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資本主義から志本主義へ

昨日のnoteで、
一橋大学で教鞭をとる名和高司教授が、
稲盛和夫さんの有名な「成功方程式」を、
あえて《三つのP》に言い換えている
という話を取り上げた。

この言い換えは、『致知』2022年7月号の
対談記事にあったもの。
同記事内に、もう一つ気になるキーワード
が出ていた。
それが、「志本主義」なる言葉。

金やモノなど目に見える資産ではなく、「志」という目に見えない資産を軸にすることが未来を拓く鍵だと思います。

『致知』2022年7月号 60頁

かつて、一橋大学の伊丹敬之教授が、
「人本主義」を唱えていた。
バブル真っただ中の頃に、
「人こそ資本!」ということを端的に
言い表すキーワードとして生み出した
ものだと理解している。

名和さんは、マイケル・ポーターが説く
CSV(Creating Shared Value)経営に
関する本も出されている。
「CSV経営」とは、企業経営においては、
経済的価値だけでなく社会的な価値をも
一緒に追求していくべき
である、
というニュアンスの考え方。

昨今の、SDG'sを経営上重視する動きと
近いかもしれないが、名和さん曰く、
SDG'sには「視野狭窄に陥りやすい」、
「表面的になりやすい」などといった
限界があるとのこと。

「志本主義」という言葉を見て、
うまいことを考えつくものだと感心
したのだが、ふと思い出した言葉が
あった。
渋沢栄一の説いた「合本主義」である。

「資本主義の父」と言われる渋沢栄一が、
「資本主義」という言葉ではなく、
あえて「合本主義」という言葉を使って
いたのはなぜか?

渋沢栄一記念財団のサイトに、
この「合本主義」に関する説明が掲載
されているので、そこから引用する。

渋沢の論考や講演を基にして考えると、「合本主義」とは、「公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方」を意味するといえます。

渋沢の合本主義が、3つの要素、つまりア)使命(ミッション)イ)人材とそのネットワーク、ウ)資本から成り立っている

そう、渋沢栄一の説いた「合本主義」は、
名和さんの「志本主義」とほぼ変わらない
考え方であると言えそうなのだ。

文を引用した論考の最後に、
以下のようなまとめがある。

渋沢栄一の「合本主義」は、公益を追求するという目的意識を持つ株式会社よりも、より強い規範を伴うものでした。つまり『論語と算盤』(道徳と経済の一致)という思想的基盤の上に成り立つ考え方であったといえます。

「合本主義」の言葉では、流石に今の時代に
なじまない感は否めず、
それゆえ「志本主義」という言葉を用いるのが
望ましいと考える。

そして、この「志本主義」というものは、
渋沢栄一の考え方を現代的に再解釈した
ものとして捉えるべきだろう。
CSVやSDG'sのように、欧米で生まれた概念の
お仕着せではなく、あくまでも日本の状況に
寄り添った形で、我々の社会に浸透していって
欲しい
と考える。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。