脳内ポイズンベリー
数年前ひとりの男性に出会いました。
身なりから我の強そうな若者だと理性が判断し、記憶は納得するようにうなづきました。
感情もポジティブもネガティブも特に興味を示さず、本能は見てもいませんでした。
その人はマスクをしていました。
コミュニケーションが増えていく中で、感情が少し嬉しそうにし始めました。
ポジティブもそれに乗っかると、ネガティブはうるさいと不機嫌になりました。
理性と記憶は何とも言えない顔で、本能はやっぱり見てもいませんでした。
その人が初めてマスクを外してやって来ると、今まで見てもいなかった本能が強く興味を示しました。
とても嬉しそうな感情や、ポジティブにほだされていくネガティブを見た理性と記憶は、いくつかの気掛かりを保留にし、その人を好意的に捉えることにしました。
ある出来事をきっかけに、感情もポジティブもネガティブも理性ももうやめようと話し合いました。
記憶はそのページに暗黒付箋を付けました。
けれど本能だけが変わらず強い興味を示し続けました。
本能は理性たちの輪に参加せずいつも一人で行動していました。
理性たちは本能のことが全くわかりませんでした。
感情とポジティブは現状を打開すべく様々な案を理性に提案しました。
理性も納得し実行しましたがあまり効果はありませんでした。
ネガティブは理性たちの決断に野次を飛ばし続けました。
本能と話し合わなければ無意味だと理解しても、本能と話し合うことは出来ませんでした。
いくつかの年月を経て、本能が興味を無くしました。
理由はわかりませんでしたが、理性たちは皆安堵の表情で見合わせました。
理性は思いました。
誰一人も欠けてはだめなんだと。
和やかに嬉しそうな感情
優劣なく意見し合うネガティブとポジティブ
感情、ネガティブ、ポジティブの意見を等しく聞き入れまとめることが出来る理性
暗黒付箋に触れる必要のない記憶
そんな輪にほんの少し歩み寄れる本能
みんなが揃っていないと幸せにはなれない。
そう強く主張すると、本能がはじめて、少し体裁悪そうにこっちを見ました。
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