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Carrie, Price.[システマティック・レビューに関わるライブラリアン(情報専門家)向けリソース] Systematic Reviews for Librarians.

私がシステマティック・レビュー(以下,SR)に興味を持つようになったのは,病院図書室司書に転職し医学図書館界に片足を突っ込んですぐのことだったと記憶しています。そのときはMEDLINEとPubMedの違いも使い方もさっぱりわからず,今考えると恐れおおすぎるのですが某JK大のAさんにじゃんじゃん質問メールをさせていただいたりしていました。(申し訳ありません。)

さて,昨今SRは医学分野だけではなく人文系の分野でも研究方法の手法として利用されるようになってきた印象があります。

CiNii Researchでの検索結果画面(検索条件:クエリーボックスに「システマティックレビュー OR "Systematic Reviews" OR "systematic review" OR "システマティック・レビュー"」と入力して検索45,784件がヒット 検索日:2022-09-23)

一方で,様々な質のSRが散見される印象があり,特に検索の部分については,私たち司書がスキルを磨きつつよりよいSRになるべくお手伝いをできるのではないかと個人的には感じています。
とはいえ,自身まだまだ勉強不足を痛感しているのですが,日々いろんな有用な情報を目にする一方ですぐに情報の洪水にながされてしまい整理できないことばかりなので,自分のメモとして,ここにページを作ろうと思いました。

国内では方法に関することはさておき,SRにおいて司書・情報専門家の貢献が求められる"検索",Comprehensive search(網羅的な検索)に関するまとまった情報源は(不勉強なのでもしご存じのいらっしゃいましたら教えてください)ない印象があります。

普段私が情報源にさせて頂いているのはツイッターの #medlibs#sysrev  などの界隈の方々です。
その中で1つめのメモは,いつも貴重な気づきや情報を発信してくださる @carrie さんのまとめてくださったページを日本語で記録します。

Carrie P. Systematic Reviews for Librarians 2022 [Available from: https://carrieprice78.github.io/guides/systematic-reviews-librarians/].

Peer Reviewの素材データ

(PRESSを改良されたそう)
PRESS Assessment Fillable Form

オフィシャルの方は以下

学術界でPeer Reviewというと論文を雑誌に投稿したりしたときの査読のイメージが強いかもしれませんが,同様に検索についてもうっかりミスや考慮不足な点がないかをチェックし合うというのが,SRにおける文献検索のPeer Reviewです。いくつかコレ!という文献が見つかればよい一般的な検索に比べると,熟考がもとめられるSRの文献検索においてケアレスミスは致命的です(でも一人でやっていると限界がありますし)推奨されています。日本語に一部翻訳されているので以下に参考として追記します。こちらは2つめの方を翻訳なされているもの
河合 富士美, 山口 直比古, 加藤 砂織, 重川 須賀子, 佐山 暁子, 森實 敏夫, et al. システマティックレビュー検索式査読のためのガイドライン : PRESS Peer Review of Electronic Search Strategies. 医学図書館 = Journal of the Japan Medical Libraries Association. 2017;64(2):75-8.
また,PRESSforumに投稿すると他のSRライブラリアンの皆様がチェックしてコメントやアドバイスを下さいます。

システマティックレビューのためのトレーニングツール[Training for Systematic Reviews]

現在(2022年まで)活動を休止中。2023年は対面で復活を予定してしているそう

コクランのトレーニングプログラム。過去の会のアーカイブ動画も公開されています。

Medical Library Association (MLA)アメリカの医学図書館協会のトレーニングプログラムの一つ。しかし参加費が円安のご時世懐に響く価格です

2022年は10月24日から開催予定

本当はGRADEが個人的にも参加してみたいのですが、なんせ参加費が泣けます(いつかもっと英語ができるようになり,機会がありましたら参加したいです。願望)

大学院生向けに文献レビューやSRについてオンラインで学習できるリソースとして公開されているようです。このような素晴らしいツールがもっと国内でSRをなさる方にも活用されると嬉しいです。(個人の感想です)

医学分野では著名なジョンズ・ホプキンズ大学がサポートするオンラインプログラム。SRとMAを行うための知識について学習できるリソース

左記に紹介したMLAの認定コース。年2回開催(オンラインと対面)。参加費用は100ドル強。2022年のコースは締め切りが終わっているので,参加可能なのは2023年のみ(2022年9月23日時点)

ミネソタ大学のワークショップ(2022年は終了しています)

このコースは特に検索にフォーカスしたワークショップだと思います。2023年は2月に開催予定(オンライン)

(参考になる)文献

Carrie Price, MLS, David Farris, MSIS, and Rachael Lebo, MLSさん3人で作成した文献リストだそうです

オーサーシップ

学術ジャーナルのエディター及び、出版倫理に関心を寄せる個人により設立された出版規範委員会COPEもオーサーシップの項で言及しています

世界の主要な医学雑誌の編集者の集まりICMJEでもオーサーシップについて言及しています。(最近は論文の最後の所Authors’ contributionsにきちんとそれぞれの著者の役割について記載している文献も増えた印象があります→私見)

【勝手に追加(国内情報と国外情報)】

日本医学雑誌編集者会議 (Japanese Association of Medical Journal Editors: JAMJE)で作成されたガイドラインが2015年版から改訂されていました。

World Association of Medical Editors(WAME)世界の医学雑誌編集者の協会でもオーサーシップ,特に“ghost authorship”について指摘してコメントしています。

Competencies(コンピテンシー)

特定の職務において効果的な高業績または優れた行動結果に結びつけられる個人の特性のこと. 1970年代米国で心理学者マクレランド(David C. McClelland 1917-1998)の研究を出発点に発展した.知識やスキルだけでなく価値観,性格,使命感を包含しており,重要な事項を達成するための能力開発に活用される.米国の図書館界では1990年代から議論され,2009年アメリカ図書館協会が「図書館員のコア・コンピテンシー(Core Competencies of Librarianship)」を発表したほか,館種・地域・サービスごとに多様に提唱されている.また,経済協力開発機構(OECD)では,個人の生涯にわたる根源的な学習能力をコンピテンシーとし,(1)自律的に行動する能力,(2)社会的な異質の集団における交流能力,(3)社会的・文化的・技術的ツールを相互作用的に活用する能力を「キー・コンピテンシー」と位置づけている.

"コンピテンシー", 図書館情報学用語辞典 第5版, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-09-23)

検索相談でも"competency-based education"などの取り組み事例や成果についてScRをしているんです。みたいな内容がわりにでてきました。図書館界でも検索に限らずCBEのフレームワークは取り入れられている気がします。(私見)

  • Townsend, W. A., Anderson, P. F., Ginier, E. C., MacEachern, M. P., Saylor, K. M., Shipman, B. L., & Smith, J. E. (2017). A competency framework for librarians involved in systematic reviews. Journal of the Medical Library AssociationL: JMLA, 105(3), 268–275. https://doi.org/10.5195/jmla.2017.189

再現率と適合率 [Recall and Precision]

再現率と適合率の関係を見つつ,どのような検索方法がより効率的かを検証

  • Sampson, M., Tetzlaff, J., & Urquhart, C. (2011). Precision of healthcare systematic review searches in a cross-sectional sample. Research Synthesis Methods, 2(2), 119–125. https://doi.org/10.1002/jrsm.42

ヘルスケア分野のシステマティックレビューの検索精度を調査

  • Stevinson, C., & Lawlor, D. A. (2004). Searching multiple databases for systematic reviews: added value or diminishing returns? Complementary Therapies in Medicine, 12(4), 228-232. https://doi.org/10.1016/j.ctim.2004.09.003

複数の情報源(この場合はMEDLINEだけではSRの情報源として不十分)を使うことの必要性を検証

検索全般に言えると思いますが,SRにおける文献検索はPrecisionとRecallのバランス調整をどこでとるか。WGグループメンバーとよく相談して進める必要があると理解しています。また,すべてを検索で拾うことは難しいので複数の情報源を探したり,#greylit 検索でカバーします。最近はLensDimensions といったディスカバリーも登場して”どこまでやるか”,またどれが少なくとも必要か,決めてしまわないときりがない気がします(遠い目)。

Searching

  • Booth A. (2010). How much searching is enough? Comprehensive versus optimal retrieval for technology assessments. International journal of technology assessment in health care, 26(4), 431–435. https://doi.org/10.1017/S0266462310000966

低・中所得国(the World Bank list of countries (2019), classified as low-income, lower-middle-income or upper-middle-income economies: https://datahelpdesk.worldbank.org/knowledgebase/articles/906519-world-bank-country-and-lending-groups に基づいているそう)を拾うためのフィルターがCochrane EPOCとWHOなどが共同で2020年に開発し,2022年バージョンにアップデートに向けて見直しがされています。国名が頻繁に変わることや著者の記載の揺れが大きいことなどが課題として挙げられています。

  • Glanville, J. M., Duffy, S., McCool, R., & Varley, D. (2014). Searching ClinicalTrials.gov and the International Clinical Trials Registry Platform to inform systematic reviews: what are the optimal search approaches? Journal of the Medical Library Association 102(3), 177–183. https://doi.org/10.3163/1536-5050.102.3.007

  • Glanville, J., Kotas, E., Featherstone, R., & Dooley, G. (2020). Which are the most sensitive search filters to identify randomized controlled trials in MEDLINE?. Journal of the Medical Library Association: JMLA, 108(4), 556–563. https://doi.org/10.5195/jmla.2020.912

Ovid MEDLINEで38個のRCTフィルターについて感度を分析している報告。国内でOvid MEDLINEを使える施設は少なくないと思いますが,それぞれのフィルターの評価は参考になります(私見)

SRチームにおける検索専門家として,データベース含めリソースの特徴や書誌/システムの構造を正しく理解することなど,司書の役割についてまとめています

ここに紹介されるように,より効率的に求める文献にピントをあてるためには思いついたキーワード(例えばRCTなどに絞りたいので"Randomised controlled trials")と掛け合わせる,publication typeでPCTを指定するなど絞り込むよりは,それぞれのデータベース向けに検証されたフィルターの利用や検索戦略の参照をお勧めします。これらのフィルターは定期的に(一部改定が止まったフィルターもありますが)見直しがされて改良されています。

Search filterについては以下のサイトなどで随時公開されています
The ISSG Search Filter Resource
RCT McMaster University Hedges (search filter) Project
RCT Cochrane RCT filter (Ovid Medline/PubMed & Ovid Embase)
RCT The Cochrane highly sensitive search strategies for identifying randomized trials in PubMed

システマティックレビューのためのガイダンス[Systematic Review Guidance]

検索リソース,検索戦略の考え方,フィルターの適用,検索についての報告などSRにおける文献検索についてまとめられた資料です

  • Borah, R., Brown, A. W., Capers, P. L., & Kaiser, K. A. (2017). Analysis of the time and workers needed to conduct systematic reviews of medical interventions using data from the PROSPERO registry. BMJ Open, 7(2). https://doi.org/10.1136/bmjopen-2016-012545

SRについて調べたり学んだり,振り返ったりするときに個人的に参照するのは3つめ,4つめのChapter 4: Searching for and selecting studies(Cochrane handbook for systematic reviews of interventions)付近です。大道のセオリーがCochrane handbookやJBIには載っていて,細かいテクニカルなところはそれ以外の文献が参考になる気がします(私見)

[参照]

Carrie P. Systematic Reviews for Librarians 2022 [Available from: https://carrieprice78.github.io/guides/systematic-reviews-librarians/].

こんな感じで,時間を見て少しずつまずはcarrieさんのサイトのコンテンツを自分のnoteにメモしていこうと思います。



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