日記 4/20

 日記をつけたいと思った。紙の日記はしかし面倒だ。紙のほうが読み返しやすいのはそうなのだけど。

 村上春樹「羊をめぐる冒険」、その上巻を読み終えた。春樹くささは最新刊に比べて強いけれども、それが嫌味とはもう思われない。むかしはあんなに村上春樹ぎらいだったのに、己が丸くなったのか成長したのか、どうか。主人公は30歳を間近に控えており、私もちょうどいまその時期なので、三十路を迎える前に読み始められてよかった。

 仕事を終えて、かねてより行きたいと思っていた中華屋に足を運ぶと、定休日だった。近くのスーパーで値引きの麻婆麺を買うことで中華欲を抑えた。酒を飲んで煙草を吸って、いいかげんこんな生活を続けていたら、どうにかなってしまうと思う。あるいはもうどうにかなってしまっているのかもしれない。

 生きるということは難しいことだ。時は絶えず新たに良きことも悪しきことも押し付けてくる。しかし、どうやらそれが生きているということらしい。

 北重人「鳥かごの詩」の末尾に、そんな一節があった。生きながらえる日が日一日と延びるたび、そうだな、と胸に落ちる。悪しきことばかりの生ではあるけれど。北重人も鬼籍に入って久しい。もう誰も彼のことを覚えていないような気さえする。生きていたら、彼はどんな時代小説を物せていただろうか。北重人が生きていたら、私はもう少しきちんと、時代小説にのめりこめていたはずだ。読まなかった本があり、読めなかった本があり、世界線を遡るみたいに、今まで読みづらかった本を読む。そういう年にしたい。遅い新年の抱負だ。来年の三十路に向けて、すこしでもひたむきに、読書できたらよい。

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