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2018 センター国語 第1問(評論)

【2018センター試験 国語 第1問(評論) 講義】

出典は有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ~集合的達成の心理学』。
センター試験では、厳しい時間的な制約の中で客観的に本文を読解し、それに基づき正しい答えを導くことが求められます。ところで「客観的に読む」とはどういうことか。それはつまるところ、筆者と読者一般との間で共有されている(はずの)「前提」にしたがって読むことです。その前提となるのは「言葉の標準的な意味」と「表現上の工夫」です。そこで、前者については必要最低限の語彙を身につける必要があり、後者については半ば無意識のうちにやりとりしているものを意識化する必要がある。
その意味で現代文の学びで、まず必要になるのは「形式性」へのこだわりであり、読解の途中で教師が「わかりやすい」説明を施すのは学ぶものが自ら内容を汲みとる機会を奪うことにもなりかねない。もちろん徹底した「形式」へのこだわりの先に豊かな「意味世界(内容)」の海が広がるのですが。
したがって、センター試験でも、もちろん二次試験でも、形式性に則った客観的な読みが求められ、それが結果として「速読」を可能にします。その上で、設問の要求を十分にふまえ、解答の根拠を本文中から探し、選択肢を「書くように」選ぶ。こうした一貫した方針を、あらゆる文章に適用し、誤りを修正しながら継続して鍛練する。これが現代文の試験で「確実に」高得点をとるための、正しい方法だと考えます。

それで本文ですが、冒頭で具体的な「講義」の場面を想起させる〈具体〉。その語りの部分に注目しても多様な捉え方が可能であり、「講義というような、学生には日常的なものでさえ、素朴に不変の実在とは言いにくい」(傍線部A)〈抽象〉。そうした多様性は、授業者の宣告により絞りこまれる〈抽象〉。
こうした具体的ケースを受けて⑤段落以降、本文のキーワードとなる「デザイン」という言葉について、一般的な語の用法や具体例、写真を使った説明を重ねながら(中に傍線部Bあり)、筆者独自の定義を試みる。この部分は〈具体〉を()に入れて速く読み、デザインの〈定義〉を中心に〈抽象部〉を押さえていけばよい。最終的に⑭段落で「デザインとは『対象に異なる秩序を与えること』と言える」と定義し、それには「物理的な変化、アフォーダンスの変化、ふるまいの変化、こころの変化、現実の変化が伴う」とする。
そうした「デザイン」の定義を承け、⑮段落「私たちの住まう現実」は「自分たちの身の丈に合わせてあつらえられた…オーダーメイドな」ものだとし、人間は歴史的に「人間が『デザインした現実』を知覚し、生きてきた」「このことは人間を記述し理解していく上で、大変重要なことだと思われる」(傍線部C)と続く。
以下⑯段落以降、「デザインした世界」に対応したふるまいを「行為´」、人間によりデザインされた環境を動物のそれと分けて「環境´」と筆者独自の〈定義〉を行う。ここも〈具体〉を()に入れてサッと読もう。
そして最終⑲段落で「心理´学の必要性」(傍線部D)を指摘する。「現実をデザインするという特質が、人間にとって本質的で基本的な条件」であり「これまで心理学が対象としてきた私たちのこころの現象は、文化歴史的条件と不可分の一体である『心理´学』として再記述されていくであろう」〈対比〉。その基本的条件が理解された後、「´」の記載の必要がなくなるのである。(以上、本文に即した理解)

問一は漢字なので誤答も含めて調べて下さい。

問二(傍線部Aの理由説明問題)
理由説明は、基本〈始点S〉と〈終点G〉を定め、その論理的飛躍を埋める〈理由R〉を指摘する。Aの前3文より「講義…日常的なものS」は「(受け手には)多様な捉え方・多義的な解釈が可能R」だから「不変な実在とは言いにくいG」。選択肢が全て「a授業でも/bように/cから」とそろっていることに着目し、cの部分を横に見て、上のRと対応するのは②のみ。ab部分も妥当で即決。

問三(傍線部Bと関連する空所補充問題)
「本文の内容をふまえて」という要求があるが、四人の生徒の会話を、前後の「表現」に着目してたどれば、正解は浮かび上がるようになっている。生徒Cの「デザインを変えたらa/…ではなくて/□ということになるb」を、生徒Dが「それ」で承け「『今とは異なるデザインを共有する』ことによってc/『今ある現実の別のバージョンを知覚することになる』d」と続ける。aとc、bとdがそれぞれ対応することから、□にはdと同内容の選択肢を入れればよい。よって⑤しかない。

問四(傍線部Cの理由説明問題)
「このことS」を具体化した上で「人間を記述する上で、重要G」とつなぐ理由Rを考える。「このことS」は前文より「人間は、歴史上、人間が『デザインした現実』を知覚し、生きてきたことS」。これが、「人間を記述する上で」なぜ重要かというと、さらに前文「(私たちの住まう現実は)自分たちの身の丈に合わせてあつらえられた…オーダーメイド」なもの(R)だからである。選択肢が全て「現実はa/そのため人間を…記述する際には/bをふまえることが重要になってくるから」とそろっていることに着目し、aとbの部分を横に見て、それぞれ上のRとSに対応する選択肢を選ぶと、③しかない。

問五(傍線部Dの内容説明問題)
Dの中で言い換えが必要な要素は「心理´学」(X)しかないであろう。これを従来の心理学(Y)と対比しながら述べる。Xについては、傍線部Dの後ろ3文目より「こころの現象は、文化歴史的条件と不可分の一体である『心理´学』として再記述」を、Yについては、前段⑱より 「(心理学は)このこと(=人間が環境をデザインしながら生きること)に無自覚」を押さえる。選択肢が、全て前半にYの説明、後半にXの説明となっていることに着目し、上のポイントをともにふまえている選択肢は①しかない。

問六(Ⅰ)(不適切な表現)
答えは④。⑧段落最初の「私たち」は「二人の筆者」であり、次の「私たち」と違って読者を巻き込むものではない。
問六(Ⅱ)(適切な構成)
答えは④。本文読解より、本文は全体にわたって具体例と抽象化を繰り返しながら展開しているといえる。

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