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①振り込め詐欺被害により1000万を超える借金を背負った父と、娘の私の日記

2024年1月8日のお昼頃。
父から「詐欺にあった」と、リビングですれ違いざま、何てことないとでも言いたげな声で告げられた。

本当に緊張感のない、軽い言葉のように聞こえたので、驚きつつも、そこまで重大なことのように実感は湧かなかった。ただ、思い当たる節があったとことを思い出し、静かに胸の奥に詰まっていた物が動き出したような感覚で顔が強ばり、父の次の言葉を待っていた。

しかし父は「詐欺にあった」その重い言葉だけ言うと、自分の部屋に逃げるように、のそのそ入って行ってしまった。確か、「どういうこと?前に言っていた、取り引きの件?」と私は聞いた気がするが、父には「うん、後で説明する」と返事をされ、そのまましばらく出てこなかった。被害にあったことが分かったので、振り込んだ口座の凍結や警察への被害届、弁護士を探すなど、父も父なりに行動していたようだった。

父が部屋に籠ってから、私は父から聞いていた「取り引き」のことを思い出していた。詳しいやり方などは未だに私は分からないが、要は「金の売買」。去年父は、この取り引きについて、「儲かってきたよ。でもまだお母さんには言わないで」と、家族では私だけに伝えていたようだった。私は「そんな上手い話があるものか」と初めは疑って声をかけたりしたが、父の余裕そうな表情や、具体的に「500万プラスになった」などの言葉を鵜呑みにし、「気を付けてよ。プラスになったなら、その分引き落として持っておきなよ」と助言することが精一杯だった。これがまさかマイナスで、しかも2倍以上の借金になるとは思わなかったし、近くにいた娘の私が「もっとしっかりしていれば」と悔やんでも悔やみきれず、未だに自分自身を情けなく思っている。
食べようと温めていた、昨日の晩の残りのシチューは、温めただけで喉を通らず、静かに父が部屋から出てくるのを待った。

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