海賊として生きた女性、メアリー・リード：その生涯と冒険

メアリー・リードは、18世紀のカリブ海で活動した海賊でした。彼女は男性として服装して海賊船に乗り、ジョン・ラカムの手下であり、アン・ボニーと共に有罪判決を受けた数少ない女性海賊の一人でした。

1685年頃：イギリスで生まれる

メアリー・リードは1685年頃にイギリスで生まれました。彼女の母は若くして船乗りと結婚し、息子を産みましたが、夫は航海に出たきり戻らなかったと言われています。その後、母は再び妊娠しましたが、不倫相手の子供でした。母は自分の不義を隠すために田舎の友人の元で暮らすと言い、息子を連れてロンドンを去りました。やがて息子は幼くして死に、代わりに女児を出産しました。それがメアリーでした。

メアリーの母は経済的に困窮し、数年たってから再びロンドンの夫の母親の元に戻りました。そして経済的な支援を得るために娘のメアリーを男装させ、死んだ夫の息子であるように偽装しました。メアリーは祖母に養育されましたが、13歳のころにその祖母が死んだため、裕福なフランス人貴婦人の元に奉公に出されました。やがて軍艦での仕事を得ました。

1708年～1718年：軍人として働く

メアリーは軍艦を退艦した後、フランドルに渡り、スペイン継承戦争でオランダと同盟を結んでいたイギリス軍の騎兵連隊に加わりました。メアリーは現地で同僚と婚約し、退役後に結婚してブレダ城の近くに「スリー・ホースシューズ」という居酒屋を開きましたが、幸福な結婚生活は長くは続きませんでした。なんと夫が急死してしまったため、店を畳んでオランダの軍務に就き、西インド諸島行きの船に乗ることになりました。

1718年～1720年：海賊として活動する

メアリーが乗った船は海賊に拿捕され、ニュープロビデンス島のナッソーに連行されました。メアリーはナッソーで海賊として振舞い、ウッズ・ロジャーズ総督に投降した後も総督がスペインに対して準備した私掠船に乗り組んで反乱を起こしました 。メアリーがアン・ボニーと知り合ったのはこの頃で、アンがメアリーをハンサムな男だと勘違いして言い寄ったことが切っ掛けでした 。

1720年8月22日、アンの恋人であるジャック・ラカムはアンとメアリーの他数人の手下を率いてジョン・ハム船長の私掠スループ船、ウィリアム号を盗みました。こうして有名なジャック・ラカム船長と2人の女海賊の航海が始まりました。メアリーとアンは船上において平時は女の服を着ており、獲物の追跡や戦闘時には男装していました。メアリーはカトラスでの切り込み役を担当し、アンは銃の名手でした。

1720年10月：捕らえられる

10月、一味はジャマイカのネグリル近くにて、ジャマイカ総督から海賊討伐の命を受けたジョナサン・バーネット船長の私掠船と遭遇しました 。戦闘に怖気づいたラカムや男たちが船倉に隠れた時も、メアリーとアンだけは果敢に戦いました。メアリーはラカムたちに「甲板に出て男らしく戦え」と叱咤しましたが、それでも彼らが奮起しないのを見ると、船倉に向かって発砲し1人を殺しました。メアリーとアンの抵抗も虚しく、バーネットはラカムの船を制圧して一味をポートロイヤルに連行しました。

1721年4月：獄中で死ぬ

一味は有罪となってラカムたちが絞首刑に処されましたが、メアリーとアンは妊娠を主張したために刑が延期されました。これは法律で母親の処刑によって胎児の生命を奪うことが禁じられていたためでした。死刑は免れましたが、メアリーは獄中でひどい熱病に侵され、1721年4月28日に息を引き取りました。その亡骸はジャマイカのセントキャサリン教会に埋葬されたと言われています。

まとめ

メアリー・リードの生涯は、女性としての制約を突破し、自分の道を切り開くという強い意志を持つ彼女の姿を浮かび上がらせます。男装して生き、海賊として活躍し、最後は獄中で命を終えた彼女の生涯は、多大な困難を乗り越えて生き抜いた女性の一例と言えるでしょう。

彼女の勇敢さと決意は、現代の私たちにも多くの影響を与え、何があっても自分の道を進むことの大切さを教えてくれます。また、彼女の生涯は、女性が自分の能力と勇気を信じて行動すれば、男性社会でも立派に活躍できることを証明しています。

しかし、彼女の運命もまた、当時の社会の厳しい現実を反映しています。女性であることを隠して生きなければならなかった彼女の苦悩、そして最後は獄中での死という過酷な結末。これらは、18世紀の女性の厳しい立場と、社会の冷酷さを如実に示しています。

メアリー・リードの物語は、私たちに勇気と決意、そして社会の現実を教えてくれます。その生涯は、私たちが直面する困難を乗り越えて自分の道を進む勇気を与えてくれるでしょう。