見出し画像

「値決めは経営」とは言うけれど

昨日投稿した通り、日曜日は
「DAF30」というイベントに
出演していた。

そこで私が話した演目は、

「稲盛和夫とマーケティングと私」

である。

去る8月24日に永眠された、
「経営の神様」稲盛和夫さんを、
マーケティングを生業にしてきた
私なりの味付けで調理させて
もらった。

彼が語った言葉は数多く、
どれもこれも名言ばかり。
その中から、マーケティングとの
兼ね合いで一言申さずにはいられない
「値決めは経営」
という彼の言葉を取り上げた。

このnoteでも、既に何度か取り上げた
ことがあり、例えばこの記事などは
それなりにきっちり書けたと思って
いる。

10分かけて昨日語った内容を、
ここで詳しく語ることはしないが、
骨子を一部だけ言うと、
「値決めは経営」
という言葉は結構独り歩きしている

ということだ。

「本質はズバリこれだ!」
「ひとことで言えばコレ!」
「これこそが最重要ポイント!」

そんな風に、とても複雑なことがらを、
短く、端的な言葉で表現すると、
非常にカッコいい。
見栄えが良い。
耳触りも良い。
つい引き寄せられる。

しかし、細かいところを端折った
ことで、結構重要な情報が抜けて
しまうことも多い。
すべてのことがらは単純化できる、
などと思うのは、ちょっと思い上がり
過ぎではないか。

そんなことすら思わなくもない。

稲盛さんが「値決めは経営」と言った
裏には、その値決めに至るまでの長く
苦しいプロセス
が確かに存在する。
その部分を完全に忘れて、
値段を決める部分だけを取り上げて
それが経営の全てだ!と感じさせる
ような扱われ方をするのは、
やはり本質からズレていると
言わざるを得ない。

最近の日経MJに、「ボタニスト」で
有名な株式会社I-neの大西社長
インタビュー記事が載っていた。
新しいコンセプトのヘアケアブランド
「YOLU」が絶好調なのを受けて、
どう勝ち筋を見つけて来たのかが
結構明け透けに書かれている。

好調の秘密はいくつかありそうだが、
「原価率の高さ」はかなり重要な
ポイントのようだ。
原価率の高さが結局はモノの良さを
決め、それが商品満足度を生み、
高いリピートへとつながる。

ここだけを見ると、正に稲盛さんの
「値決めは経営」の一事例として
捉えることができそうだ。
原価率をギリギリまで高めて、
消費者のリピート率を高められる
値段を決められるかどうかが、
経営の核心だ!
と言えそうではないか。

しかし、事はそう単純ではないだろう。
他の箇所で、PDCAサイクルを回して
精度を高めてきたこと、その仕組み化
こそが強みだというような趣旨の話も
出て来る。
値段だけでなく、商品の機能も、販売する
場所も、広告の打ち方やコピーの内容も、
すべては全体の危ういバランスの上に
成り立つ
のである。

稲盛さんは、そんなことはとっくに
お見通しの上で、それでもあえて
「値決めは経営」
という言葉を唱え続けたのであろう。

今回、スピーチするために何度も
彼の著書を読み直して、自分なりの
解釈は一旦落ち着いた。
しかし、また少し経って読み直すと、
新たな解釈が生まれそうな、
そんな予感がある。

まだまだ、稲盛さんから学び続けたい。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。