ブルネロ・クチネリの『人間主義的経営』
「ブルネロ・クチネリ」という
ラグジュアリーブランドのことは
ご存知でしょうか?
イタリア発のブランドで、比較的浅い
歴史ながら、その成長力と独創性で
注目を浴びています。
上記オンラインブティックを見て
いただけば分かる通り、普通の人には
とても買える価格帯ではありません。
シャツにせよ、パンツにせよ、
20万円が最低ライン。
セーターやジャケットともなると、
50万円~100万円という価格がザラ。
私からすると完全にお手上げです。
そんな、エルメスやルイ・ヴィトンにも
引けをとらないハイブランドの創業者で
あり、今も経営の舵を取っているのが、
ブランド名でもあるブルネロ・クチネリ氏
です。
彼の著書『人間主義的経営』の日本に
おける翻訳者である岩崎春夫さんも
参加される同書の読書会に参加できる
ことになり、予習目的で読みました。
彼の自叙伝的な内容が多く、
更に加えて彼が普段考えていることが
書かれている本です。
筆致が、非常に哲学的でして、
ビジネス書に「How」を求めている方に
対しては購入を勧めません。
「こうしたから上手くいった」
というようなハウツーはほぼゼロ。
彼の哲学的な思想、「こうありたい」と
いう願望が、淡々とつづられている本
だと言って差し支えないでしょう。
過去に読んだ本の中では、
伊那食品工業の名誉顧問をされている
塚越寛さんの
『いい会社をつくりましょう』
がとても近しいイメージです。
ハウツーではなく「あり方」。
ビジネス書を読み漁る人の大半は、
ハウツーを求めている場合が多いと
推察されます。
しかし、ハウツーは、確かにすぐ使える
かもしれませんが、すぐ使えなくなる
こともまた真実でしょう。
その点、「あり方」に焦点を当てた場合、
すぐには使えないかもしれませんが、
長きにわたって使い続けられる可能性が
高いとも言えそうです。
全体を通して、日本の読者にとって
この本で最も有用・有益なパートは、
253頁から始まる「訳者あとがき」だと
言えるでしょう。
訳者の岩崎さんが、ブルネロの
ともすると硬くてやや分かり難い文章を、
非常に分かりやすくかみ砕いた上で、
文脈を補足しつつ説明してくれていました。
もう一つ、個人的に気に入った場所は、
第6章で「ラグジュアリーの本質」について
語った場所です。
ブランドの本質、ラグジュアリーの本質に
ついて、スパッと切れ味よく説明して
くれていました。
自分自身の取り扱う商品のブランド力を
上げたいのであれば、この「希少性」と
「期待感」が肝になるのだというのは
確実に押さえておくべきポイントでしょう。
ラグジュアリーブランドらしい、
美しい装丁の本でもあります。
本社のあるソロメオ村を、いつか訪れて
みたいものだと思わされる本でした。
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。