本作パンフを買い求める読者にとって正解だと思うし、舌を巻いた。個人的には、同記事冒頭に記された生い立ち、影響を受けた作家の紹介は、ありがたい情報だった。
※なお、公式サイトには「イントロダクション」「ストーリー」にあたる文章が掲載されているので、必要に応じて参照すると良い。

他にもこのパンフの特徴的な点として、「キャスト」「スタッフ」の紹介記事においても、それぞれ経歴や、シュミット、ファスビンダーとの関係性など、詳細に記されていることが挙げられる。「あの人あの映画でも見たことある!」と新たな発見があるかもしれない。私はあった。また、シュミットとファスビンダーの親交の深さも垣間見えてくる。

寄稿記事(転載含む)は数が多く、それぞれ個性が表れている。一部、怪文のように感じる記事もあって笑ってしまったが、そんな自由な寄稿群のなか、遠山純生氏の作品解説は堅実な構成でわかりやすく、パンフ全体のバランスをとっているように感じた。「ストーリー」記事のないこのパンフで、作品を振り返ることのできる劇中のディテールが多数挙げられていたのもありがたかった。

これだけの情報、テキスト量があって、800円という買い求めやすさも大きな魅力。両作とも鑑賞した方ならばぜひ購入してみてほしい。

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