人生のピークをどこに持っていくか
ものつくり大学教授の井坂さんから、
「セカンドカーブ」という考え方を
学んだ。
これは、ドラッカーに師事した経営者、
ボブ・ビュフォードの著書『Halftime』
の中で語られているコンセプトだと
伺っている。
人生を大きく二つに分け、
前半はガムシャラに前へ進む生き方、
後半はそれとは異なる価値観を追求し、
社会へと貢献をなす生き方、
そんな生き方を提唱しているのだ。
人生を曲線で表現する場合、
最初の数年は下向きに弧を描く。
何をやるにしても、一般的には
学びの期間が必要。
「雌伏」と言っても良いだろう。
これがいわば「ファーストカーブ」
に該当する。
地力を付ける努力を続けていくに
従って、下向きに進んでいた弧が
上向きになり、そのまま右肩上がり
のフェーズへと移行する。
やがて、人生のピークが訪れ、
そこからは右肩下がりへと移行
することになる。
この、ピークに差し掛かるところが
正に「セカンドカーブ」なのだ。
そして、人生を前半生と後半生に
分けて考えたとき、人生100年時代
と言われる昨今であれば、
前半生の曲線が「セカンドカーブ」に
差し掛かるのが50歳前後。
ゆえに、第二の人生の曲線を、
第一の曲線が「セカンドカーブ」に
入るタイミングまでに描き始めて
おくべきだ、というのが井坂さん
からの学びである。
そして、第二の人生においては、
第一の人生で獲得した様々なものを
いかにして社会に返還していくかが
大切になるという。
ただ、これは第一の人生において
典型的なサラリーマンを想定した
発想と言えるかもしれない。
おおよそ60歳前後の定年を想定
される現在の世の中において、
人生の大部分を費やすのは「本業」。
しかし、定年後もずっとこれを続ける
ことは難しい。
これが出来ないから、
第二の人生曲線を描くべし、
という発想に聞こえなくもない。
しかし、60を超えても、70や80に
なったとしても、それまでやって
来たことを続けることは可能だし、
それによって価値を生めることが
出来ているのなら、そしてそれが
自分にとっても生きがいになって
いるのなら、むしろ第二の曲線へと
移行しない方が良いかもしれない
のである。
井坂さんが、アニメ脚本家の辻真先氏と
対談をした様子が公開され、興味深く
拝読した。
ここで、井坂さんは、
「セカンドカーブ」のことを念頭に置き、
辻さんに対して、人生を前半生と後半生
とに分けるという考え方に対しての
コメントを求めている。
これに対する辻さんの返答が、
正に、第二の曲線へと移行すること
など考えずに、第一の人生をそのまま
突っ走っていくという、先に述べた
考え方に近いのだ。
とにかく、自分のやりたいことで、
行きたいところまで行ってみる。
それ以上行けなくなったなら、
やり方や場所を変えてでも、
とにかく上を目指していく。
そうやって、90歳位まで華々しく仕事を
続けるのが人生のクライマックスと
お考えの様子で、90歳から先は蠟燭の
炎のようにスッと消えていく人生を
思い描いていたそうだ。
特定の年齢に、人生のピークを持って
いくことは、可能かもしれないが、
そんなプラン通りに行くとも思えない。
むしろ、辻氏のように、人生の終わり
間際にピークを持っていくつもりで、
ひたすら上を目指す方が、シンプルで
取り組みやすいようにも思える。
私も第二の人生曲線を描き始めるべき
年齢を過ぎ、自らの生き方、あり方に
思いを致して過ごす日々だ。
折角の人生、まだまだピークは先に
あると信じながら、精進したい。