サンパウロから週末の小旅行~弥勒寺とシティオ・アラカワ~ 青木遼 月刊ピンドラーマ2024年3月号
弥勒寺 Templo Torre Miroku
最初に、その寺の名前を聞いたときに、えっ?と思った。どこにあるの?その弥勒寺?ここはブラジルだよね?
そうした疑問を抱えながら向かうと、サンパウロから50キロの町、リベイロン・ピーレスの湖の奥にその寺はあった。美しい姿をして。人類の宗教心は人が人であるが故に大事なものと思う。この寺を創立した中橋ミノル氏の宗教心の発露であろう。世界救世教が包括する《東方之光》の祭神は、大光明真神(みろくおおかみ)、明主之御神(めいしゅのみかみ)という。高さ32メートルの、釘を一本も使わない五重塔の中に、金色に輝く8メートルの弥勒菩薩が鎮座しておられた。そこが弥勒寺。寺の対岸から、船首に金色の龍が付いたメリーゴーランドのような四角い船にのって渡る。船の様子から最初中国の寺か?と思ったが、立派な日本式の五重塔。山口県の国宝の瑠璃光寺のようだ。中橋ミノル氏は、2012年に死去されたと聞く。つくづく宗教の形を問う。実に美しくこの五重塔は聳えていた。
シティオ・アラカワ Sitio Arakawa
そこから一時間かけてモジ・ダス・クルーゼスに移動する。このシティオ・アラカワは自然農法で、イチゴやブドウを作っている。ブドウはイタリアやルビー、巨峰もある。この巨峰の味は決して日本のものに劣らない。甘くて美味しい。また白や赤のピタヤ(ドラゴンフルーツ)は、初めて植わっているのを見たが珍しい。その花は夜咲くという。原産地はメキシコ、中央アメリカ。白い花の下の真っ赤な苺は何ともかわいい。皆余念なく苺を摘み取る。生姜などもすごく安く売っている。澄んだ空気の中でいただく美味しいシティオの料理は最高。群れ集まる鳥の群れは、伊藤若冲の『群鶏図』を彷彿させる。
このシティオは創立50年になるという。日系人の農家は次期世代がしっかり守っているようだ。週末の日帰り旅も良いものだ。この二か所をまわるコース、お薦めです。
月刊ピンドラーマ2024年3月号表紙
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